おじいちゃんも、おばあちゃんも
本家のおじさんも、洋品店やってるおばちゃんも
み~んな、おかあちゃんのこと
「ちぃ」って呼ぶ。
「ちいさなお嬢さん」って
意味なんだって。
おじいちゃんは
「ちぃは賢い。ひとつ聞いたら十悟る」
アタシが屏風の女の人見て
おかあちゃんに似てるって言ったら
「似とらん(きっぱり)」
「ちぃはもっとベッピンじゃ」
ずっと後になって
本人から聞いたこと。
「とにかく叱られた記憶がないわね」
・・・イタズラとか失敗とかしなかったの?
「したけど、怒られなかった」
「たとえば」と思い出す顔になって・・・
「小さい頃、本家に連れてかれたときに
縁側に立派な鉢植えの花があったの」
「オトナは話が弾んでても
こっちは退屈で仕方ないでしょ?」
「面白かったから、お花をひとつずつ
従兄弟の男の子とちぎってたら
木がまるはだか~になっちゃって」
「でね、もちろん見つかった。大人に」
「そしたら男の子だけ怒られて
引っ張っていかれちゃった」
おかあちゃんは可笑しそうに
「なんて言うんだっけ、ドナドナ?
あんな感じで、男の子がこっち見て
助けて~って、顔で言ってた」
・・・笑いごとじゃないと思うけど。
おかあちゃんは何も言われなかったの?
って聞いたら
「言われなかったよ、なんにも。
男の子に、お前が誘ったんやろって」
でも、アレ始めたのわたしだったのよねって
おかあちゃんは澄ましてる。
男の子、可哀想。
「まあね。でも、とにかくそれで済んじゃった」
もっとあるよって顔になって
「お雛さまの首も
いっぱい抜いたっけ」
・・・首、抜くの?
「面白かったのよ。すっぽんすっぽん
あれって簡単に抜けるの」
だからうちのお雛さまの顔は
一段ごとに違ってる筈だって。
「首がなくなると次の買うんだけど
やっぱりヤッちゃうのよね、スッポン!」
・・・はぁ・・・
「でもねえ」と彼女。
「一度フスマに落書きしたときは
失敗だったな~」
「やっぱり本家のお座敷で
新しい真っ白のフスマ見つけて
誰もいなかったし、全部そろって
あんまり真っ白だったから
つい、なんか描きたくなって」
描き出したら止まらなくて
次々描いてたら
本家のオジイサンが
通りかかったんだって。
「それがねえ、オジイサン
まじまじと、描いた絵見てるの」
あんまり時間かけて見てるんで
やめるわけにもいかなくて
次のフスマにも描き始めたんだけど
やがて、おじいさんは背筋を伸ばして
たった一言。
「ちぃは上手やのォ」
おかあちゃんのお父さんじゃなくて
めったに会わないオジイサンが
ほんとに感心した様子で
しみじみそう言ったもんだから・・・
「あ~んな具合悪かったの
後にも先にもなかったわ」
それ以上は、何も言われなかったけど
落書きは、その後しなくなったとか。
さすがのおかあちゃんも
ちょっと気恥ずかしそうな顔してた。
でもねえ・・・
こーゆー話を聞いたのは
アタシが高校生の頃だったけど
正直思った。
「アナタ、ほんとにアタシのお母さん?」
子どもの頃、ほんとに厳しかったから
何かして怒られないように
おねえちゃんもアタシも
あんなにビクビクしてたのに・・・
「今頃になって言うなんて」
おかあちゃん、ズルイ!!!
本家のおじさんも、洋品店やってるおばちゃんも
み~んな、おかあちゃんのこと
「ちぃ」って呼ぶ。
「ちいさなお嬢さん」って
意味なんだって。
おじいちゃんは
「ちぃは賢い。ひとつ聞いたら十悟る」
アタシが屏風の女の人見て
おかあちゃんに似てるって言ったら
「似とらん(きっぱり)」
「ちぃはもっとベッピンじゃ」
ずっと後になって
本人から聞いたこと。
「とにかく叱られた記憶がないわね」
・・・イタズラとか失敗とかしなかったの?
「したけど、怒られなかった」
「たとえば」と思い出す顔になって・・・
「小さい頃、本家に連れてかれたときに
縁側に立派な鉢植えの花があったの」
「オトナは話が弾んでても
こっちは退屈で仕方ないでしょ?」
「面白かったから、お花をひとつずつ
従兄弟の男の子とちぎってたら
木がまるはだか~になっちゃって」
「でね、もちろん見つかった。大人に」
「そしたら男の子だけ怒られて
引っ張っていかれちゃった」
おかあちゃんは可笑しそうに
「なんて言うんだっけ、ドナドナ?
あんな感じで、男の子がこっち見て
助けて~って、顔で言ってた」
・・・笑いごとじゃないと思うけど。
おかあちゃんは何も言われなかったの?
って聞いたら
「言われなかったよ、なんにも。
男の子に、お前が誘ったんやろって」
でも、アレ始めたのわたしだったのよねって
おかあちゃんは澄ましてる。
男の子、可哀想。
「まあね。でも、とにかくそれで済んじゃった」
もっとあるよって顔になって
「お雛さまの首も
いっぱい抜いたっけ」
・・・首、抜くの?
「面白かったのよ。すっぽんすっぽん
あれって簡単に抜けるの」
だからうちのお雛さまの顔は
一段ごとに違ってる筈だって。
「首がなくなると次の買うんだけど
やっぱりヤッちゃうのよね、スッポン!」
・・・はぁ・・・
「でもねえ」と彼女。
「一度フスマに落書きしたときは
失敗だったな~」
「やっぱり本家のお座敷で
新しい真っ白のフスマ見つけて
誰もいなかったし、全部そろって
あんまり真っ白だったから
つい、なんか描きたくなって」
描き出したら止まらなくて
次々描いてたら
本家のオジイサンが
通りかかったんだって。
「それがねえ、オジイサン
まじまじと、描いた絵見てるの」
あんまり時間かけて見てるんで
やめるわけにもいかなくて
次のフスマにも描き始めたんだけど
やがて、おじいさんは背筋を伸ばして
たった一言。
「ちぃは上手やのォ」
おかあちゃんのお父さんじゃなくて
めったに会わないオジイサンが
ほんとに感心した様子で
しみじみそう言ったもんだから・・・
「あ~んな具合悪かったの
後にも先にもなかったわ」
それ以上は、何も言われなかったけど
落書きは、その後しなくなったとか。
さすがのおかあちゃんも
ちょっと気恥ずかしそうな顔してた。
でもねえ・・・
こーゆー話を聞いたのは
アタシが高校生の頃だったけど
正直思った。
「アナタ、ほんとにアタシのお母さん?」
子どもの頃、ほんとに厳しかったから
何かして怒られないように
おねえちゃんもアタシも
あんなにビクビクしてたのに・・・
「今頃になって言うなんて」
おかあちゃん、ズルイ!!!
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