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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

さすらいー地球岬 14

2009年10月30日 | 投稿連載
地球岬 作者大隅 充
     14
ぼおっとした頭で何とかこの事態がなんなのかすべての
回路をつなぎ合わせようとするのだが意識が穴の開いた
タライみたいにしっかりと脳という器に満タンにならな
いで線路に寝かされた自分の身体が列車によって真っ二
つになるという現実を受け止めるのにゆっくりとした時
間がかかった。
オレは、なんとか必死になって体を動かそうとするのだ
が下半身がなかなか言うことをきかない。列車は、カー
ブを回ってぐんぐん近づいて来た。
そして仔犬は、はげしく吠えながら走ってくる列車に向
かって駆け出した。
 室蘭行き普通列車の運転席では、正面でいきなり茶褐
色の仔犬が電車に向かってまっすぐ走ってくるので操作
レバーを握っていた運転手が慌てて緊急停止ボタンを押
して、ブレーキを引いた。
時速60キロからカーブで45キロまで減速していたと
言え、鉄橋の向こうから無謀にも線路の真ん中を突進し
てくる動物にぶつからないで間に合うかどうか若い運転
手は自信が無かった。
この運転手は、かつて研修中の根室本線できつねを撥
ねたことはあったが列車に軽い衝撃があっただけで運行
そのものには何の支障もなかった。ただそのあと血だら
けでバラバラになったきつねが夢に出て来て今でもトラ
ウマになっている。小動物の一匹ぐらい仕方ないとはど
うしてもいかなかった。若い運転手は、電車が停まって
もブレーキを握った手を自分の力で放すことができなか
った。
明らかにあの茶褐色の仔犬は電車に轢かれた。しかし何
の衝撃もないのはどうしたことか。あの仔犬は、確かに
橋の上でぶつかる瞬間運転台のガラスに向かって飛んだ。
あまりの出来事で運転手が目をつむってしまったのでそ
の仔犬が幻のように消えて、水蒸気みたいに空気圧に流
れてしまったようで全くどうしたことか見当がつかなか
った。
 そして若い運転手は、緊急停止から線路に降りたって
ますます今起きた出来事が気味悪く摩訶不思議なことに
なったとぞっとした。
なんと仔犬の姿も一片の肉片も血ノリもなく、目にした
のは、橋の上で停止し電車の先頭から数メートルのとこ
ろに人間が線路で横たわっていたのだった。
   ×   ×    ×
 オレは、その若い運転手がぶるぶる震えながらオレの
折れた左腕を持ち上げて痛いとオレが叫び声を上げたの
でびっくりして線路の真ん中で座り込んだところまで見
ていた。そして後ろから年寄りの乗務員が走って来てオ
レの目を指でこじ開けて瞳孔が開いているかペンライト
で確かめた。
 次に目が覚めたのは、救急車にオレが乗せられる時だ
った。鉄橋の袂にパトカーも停まっていた。ちょうど電
車が動き出して視界から消えるところだった。二人の救
急隊員によって担架に固定されたオレの体が頭から持ち
上がって救急車の処置室に格納されるとき、オレは、は
っきりと鉄橋の下の川の中から這い上がって草地の土手
をよじ登ってくるチャータの泥だらけの姿を見つけた。
チャータ!
そうオレは叫んだが声にならなかった。
チャータは、自分の身を挺してオレを救ってくれた。
鉄橋の手前でチャータは電車にぶつかる寸前に川の中へ
飛び込んだんだ。電車の乗務員に危険を知らせるために
己の身を賭けてナイフが手に刺さるほんの一瞬の手品師
の運動神経で電車から身を避けた。それもこんな死に損
ないのオレのためにだ。あいつはいい奴だ。そして素晴
らしい犬だ。オレは、生まれてはじめて自分以外のもの
に感動した。どうしてそんなことが出来たんだ。しかも
駅に置き去りにして捨てたオレなんかをどうして助けて
くれたんだ。
救急車が走り出してサイレンを鳴らした時川の方から遠
吠えが聞こえた。そして車の後を追ってチャータが走り
出す足音も同時に聞こえた。
やがてそれもエンジン音にかき消された。
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アンバサダーホテルのパンプキン・モンブラン~シーちゃんのおやつ手帖113

2009年10月30日 | 味わい探訪
ハロウィン期間限定のケーキで、ミッキーの顔がかぼちゃ
ランタンになったかのようなデザインが素敵!見た目が
可愛いだけでなく、お味も濃厚でグッド☆
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