眺めのいい部屋

人、映画、本・・・記憶の小箱の中身を文字に直す作業をしています。

百四歳のおばあちゃん~(^^)

2014-10-27 13:07:37 | 人の記憶

先週の金曜日、病院で支払いをするために
椅子に坐って待っていた時のこと。

すぐ隣でおじさんが、大きめのメモ用紙を出して
サインペンで何か書き始めて・・・
 
傍の車椅子には、ちんまりと
可愛らしいおばあちゃんが坐っています。 

私もおばあちゃんも、おじさんの書く文字を
なんとはなしに見ていると・・・

「お医者が、塩辛いもん食べられんと
言うとるんやから、そうせなあかん!!!」

最後の「!」まで書くとすぐに
おじさんは一枚ちぎって
おばあちゃんに渡します。

おばあちゃんは、いかにも楽しそうに
笑ってその紙を見ていました。

おばあちゃんは血圧が高いのでしょう。
付き添ってる息子さん?は心配していて・・・

なあんて勝手な妄想を始める間もなく
おじさんは私に話しかけてきました。
(気安くおじさんと言っていますが
私よりはずっと年配の方です)

「あんたなあ、こんヒト一体幾つやと思う?」

私の答など待つ気配はなく
おじさんは言葉を続けます。

「104歳よぇ、満で104。数えで105、もうすぐ6。
明治43年生まれ」

へぇ~~そうなんだ。
私、100歳超える方に会うの初めて。

なあんてコトを口にする前に、おじさんは大きな声で

「生き過ぎじゃと思わんかえ?いくらなんでも。
早う死にゃあええのに、そう言うても
『お迎えが来んき、行くに行けん』ちゅうて」

傍の車椅子の上で、おばあちゃんは
ニコニコとしています。
なるほど、本当に聞こえていないのかも。

「お迎えが来ない間はそうですよね。
それにしても、お若く見えますね~(本当)」

そこでハッとしました。

「明治43年だったら、私(60歳)のおばあちゃんより
ほんの少し若いだけやわ」

「ほぉ~幾つになられた?」

私がちょっと首を横に振ると
「あ、それもそうか」といった表情になって、おじさんはまた

「こんヒトはなあ、100歳ンときに大臣の方から
金杯をもろうたんじゃ。したらなあ
『金杯なんかより現金がええ』って言いよった」

「じゃから俺が、そんならそう言うちゃお~って。
まあ、大臣とこはもう間に合わんき。
あと少ししたら、次は知事が祝いに来る筈やき
そんときにゃあ100万、現金で持ってくるように
ちゃんと言うたったき・・・って言うたら
『ほんならそれまで頑張らにゃあ』やと」

おばあちゃんの方を見ると
おばあちゃんは、全然おじさんのことなど
眼中に無い様子で、まっすぐ私の方を見て

「人間は、自分の行く末、行く場所を知らんといかん。
自分は仏さまンとこ、極楽に行くんやから
そンためにはヒトの悪口言うたり
悪いことしたらアカンのやから」

おばあちゃんの座右の銘かと思って聞いていたら
どうやら私のことを心配していてくれる様子(^^;

う~ん、100万円とどう釣り合うのか
ちょっと「?」な感じなんですが
おばあちゃんは真剣な顔で
何度も私にそう言います。

なんだかお説教を聞いているような
はたまた神様の声?のよーな。

でも、おじさん曰く、おばあちゃんは
あんまり頑健な人ではなかったのだとか。

それが、大柄で健康そのものだった妹さんの方が
99歳!で先に亡くなって
おばあちゃんの方は今も元気。

「歳取るほど元気になるタイプだったんですね」

ほんとにそう思ったので、そのまま口にしたところ
おじさんは、なぜか感心?してくれたみたい。

でも・・・

おじさんは、すくなくとも3回ずつは
「生き過ぎ」「早う死にゃあ」って
それも大声で言ったのです。
会計や薬を待ってる人が大勢坐っている場所で。

あっけらかんと、全然悪気のない表情。

ジョークではなく、本当にそう思っているから言っている。
誰かに言いたくて言いたくてたまらない・・・とでもいうように。

私はつくづく、「高知だな~」と思いました。

私が育った北陸では
都会であろうと田舎であろうと
こういう光景に遭うことは無いでしょう。

「まず無い」んじゃなくて、もう
「絶対無い!」と断言できます。

カラッと明るく、開放的で
独特のユーモアのセンスもあって
ある種個人主義的?な雰囲気のある「土佐」・・・

「言いたいことは、そのまま口に出して構わない」
「人前で態度を明らかにすることを当然と思う」

私が高知に来たのは、ある種の偶然だったのですが
昔も今も、私はこういう高知の雰囲気が気に入っています。

「百四歳」の元気さと
可愛らしさ(ほんとに笑顔がステキなのです)にも驚きましたが
その息子さん(多分)には、もっと驚かされました(^^)。

いい親子なんだな・・・と思いました。


神サマ、病院という場所でも
楽しい経験もあります。

「足が痛い言うき、ここの血管外科に連れてきた」
というおばあちゃんが
どうぞ早く良くなりますように。

支払いに呼ばれ、お金を払っているとき
ふと振り向くと、おばあちゃんが
遠くの私に向って、何か言ってる様子。
(視力の良さにオドロキました)

よく聞こえなかったので、ただ笑ってお辞儀をしてみせたら
おばあちゃんもニコニコと嬉しそうでした。

神サマ、ありがとうございました。




(他のブログに書いた日記ですが、こちらにも載せたくなりました。私の好きな「高知」を、ちょっぴり感じて頂けると幸いです)

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