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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

さすらいー幽霊屋敷2

2009年02月27日 | 投稿連載
  幽霊屋敷 作者大隅 充
    2
 その幽霊屋敷とは、かつて僕の父ちゃんやヨッチンのパパ
がよく駅前の止り木食堂でお酒を飲んでオバケが出ると噂し
ていたシューパロ湖の452号線沿いの林の奥にあるヤマモ
ト洋館のことなんだ。
その森の中の朽ちかけた木造三階建ての洋館では昼間一階の
大広間の床を走り回る足音がしたり、夜三階の書斎の飾り窓
に明かりが見えたりしたという目撃談がこの夕張にかつて炭
鉱があり何十万という人が住んでいたという社会科サブノー
トに書かれるような街の歴史的な事実と同じように語られ、
それがいつの間にか町中でというより、特に清水沢小では幽
霊屋敷で女の死体が転がっていたなんてHBC放送の突撃シ
ョウ激★ニュースのドキドキ現場ルポみたいに本当のことと
して広まってしまった。
しかも夏休みの間に桜が丘中学の二年生やガソリンスタンド
の熊谷のタツヤ兄ちゃんたちがこのシューパロの森の超心霊
スポットとなったヤマモト洋館に挑戦したが誰も無口になっ
て帰ってきたり、大怪我して病院に担ぎ込まれたりした。
いつも鬼のように怒ると怖い熊谷のおじさんも、脳震盪を起
こして救急車で幽霊屋敷から運ばれたタツヤ兄ちゃんを清水
沢診療所にスタンドのトラックで迎えに行って、黙って缶コ
ーヒーを渡してただ一言、二度とあそこに行くな。と言った
きりやさしかったという。
それでも噂を聞きつけて隣町からも肝試しの遠征にくる子供
も四人五人とあとを断たず、そんな中でも八月の終わり学校
がもう始まっていたのに五年生のヨッチンが一人で行くと言
って洋館の二階のバルコニーから部屋の中から飛び出てきた
動くものに追われて階下の果樹園跡に落ちて大腿骨を折る事
故があってからは、学校ではシューパロ湖に近づくことすら
禁止になった。
だから二学期になってパタっとシューパロ湖のダムへ上がる
向こう見ずな連中は、ほとんどいなくなった。
そして十月ヨッチンは、夕張市の破綻のあおりでママが看護
婦として働いていた希望が丘病院の縮小とかで病院をやめざ
るを得なくなって広島の親戚を頼って、松葉杖のまま家族で
引っ越して行った。
僕と秀人とは、どうしてもそのヨッチンの仇を討ちたかった。
だから車通りの少ない夕方を狙ってシューパロのダムまで自
転車で行き、草むらにその自転車を隠して僕らは、できるだ
け目立たないように林道を通って湖を北へ進んだのだった。
「ああ。見えて来た。」
僕らは、湖の道から林道へ五分も歩いただろうか。秀人が興
奮して指差す先を振り向くと、森が開けて茶色の煙突のある
屋根がはっきりと夕靄の中に覗けた。
今度はゆっくり僕らは歩き出す。するとすぐにモチノキやミ
ズナラに埋もれた高い鉄柵が両側に延々と広がって、雑草の
生い茂る行き止まりになった。
その僕の身長の三倍はある高い鉄柵に囲まれた先にヤマモト
洋館はあり、正面の立ち入り禁止の札のかかった門の上から
微かに黒味がかった茶色の屋根が教頭先生の禿げ頭の所々疲
れた髪の毛が生えているように草が斑に生えて風に揺らいで
いるのが見えた。
その閉ざされた鉄門を右へ沿っていくと、ヨッチンが言って
いた通り過去に何人もの挑戦者がこじ開けた幽霊屋敷への入
口となる鉄柵の一箇所外れたところがあり、ぼくら子供が一
人やっと通れる程度の穴があった。
僕らは、そこから顔を突っ込んで敷地の中を覗いた。市民プ
ールぐらいの草だらけの広場が目の前に広がっていて、その
奥に森の魔術に絡み取られた幽霊屋敷はあった。
それは、全体を蔦に覆われて窓という窓、扉という扉を長板
でバッテン印に釘打ちされた三階建ての要塞のような建物だ
ったけれど所々アーチ型の窓のステンドグラスが割られてイ
タチやエゾリスが出入りした形跡があった。
秀人と僕は、肩を寄せ合って夕闇の幽霊屋敷の前に立った。
僕は、まず家から持ってきたコンパクトデジカメで写真を
撮った。
フラッシュを焚いてみたが全体は薄暗くしか写せなかった。
メールでヨッチンに知らせるにはどうしても証拠写真がほ
しかった。
もう一度玄関ポーチに近寄ってシャッターを切った。
うおおっと秀人がデジカメの液晶画面を覗き込んで感心し
た声をあげた。
立ち入り禁止の看板と山元源一郎の表札のかかったポーチ
の柱と茶色のレンガの煙突がひとつの画面にピタっと入っ
ていた。
ヨッシ!
思わずガッツポーズをとって大きな声を僕が出したら、
秀人が、もういいんじゃないの。ここまで来て写真も撮っ
たから。帰ろうって。真っ暗になる。もう。
と早口に言うと一歩二歩と後ずさった。
「ダメダメ。ここまでせっかく来たんしょ。」
僕は、秀人の手をとってポーチの靴摺り台へ上った。
玄関に打たれたバッテン板は、何人も出入りしたために
Vの字に開いて扉の両サイドに立てかけてあった。
僕は、神主が榊をふるみたいにサーチライトを二三度振
った。
すると接触がよくなったのか明かりの強さが復活した。
それから僕は、ドアノブを握り締めてゆっくりと扉を開
いた。真っ暗な中から冷たい風が吹いてきた。

コメント (2)
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パティスリー・ポタジェ~シーちゃんのおやつ手帖84

2009年02月27日 | 味わい探訪
店名のポタジェとはフランス語で家庭菜園のこと。
パティスリー・ポタジェは国産の有機野菜を使った
ベジタブル・スイーツ専門店。
他にゴボーショコラやとうもろこしミルフィーユ
など種類豊富☆
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