むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

陳水扁総統のニカラグア訪問は今後吉と出るか?(+右翼国民党系記者の馬鹿さ加減)

2007-08-30 03:03:30 | 台湾政治
私が現在個人的に注目している政治指導者の一人、ニカラグアのオルテガ大統領。
中米友邦歴訪に出ている陳水扁総統が27日から28日、最終地のニカラグアを訪問、オルテガと17時間も話しこんだという。さすがオルテガ。あんなつまらない陳水扁と17時間も付き合ったというのはやはり只者ではない。おれだったら、30分でいやになると思う。

ニカラグアは昨年の大統領選挙で反米左派サンディニスタ民族解放戦線のオルテガ議長が当選、今年大統領に就任して17年ぶりに政権に復帰した。
台湾の民進党政権はサンディニスタほどではなくてもリベラル志向の中道左派政権なので本来はサンディニスタと親和性は高いのだが、何分、台湾の外交官は国民党系のばりばりの右翼反共主義者が多いので、サンディニスタ主導政権となったニカラグアとの関係は悪化、国交も危ぶまれていた。それに危機感を抱いた陳水扁が直接乗り込んで直談判することで打開を図ったのだろう。
私はもともとサンディニスタには好意を持っていたので、オルテガの出方には非常に注目していた。
サンディニスタは民進党政権になってから代表団を台湾によこして民進党なども訪問しているし、民進党がリベラル志向で国民党ファッショ政権と戦ってきたことは知っているだろうから、オルテガはそれで興味を抱いて、この機会にじっくり観察しようとしたのかも知れない。
しかし、自分が運転する車で空港まで出迎えて、さらに17時間も行動をともにするなんて、さすがオルテガはやることがすごい!(すごいといえば、昨年5月に陳水扁と4時間以上は話したとされているリビアの指導者カダフィもすごいが)本物の社会主義の指導者はこうでなくてはいかん。日本にはこうしたまともな大物左翼がいないところが問題だ。

ただ、この結果が、台湾にとって吉と出るか凶と出るかはわからない。陳水扁自身は人間としては非常につまらないからマイナスになった心配もなきにしもあらずだが、しかし陳水扁に体現されている民進党の闘争精神がオルテガに伝わればプラスになるだろう。台湾メディアの報道を見ている限りでは、プラスになった可能性は高いように見えるが、今後を見ないとわからない。

英字紙も含む台湾各紙は28日と29日付けでニカラグア訪問を伝えた。報道を見ると、陳水扁政権に好意的な自由時報やTaiwan Newsはもちろん肯定的な報道をしているが、国民党に近い右翼の中国時報や聯合報などは意図的に批判的報道をしていた。

特にひどいのが28日付け聯合報A4面の記事「陳水扁と左派は波長が合わない 金で買った友情?」という見出しの解説記事。
この記事では「台湾はいままで左派が育つ土壌はなかったし、民進党の政権路線は資本家に依存して久しいので、陳水扁総統が左派政権のニカラグアにいることは明らかに分不相応だ」「陳総統は左派政権のニカラグアで口を開けば自由貿易や経済援助を語ったが、それらはすべてかつて米国が中南米右派政権に対して行ったものであり、反米左派の指導者の耳にはそうした主張は複雑だろう」などと罵倒している。
しかし、これはすべて嘘であり、聯合報のような反共右翼メディアが勝手な「アカ」像をでっち上げて幻想の「左派」と陳水扁が違うと罵倒しているだけで、それこそ聯合報記者の無知である。
そもそも、台湾の民主化運動には、環境・人権・原住民・女性など「新しい社会運動」タイプの左派が根強く存在し、民進党の基盤はまさにそうした左派社会運動だった。聯合報はそうした運動を「資本主義に敵対するアカの思想」と長らく呼び、敵対してきたのではなかったか?
またニカラグアのサンディニスタなどイマドキの「左派」は、市場経済や自由貿易や経済援助全般を否定しているわけではないことは、オルテガ政権の経済政策、さらにはもっと反米左派としては過激なベネズエラのチャベス政権の政策を見れば明らかだろう。イマドキどんな左派社会主義者といえども、市場経済や自由貿易を否定するような古典的かつ頑迷な「マルキスト」はいない。聯合報記者こそ、国民党時代の反共教育を受けて「左派=アカ」と決め付けているだけで、それこそ馬鹿である。
そもそもサンディニスタが拒否しているところの「自由貿易」は、米国覇権主義の強制としての「自由貿易」であって、たとえば小国同士の対等なものなら、むしろ積極的なのがイマドキの左派なのである。

これに比べれば批判的だとはいえ、まだ的を射ているといえるのは、中国時報28日A4面で「サンディニスタの集会 陳水扁は反米の盟友に」と題して、陳水扁がサンディニスタの集会に参加して、かなり同調していた事実を「親米右派」の中国時報として批判的に書いたものである。これならまだわかる。しかしこの記事にしても、イランのアフマディネジャドを「反米の立場が鮮明な左派の大物」に含めているのは、あまりにもアホである。アフマディネジャドは、イランの基準でいっても、超保守派=極右であって、絶対に左派ではない。「反米なら左派」だと思い込む国民党の誤った世界観がここに示されている。

これに対して、自由時報の28日A2面「オルテガと陳水扁 決起集会演説はそっくり 同じ法律学徒で反対運動に従事した同志・・・」という記事は、サンディニスタの決起集会の雰囲気と目指してきたものが、往年の党外・民進党の民主化や選挙決起集会のそれらと似ている点を指摘しているのは、正しい。

また、英字紙Taiwan Newsは、米国人左派ジャーナリストでサンディニスタにも民進党にも好意的なデニス・エングバースが現地発で書いている記事で、抜群に良い。デニスは風来坊でちょっと馬鹿なやつだが、世界の左派運動には造詣が深く、ちゃんとサンディニスタのこともわかっているから、陳水扁ニカラグア訪問の記事については秀逸。
現場の実際の雰囲気や今後の展望については、戻ってきたデニスに詳しく聞いてみよう。

しかし、それに比べて、国民党系のメディアといい、外交官といい、国民党って、相変わらず反共・反左翼・対米従属の偏狭な世界観を持った馬鹿ばかりだね。ニカラグア報道で、聯合報や中国時報の馬鹿さ加減はますますはっきりしたな。

民進党主席のタイ、ベトナム訪問拒否は国情への配慮欠如の結果

2007-08-30 03:02:45 | 台湾政治
民進党の游錫〓主席が8月中旬、現地在住台湾人の帰国投票を呼びかけるため、フィリピン、タイ、ベトナムの東南アジア3カ国を訪問する計画だったが、結果的には9日から11日までフィリピン1国だけの訪問となったようだ。
これについて、民進党の中国語ウェブサイトの関連ニュースリリースには、「タイとベトナムは中国の圧力に屈してビザ発給を拒否したから、これは今後の両国からの労働者受け入れに関して考えなければならない」みたいな指摘があった。タイについては「中国の圧力に屈した」というのは的はずれとはいえないが、ベトナムに対しては失礼もいいところだ。
民進党指導部の国際感覚もまだまだであり、これは東南アジア蔑視というべきだ。

そもそもベトナムに民進党主席が入国を認められないのは、ベトナムが共産党一党独裁国家で言論の自由が制限されていることを考えれば、当たり前のことだろう。共産党とその御用組織以外の、まして外国の政党の政治活動があの国で認められるわけがない。だから最初ベトナムも予定に入っていたのは不思議だったのだが、断られたからといって、何でも「中国の圧力」のせいにして逆切れするのは、はっきりいって頭が悪い。国情を考えろといいたい。
大体、ベトナムが「中国の圧力」など気にするような国ではない。中国の圧力に対する抵抗能力という点では、中国、フランス、米国の侵略を撃退してきたベトナムの過去を考えれば、台湾よりもはるかに高く、勇敢だというべきだし、ベトナム人が一番嫌いなのは中国・中国人だということも認識しておくべきだろう。
そんなベトナムをつかまえて、中国に先制攻撃してでも独立戦争を勝ち取る勇気もないような台湾が「中国の圧力に屈した」などとは、中国との戦争に勝って、米国にももっと楯突いて独立を勝ち取ってから言うべきだろう。そんな意気地もないくせに、こんなこと言っているから、台湾外交まだまだは駄目なんだよ!

大体、ベトナムはその中華文化の深さを考えれば、「中国の圧力に屈した」ら、ベトナムは中国の一部になってしまう。だから、ベトナムに対して「中国の圧力に屈した」という言葉はまったくナンセンスである。もちろん、ベトナムは共産党独裁の兄弟国家としての中国との友誼から「ひとつの中国」論が公式政策だから、台湾と政治関係を高めるつもりではないことは事実だが、それは決して中国に気がねしているのではなく、共産党官僚主義の形式主義と頑迷さに起因するだけである。
そしてベトナムにとって最大の敵は中国なので、ベトナムはその官僚主義的公式論に抵触しない文化、経済、行政実務などの問題ではむしろ台湾とは実質関係の拡大を積極的に求めているのである。
共産党独裁のベトナムに、台湾が民進党の政治集会を企図したことがそもそも間違いなのであって、軍事や諜報関係も含めた総統府や行政院などの行政実務者の交流なら、ベトナムは喜んでOKするだろう。

ただし、タイについては、中国の圧力に屈した点は否めないし、タイはそうしたどうしょうもない無定見なところが私はあまり好きになれない。
とはいえ、「中国の圧力」だけが原因だという決め付けも間違っていると思う。というのも、現在のタイは民政移行前の軍事政権なのだから、政治集会は制限されている。民進党主席がのこのこ出かけて行って外国人が政治集会なんてできるわけがないのだ。これも国情の問題である。

台湾も民主化を勝ち取ったのは良いことだが、それが「他国も同じように民主主義であるべきだ」と考えているとしたら、傲慢というべきだろう。そういう傲慢さが台湾外交の発展を阻害しているのである。
いずれにしても、相手の国情に合わせて臨機応変な対応ができないで外交などできない。民主主義はそれ自体としては外交にとって有益な武器ではないのだから。

民進党「副総統」候補に蘇貞昌が指名されたのは陳水扁の横車の結果

2007-08-30 03:01:14 | 台湾政治
8月15日、民進党総統候補の謝長廷氏は、それまでの予測に反して副総統候補として蘇貞昌・前行政院長を指名した。
蘇氏は総統予備選挙の党員投票では謝氏に次いで二位だったが、新潮流派や陳水扁総統の露骨な後押しにもかかわらず2位にとどまったことから、予備選挙後は政界を事実上引退していた。そこで以前の観測では、謝氏を以前から支持し、謝氏と深い信頼関係で結ばれてきた葉菊蘭・元行政副院長(現在は総統府秘書長)が副総統候補として有力視されていた。しかし、謝氏の台頭に嫉妬する陳水扁総統が謝氏を牽制するために、統一派メディアが贔屓にする蘇氏を副総統にねじ込もうとし、謝氏もメディアと陳総統の圧力に抗しきれず、蘇氏を指名したようだ。

私が見たところ、蘇氏は副総統に色気がまったくなかったと思う。そもそも総統予備選挙に出馬していたのだから、副を引き受けたがるわけがないし、下馬評で党員投票一位だとされていたのが2位に終わり、メンツも丸つぶれだから、ここは台湾人としてはいっそのこと一切政界から身を引きたいところだろう。事実、蘇氏の側近の多くは、すでに公営企業のポストなどを配分されていて、政界中枢からは引退の布陣を取っていたのだし、指名された8月15日には蘇氏は台湾におらず米国に滞在(忌避)中だったのだ。
蘇氏本人が明らかに副総統ポストを忌避していたところを引きずりだしたのは、陳総統の横車であり、陳水扁氏の謝長廷氏に対する長年の嫉妬と憎悪から出たものだった。ここで総統候補である謝氏の意中のまま葉菊蘭氏が副総統候補になったら、陳水扁氏は名実ともにレームダックになるし、陳総統の任期が切れる半年前から民進党の盟主は謝氏になってしまう。それが陳氏には耐えられなかったのだろう。だから、是が非でも反新潮流派の謝氏を牽制できる新潮流に近い蘇氏をねじこんでおく必要があったのだ。陳水扁氏も本来は新潮流が嫌いなのだが、謝氏に対する嫉妬が先立っているので、しゃにむに新潮流と結託して謝氏牽制に賭けたのだった。
謝氏としても、謝氏を選んだ民進党の支持層としても、新潮流の復活は避けたかったのだが、あまり陳水扁氏を追い詰めると何を仕出かすかわからない。陳水扁氏と韓国のノムヒョン氏はそういう稚拙で大人気ないところでは非常に似ているからだ。それと台湾人的なメンツを保つ配慮もあって、結局は謝氏は妥協したのだろう。

しかし、これは民進党としてはあまりプラスではないと思う。民進党の党内事情や選挙対策をよく知らない外野や部外者はしたり顔で「葉菊蘭では知名度が低く、票は取れない。台北県長もやって知名度も高い蘇貞昌を副にしないと票が増えない」などといって葉氏をくさして、蘇氏を持ち上げてきたが、私は逆だと思うし、一種の陰謀だと思う。

第一に、蘇貞昌氏には実は集票能力はない。2005年末の台北県長選挙で蘇氏の後継の民進党候補が19万票差で惨敗したり、今年5月の総統予備選挙党員投票で蘇氏は地盤とされる台北県で謝氏に肉薄されたりしているなど、蘇氏は国民党系のメディアが「知名度と人気が高い」といわれているのとは正反対に、実際の選挙では失敗している。
そもそも私は台北県に住んでいるが、台北県が蘇県政時代に何かよくなったことがあるという実感はまったくない。これは謝市政の高雄市とは大違いである。もっとも台北県も国民党の現県長がとんでもなく無能なため、蘇貞昌氏のほうがまだマシだったということはいえるが、蘇氏が台北県を多いに発展させたということは絶対にない。
それどころか、蘇氏は楽生院の強制撤去とMRT待機場建設問題、台湾テレビ政府持ち株の自由時報への譲渡談合疑惑など、土建業界との癒着と見られかねない問題が存在している。
第二に、そもそも民進党は理念政党だから、「個人票」なるものはもともと存在しないし、まして副総統はあくまでもスペアで飾りなのだから、副総統候補に「集票能力がある」とする人物をつけるべきだという議論は、為にする議論でしかない。
第三に、よしんば蘇氏に集票能力なるものがあったとしても、一回の選挙に幻惑されて、当選した後の4年ないしは8年の執政を考えるべきである。蘇氏と謝氏の間には予備選挙にいたるまでの確執のしこりから相互信頼関係がない。副総統は実権のない「女房役」なのだから、信頼関係があって目立たないほうがかえって良い。ここで、陳水扁政権の副総統がアクの強い呂秀蓮氏できたことで、どういう問題があったのか、思い出すべきだろう。蘇貞昌氏では、その二の舞にならないか。正副総統は信頼関係がないといけない。

もちろん、謝氏と蘇氏はもともと同じ派閥「台湾福利国連線」のメンバーであり、両者は少なくとも2002年まではかなり近い関係にあり、部下も重複してきたから、信頼関係の再構築はそれほど難しいことではないが、しかし台湾は短期的に動くところなので、香過去5年も遡っての「旧知」などあまり役に立たないことが多い。信頼関係という点ではむしろここ2年くらい頻繁に接触があって、予備選挙でも強力に謝氏を支持した葉菊蘭氏のほうが、謝総統候補の「女房役」にはちょうどよかった。

謝氏との信頼関係が弱かった蘇氏が副総統候補に俄かに指名されたことで、謝陣営は信頼関係構築に大童だ。当初「9月上旬には行きたい」と公言してきた日本訪問も、蘇氏との信頼関係構築が優先されて、10月以降に延びた。これは、日本の政局を考えるとそのほうがよかったかも知れないが、まだまだ日本での知名度が低い「京大出身の次期総統最右翼・謝長廷」を日本への売り込みを考えると、マイナスである。陳水扁氏は自分の私利私欲のために、台湾次期指導者の日本での宣伝機会をみすみす減らしてしまったのである。まったく陳水扁という人は台湾の国益を踏みにじる困った人である。

馬英九特別費横領裁判、一審無罪判決の法匪ぶり

2007-08-30 03:00:38 | 台湾政治
日本に戻っている間、今の実家はADSLもないし、しかも電話回線もいまだにパルスという時代錯誤なことをしている家なものだから、荷物整理で忙しかったこともあって、ネットにはほとんどアクセスしなかった。ただ馬英九特別費横領裁判の一審判決がある14日はネカフェで台湾の新聞をチェックした。どうせ裁判官にも国民党系がうようよしているから、ろくに証拠を調べずに結論ありきで無罪にする可能性も疑っていたが、しかし「すべて事実上公費の一部というの慣例になっており、犯意もなかったから無罪」という判決と理由は、あまりにも常軌を逸した「法匪」というべきものである。
ただこれが司法が国民党に偏っているから、馬英九だけに甘いのかというと、その後の陳哲男・元総統府副秘書長の高雄MRTに絡む斡旋収賄裁判でもまさかの無罪判決が出たから、さらにあんぐりしてしまった。まあ陳哲男も陳政権の総統府副秘書長やったけども、陳水扁の娘婿の父親と同じく、もともと国民党員の教師という、怪しい経歴の持ち主なんだけどね。
要するに台湾の裁判官は、権力者の腐敗汚職を裁く気がないようだ。裁判官自体が横領や収賄は日常茶飯になっていることの証明かも知れない。
これでは裁判など信用できないということになる。