むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

EIU民主主義評価を見ていて気づいたこと、納得できないこと

2006-11-28 23:23:10 | 世界の政治・社会情勢
先に取り上げた英エコノミスト系のEIUがこのほど発表したDemocracy Index 2006)についてだが、これをながめていると面白いことに気づく。
(参照:全体の表はPDFファイルで、 http://www.economist.com/media/pdf/DEMOCRACY_TABLE_2007_v3.pdf

政治的自由では、総合評価で最下位の北朝鮮だけが、市民的自由度でもなんと0.00という評価を受けていた。ほかの全体主義独裁体制では、おそらく最近では金正日将軍様を上回り、ぶっちぎりのデンパを流しつづけているニヤゾフ君のトルクメニスタンですらウズベキスタンとともに0.59、ミャンマーでも0.88と「ほんの少しの自由がある」とされたのに。やっぱり、北朝鮮は完全に自由がないのか。
ちなみに、ほかの項目も含めて、ゼロスコアとして目立つのは、イラクの政府の機能。チャドもそうなっている。これもやっぱり。でも、調査対象には、ソマリアはないから、イラクだけが唯一になったのか。ソマリアは評価できんからな。それとも、政府機能はマイナスになるのだろうか。
選挙過程では、中国、UAE、シリア、リビアなども、一党独裁もしくは君主独裁のためゼロスコアになっている。ところが、選挙過程では北朝鮮は0.83になっている(!?)。どうしてだろう?

あと面白いのは、米国の市民的自由度が先進国の中では最低の8.53だったのは、むべなるかな。やっぱり米国はブッシュになってから異常だ。

それから、項目ごとに、評価がちぐはぐなところがある。フィリピンとレバノンだ。
フィリピンの場合、総合評価では6.48で順位も63位ながら、選挙過程が9.17、市民的自由が9.12ときわめて高いのに、政治文化が3.75、政府の機能が5.36、政治参加が5.00。
レバノンも選挙過程が7.92と高く、市民的自由6.47、政治参加が6.11もそこそこ良いのに、政府の機能がなんと2.36と低すぎて、総合評価が5.82、85位と低くなっている。よりによって私が台湾以外では最も好きな二カ国とも、ちぐはぐなのは、トホホというか、そういうちぐはぐさがあるからこそ面白いというべきか。

ただ、ちょっと納得できないのは、イランの評価が低すぎるところだ。総合点数は2.93、順位は139位で、中国よりも低いのは絶対おかしい。項目別では選挙過程0.08、政府の機能3.57、政治参加3.89、政治文化5.63(台湾と同じ)、市民的自由1.47となっている。ところが、イランは複数の異なる意見を代表する派閥が選挙で競い、討論するシステムがあるので、選挙過程と多元性と政治参加と市民的自由は過小評価されすぎである。もちろん、レバノンを上回ることはありえないが、順位でいえば、「混合体制」のロシアとかマラウィ程度が妥当だろう。ハタミとアフマディネジャドという、対照的ともいえる思想の持ち主が、前後して大統領に選ばれているのを考えれば、少なくともチベット虐殺の下手人しか指導者に選ばれない中国より低いのは絶対におかしい。西欧人のイランへの偏見がにじみ出ているようだ。

民主主義評価で台湾が32位、「欠陥ある民主主義」に 国民党の存在が足を引っ張った元凶か

2006-11-28 23:19:58 | 台湾政治
英エコノミスト系調査機関エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(Economist Intelligence Unit)がこのほど発表した2006年の民主主義評価(Democracy Index 2006)で、台湾は世界167カ国中総合評価では7.82点(10点満点)32位で、「欠陥ある民主主義」と評価された。31位は韓国(7.88)、33位はエストニア(7.74)だった。
評価は選挙過程と多元性、政府の機能、政治参加、政治文化、市民的自由の5大項目についてそれぞれ10点満点で採点し(大項目の下にさまざまな要素の採点がある)、その平均点が総合評価。総合評価は小数点2位で四捨五入して8以上が「成熟した民主主義full democracies」(28カ国)、6から7.9が「欠陥ある民主主義flawed democracies」(54カ国)、4から5.9が「混合体制hybrid regimes」(30カ国)、4未満が「権威主義体制authoritarian regimes」(55カ国)とされた。
全体の表はPDFファイルで、 http://www.economist.com/media/pdf/DEMOCRACY_TABLE_2007_v3.pdf

日本は8.15でベルギーと20位同位で「完全な民主主義」、中国は2.97で138位、最下位は北朝鮮1.03で「権威主義」。レバノンは85位、5.82で、「混合形態」と評価された。
トップ5はスウェーデン9.88、アイスランド9.71、オランダ9.66、ノルウェー9.55、デンマーク9.52と北欧・西欧諸国が独占。28位までの「成熟した民主主義」は25位同位のコスタリカとモーリシャス、27位のウルグアイ、20位の日本以外は、欧米勢が独占した。
旧ソ連・東欧や南ア、フィリピン、モンゴル、南米などの新興民主主義国家の多くは「欠陥ある民主主義」に分類された。

しかし、5大項目(選挙過程と多元性、政府の機能、政治参加、政治文化、市民的自由)別に見ると、台湾はそれぞれ9.58、7.50、6.67、5.63、9.71で、日本のそれぞれ9.17、7.86、5.56、8.75、9.41と比べると、選挙過程、政治参加、市民的自由の3項目で上回っているのである。ただ、台湾は政治文化が5.63と格段に低く評価されたことが災いして、「欠陥ある」となったようだ。
市民的自由が9.71は総合評価では高い日本やチェコ、米国、英国を凌駕してトップクラスだから、これは誇って良い。
しかも日本は、項目別に見れば、政府の機能で何とか底上げされただけで、政治参加の低さを考えれば、実質日本も「欠陥ある民主主義」だといえよう。

台湾と政治的民主化の意味ではライバルの韓国を見ると、韓国はそれぞれ9.58、7.14、7.22、7.50、7.94で、選挙過程は台湾と同じく日本を上回る評価で、政治参加も台湾や日本と比較して高いが、政府の機能がやや見劣りするし、韓国の市民的自由度の低さは、このグループにしては落ちる(予想通りだが)。
ちなみに、総合評価46位までの国で、市民的自由度が8未満のところはなく、47位イスラエルが5.29とダントツに劣って顔を出してくるくらいだ。いや、7.94レベルが恒常的に顔を出すのは50位台でセルビア、スリランカ、スリナム、モルドバなど、かなり微妙なところが並ぶ。

台湾の政治文化が5.63と低い評価になったのは、なぜか。
これは、実際にはEIUの詳しい資料を見る必要があるが、どうも選挙の腐敗や汚職とは関係なさそうだ。選挙が成熟していないのは、韓国も似たようなものだし、台湾よりも選挙政治が腐敗しているマレーシア、スリランカ、イスラエルでも7.50と高い。
ところが、ほかに同じような評価を受けた国をピックアップすると、なんとなく理由が浮かび挙がってくる。
ほかに政治文化が5.63だったのは、インド、リトアニア、ラトヴィア、ブラジル、トリニダード・トバゴ、ポーランド、クロアチア、ウクライナ、アルゼンチン、セルビア、モンゴル、モンテネグロ(そう、独立したんだよね)、ドミニカ共和国、マリ、アルバニア、セネガル、リベリア、ガンビア、コモロ、モロッコ、ブルキナファソ、ネパール、コートジボワール、カメルーン、コンゴ・ブラザビル、アルジェリア、クウェート、イラン、ガボンなどが挙げられる。
5.00にはスロバキア、ブルガリア、ルーマニア、ボスニア、フィジー、ベネズエラ、グルジア、カンボジア、キルギスあたりが出てくる。
アフリカ諸国や中でも台湾との現旧国交国が並ぶのは“奇遇”だが、そのほかを見れば、元一党独裁国家が多いことがわかる。
だとすれば、政治文化が5.63前後の評価というのは、一党独裁だったところが、その独裁政党が温存され、文化も残ったまま、民主化したところということができる。だとすれば、その原因、元凶となっているのは、台湾でいえば国民党の存在ということになるだろう。

かつて共産党一党独裁だったところでは、2つだけが「成熟した民主主義」にランクインしているだけだ。それは8.17のチェコ(しかも順位は日本より上)18位、7.96点のスロベニアがぎりぎり27位。いずれも、共産党文化の早期払拭に成功したところだし、チェコはハヴェル、スロベニアはクーチャンといったカリスマ的かつ素養が高い指導者に恵まれたことも関係しているのかも知れない。

その点では、台湾は国民党の清算と国民党文化の打破に失敗したことが、「欠陥ある民主主義」とされた根本の原因というべきだろう。
そういう点では、チェコが民主化の過程でとっとと共産党を禁止にして、財産を取り上げたのに対して、台湾が国民党をとっとと解散させなかったことが禍根を残したというべきだ。
国民党をむしろ活用し延命させた李登輝と、国民党独裁体制に断固とした対応をしなかった意気地なしの陳水扁に問題があったというべきだろう。
李登輝は「哲人政治家」といわれるが、哲人と先見性と聡明さでは、ハヴェルにはとても敵わないことがこれでわかる。
もちろん、台湾は市民的自由度ではチェコの9.12をはるかに上回るトップレベルの評価を受けており、その点では多とすべきだろうが。

韓国ウィキペディアのRuss氏って面白そう

2006-11-28 23:15:53 | 韓国・北朝鮮
韓国語と日本語ウィキペディアを見ていたら、利用者登録に、こういう面白い人物を見つけた

↓こういう怪しげな日本語だが、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%A9%E7%94%A8%E8%80%85:Russ

こんにちは。私は孫換東(ソンファンドン, 손환동)です。
私は日本語はちょっとできて、ロシア語、英語もちょっと分かりました。
日本語の勉強をしています。日本の文化に、ちょっと関心があります。
• 好きな国: ロシア、北朝鮮、東欧
• 好きなマンガ: 犬夜叉、満月を捜して(달빛천사)
• 関心ある分野:日本語、ロシア語、英語等外国語、コンピューター、地理学

韓国語を見ると、
http://ko.wikipedia.org/wiki/%EC%82%AC%EC%9A%A9%EC%9E%90:Russ

旧ソ連・東欧圏の言語ヲタクのようで、バベル(言語理解)の欄には、ロシア、エストニア、ウクライナ、ラトヴィア、リトアニア、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニア、セルビア、ボスニア、クロアチア、スロベニア、アルバニア、マケドニアの各語、その他は英、日本、スペイン、フィンランド、中国語が、それぞれ初級レベルできるとある。
で、北朝鮮、中国の朝鮮族、ロシア、中央アジア、東欧、日本の文化が好きで、米国、中国、日本の政府と右翼(特に竹島の日を制定した島根県)、EU、イスラエルが嫌い、とある。
北朝鮮が好きなのは民族主義者としてらしいが、さらに朝鮮文化語の併記も認めるべきだとも主張している。ただ、民族主義者というわりには、日本の漫画が好きで、日本にも行きたいとか、ソ連東欧圏にも関心があったりと、まあ割と、国際主義的だし、なんとなく無邪気でかわいらしい感じもする。北朝鮮が好きなのも、政治体制が好きというよりは、言語文化の観点からなのか。これは私も話が合いそうだw。
で、中国への反感は相当強いようで、「今後とも台湾、香港、マカオ、シンガポールを除くところの中国本土へは行かない」とも書いている。台湾を中国系とみなしているのはまあアレだが、この点も気が合いそうだw。

もっとも、語学ヲタ以外の部分は、わりとイマドキの韓国で政治に関心がある若者の典型といったところだろう。しかし、やっぱりイマドキの韓国の若者って、反中が増えているようだね。オーマイニュースやハンギョレの討論を見ていてもそうだし。これは日本、台湾と共通現象。