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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

おやつ手帖番外編~ディズニーランドホテルのティーセット

2010年06月04日 | 味わい探訪
ディズニーランドでは現在、イースターワンダーランド・
フェアを展開中。それと連動し、ディズニーランドホテル
のドリーマーズ・ラウンジでは素敵なアフタヌーンティー
・セットが出ています。

お菓子は「不思議の国のアリス」をイメージしたメニュー
になっていて、チェシャ猫型のスコーンや、アリスの形の
チョコ、トランプ型のサンドイッチなど、どれもとっても
可愛いデザインです☆

また、同ホテルのシャーウッド・ガーデンでもイースター
をイメージした可愛いデザートが食べられます♪
フェアは6月30日まで開催中です。
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さすらいー若葉のころ19

2010年06月04日 | 投稿連載
若葉のころ 作者大隅 充
      19
実際にこの去年春のはじめて輪竹さんとお知り合いに
なってウミネコを見に行ったのを皮切りに今年の遠洋
海洋調査に出航して行くまでに12回輪竹さんが八戸
へ出張に来られる度に二人きりで遠出や観光案内をし
た。ほとんど私のフィットで田沢湖から津軽半島の先
端の尻屋崎まで出かけた。そのうち一回だけ電車で盛
岡へ行った。彼がパソコンのハードディスクを買うと
いう家電の旅に、私のフィットを車検に出していたの
で特急列車で盛岡のデパートに洋服を私も買うという
口実で便乗して出かけた。
 今思うとそんな単に買い物に行くのにもお弁当をも
って行ったのだから、風変わりというかほとんど喜劇
に近くておかしい。そのときは手作りのミックスサン
ドだったのだが、客車のシートに座って大きな口でぱ
っくり嬉しそうに食べる輪竹さんの姿が何よりも私に
幸せをもたらしてくれるのが堪らなくうれしかった。
 彼が三角のサンドウィッチを頬張り噛むとき顎の骨
が耳たぶの下で上下するのが逞しくて、つい見つめて
しまう。そして私はその動きにセクシーな興奮を覚え
ているのをどうにかこうにか隠すことに精一杯だった。
 彼には、二人のお母さんがいた。輪竹さんの話では
5才で実母を亡くして、新しいお母さんにその後育て
られたという。継母は働き者でとても親切で運動会の
リレーで四年生の彼がビリになった時一緒に泣いてく
れたり、又中学受験の冬は熱心に勉強を徹夜で教えて
くれたりして優しかったと懐かしそうに彼は言うと今
度は照れくさそうに笑って、ただ唯一お料理が下手で
お弁当自体を学校に持って行ったことがなかったんだ
と付け加えた。だから手作りのお弁当がこんな美味し
くて楽しいものかということをすみれさんから教えて
もらいましたと告白された。
 こんな子供時代のことを話す時も輪竹さんは少しも
僻んだり悪びれたりしない。なんだか絵本を読んでる
みたいに面白そうに、まるで他人のつくた創作を朗読
するみたいに訥々としゃべる。そういえばいつも話し
てて思うのだが彼は人の悪口を言ったことがない。5
月の青空に高々と泳ぐ鯉のぼりのように清清しくて独
りですっくと立っている。
 私は、どうして彼がこんなにストレートな気持ちの
人間になったのか知りたかったが理工系の両親、それ
も母親は継母だったがまじめに働く家庭に育ったこと。
東京の大田区という街工場と運河に囲まれた団地で極
中流の生活をしていたということしかわからなかった。
 私は、こんなに心のきれいな人に逢ったのは初めて
だったし、まっすぐ人を見るときの彼の瞳があまりに
も澄んでいて、繕ったり嘘をついたりできない雰囲気
にびっくりすると同時に深く感心した。そして何より
長年使いつづけていた我が家の枕のように寄り添うだ
けでとても落ち着く。この至福に近い安心感ってなん
だろう。たぶん男の人でも彼を好きにならない人はい
ないんじゃないだろうか。
 それを特に感じたのは、野辺地の大ハクチョウを真
冬に二人で見に行ったときだった。野辺地から平内ま
で陸奥湾を右手に眺めながら車で走って、白い雪に覆
われた山々の先に凍てついた湾を見下ろして旋回して
いるハクチョウの群れを見たとき、私と輪竹さんが思
わず、わああーと大声を発してしまって二人で顔を見
合って笑ったあのとき。わたしたちは、雄大なハクチ
ョウの舞い飛ぶ姿に純粋に感動した。
 そうして「きれいだね。」と一言云って黙り込んだ
輪竹さんの横顔を見て私は、又感動した。今思い出し
てもどうしてあのときハクチョウを見ている彼を見て
感動して涙があふれ出てきたのかわからない。
「きれいだね。」
 と輪竹さんは冬空に舞うハクチョウに言った。わた
しも「きれいだな。」と心の底から思った。人間って
本当にピッタリ同じ気持ちになれることがあるんだと
私は実感した。
「きれいだね。」
 私は、自然と涙が出て来て、鼻水をすすって、つい
に涙が止まらなくなってしまった。
 輪竹さんは、ぐっと私の肩を抱いて泣き止む子を待
つように私の髪に頬を寄せて寒風にじっと寄り添って
くれた。
「きれいだね。」
ともう一度私の目を見て彼は言った。
風の音とハクチョウの短く重なり合った声とが二人を
包んでいた。
 彼の厚い胸が私の背中を艫綱のようにしっかりとつ
なぎ止めて、かなり長い間白い大地と凪いだ海との世
界でじってとしていた。そして私が泣き終えたとき、
輪竹さんは子供のように笑った。
 このときほど至福という気持ちを感じたのは後にも
先にもない。あれは一瞬の幻だったのか不思議に思う。
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