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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

さすらいー幽霊屋敷1

2009年02月20日 | 投稿連載
さすらい 作者大隅 充
  
  今日から新しい金曜連載がはじまります。
  誰でもこどもの頃に出会った出来事は、
  その後の人生に何某らの影響を与えられ
  るものです。
  大隅さんの今度の短編連作は、出会いと
  別れがテーマだそうです。
  新しいこの旅の最後までどうぞお付合い
  いただけたらと思います。
 
  幽霊屋敷
   1
 夕暮れは、いつも静かだ。特にこの道央での、
夏が終わった後の短い紅葉の秋は、まるで深い
海底の沈没船のように無口で誰も寄せ付けない
みたいにしーんとしている。
夕張岳の山から風に飛ばされてきたヤツデやカ
エデの枯れた葉っぱが細長い湖の水面に一つぽ
とりと落ちただけでもエゾリスがパッと振り返
るほど、夕焼けのシューパロ湖のある森は、静
かなんだ。
そしてあの錆び付いてずっと昔に廃線になった
三弦橋の鉄橋も湖の真ん中でひっそりとつっ立
って風に唸ることもなく静かで、鹿島小学校跡
の石碑みたいに雨ざらしで苔むしてひとりっぽ
ちでやっぱり沈没船みたいなかなしい顔をして
いる。
 そんな動かない絵本の挿絵のような静かな夕
方に小学五年生の僕らは、シューパロ湖の奥の
アカマツやダテカンバの森を急いでいた。
夕焼けは、この森の中では見る見るうちに夕闇
へ変わっていた。
「駿ちゃん。止まるなって。危ないっしょ。」
横山秀人が電池のパワーがなくて点きの悪いサ
ーチライトを振りながら歩いている僕の背中を
押して叫んだ。
「ヒデちゃん何、ビビッてんの。」
「何あんもビビってなんかないって・・・」
明らかに秀人の声は、上擦って空き缶の中のど
んぐりみたいにカランカランと響いてこの危険
なミッションから早く逃げて帰りたいみたいに
聞こえた。
もしここにヨっチンこと中山義春がいたら、大
声で笑って、「てめい、チビってんじゃねえよ
ぉ。」なんて意地悪にはやしたてていただろう。
いつも五年一組での昼休みのワールドカップ・
タイマンゴールキック遊びでも、キーパーにな
った秀人が順番にゴールキックするぼくらのボ
ールを怖がって逃げたりすると泣いてる泣いて
るとヨッチンはわざと六年生の教室に聞こえる
ように叫んで僕や秀人を冷や冷やさせる。
その6年生の二階の教室には、去年夕張収穫祭
でミス・メロンジュニアに選ばれた、眩しい眩
しい深田あかりさんがいるから、余計に秀人は
緊張してマッチ棒みたいに赤くなったんだ。
実は僕も秀人と同じくらい深田さんがクラクラ
するくらい密かに好きだったので、もし彼女が
窓からあの細い顔でグランドの僕らを覗いたら
と思うと耳の裏が熱くなって胸がドキドキして
なんだか股がムズムズする。
このことは、夏休みのサマーキャンプで深田あ
かりさんに愛の告白して生まれて初めてフラれ
た秀人には内緒だけれど、どうもいつも彼女の
ことをケナすヨッチンも本当のところは好きな
んじゃないかとぼくは疑っている。
だって冷水山のキャンプからの帰りのバスで泣
いている秀人を五年男子のみんなで慰めていた
んだけれど、なんとなくヨッチンもみんなも眼
が本気に秀人のことを思ってなかったのを僕は、
見逃さなかった。
たぶん清水沢小の誰もが深田あかりさんのこと
が好きだったと今でも僕は確信している。
「本当に行くの?」
今度は秀人が僕の半ズボンの腰に絞めている表
面の皮がボロボロと剥がれかけた革ベルトを掴
んで立ち止まった。
僕たちの頭上でアカマツの枝たちが空を隠して、
陽も落ちはじめたために秀人の顔が見えにくく
なっている。
「ヨッチンが怪我して脱落した以上僕らが確か
めるしかないっしょ。」
秀人は、口を三角に尖らしてムッと黙った。
僕らは、このシューパロ湖の森にある、僕らが
生まれる前から有刺鉄線で張りめぐらされ何年
も廃墟になった立ち入り禁止の洋館に本当にオ
バケがいるか探検に来たのだった。
ぼくらは、そこを幽霊屋敷と呼んだ。

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クリスピー・クリーム・ドーナツ~シーちゃんのおやつ手帖83

2009年02月20日 | 味わい探訪
混雑時に並んで購入の順番を待つと、
焼きたてのオリジナル・グレーズドという
ドーナツを無料で配ってくれるので、
得した気分になります♪
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