わいるどぴっぐの猪突猛進

いつも疑問に思うことを書いていきます。

東大メンタル(ASDの頭の使い方と勉強できる人の頭の使い方の違い)

2022-08-05 13:50:22 | 書評
こんにちは、ぴっぐです。お久しぶりです。いい本に出会ったので書きたいと思います。
その名も「東大メンタル」(西岡壱誠、中山芳一/日経BP社)

東大生が東大生を分析してみたという類の本です。この副題が素晴らしく、「やりたくないことでも結果を出す技術」とあります。それでは参りましょう。

筆者によれば「あなたは勉強が好きですか?」という質問を東大生にしたところ、8割の人が好きだと答えるそうです。しかし「受験を目指して本格的に勉強を始める前から好きでしたか?」という質問に対しては、好きだったと答える人は4割未満になるそうです。(p.42)つまり勉強を好きだから受験勉強したというより、受験勉強を進める過程で好きになったという仮説が立ちます。では当初はやりたくなかった受験勉強ですが、やる気がでない時は以下のスステップをふむとしています。

第1、目標を立て、目標達成に必要な行為を数値化する
人は無意味なことをしている時に、精神的に追い詰められる(辛いと感じる)
無意味なことをしている時とは、自分で目標を立てて前向きに取り組めていないことである。
自分で目標を立てて前向きに取り組めていないこととは、自分の意思で目標を設定できていないことである。
したがって、自分の意思で目標を設定していれば、意味があることと思える。(p.32-60)

では自分の意思で目標を設定するとは、どういう意味でしょう?
それは課題を、ドラクエのようにゲーム化することだそうです。
人間は楽しかったら努力をするし、楽しくなかったら努力をしません。・・・古文や歴史を学ぶのに漫画を読むというのが有名ですが、ほかにも自分で専用のカードゲームを開発したという人がいたりします。要するに、この人たちは自分から楽しめるように努力することを厭わなかったわけです(p.67)


筆者はこのように、「自分の行動に対して、自分の意思で、目標を設定すること」を「主体性」と定義(p.60)して、主体性があれば無意味なことをしている感覚がなくなるとしています。 

私は本当かなと思うのですが、その疑問は脇におき、主体性を獲得する手法を以下のように展開します。
1.具体的な数字で目標を設定する
2.制限時間を設定する
3.達成できたらゲームクリア
です。

もっとも常に数字で目標を達成できるとは限らないため、数字で目標を設定するにはいくつかの小技が必要です。
1-1 状態目標(例:後輩の目標になりたい)を設定する
1-2 行動目標(そのためにいい小論文を書く)に落とし込む
1-3 数値目標(いい小論文を書くために、毎月3冊本を読む)に落とし込む
という具合です。 

「理想の自分」や「合格」や「痩せる」などの理念はゴールであるものの曖昧ですから、それを達成するための行動にする。さらに行動の基になる書籍数などに押し込み、対策していくわけです。

もっともここでも問題はあり、どのような行動や書籍に落とし込めばわからない場合です。そこで以下のように細分化します。「行動を5つ」、「行動のために必要な書籍を1つ」のように無理くり複数あげます。
【1-1状態目標 (例:コミュニケーションスキルを高める) 】
1-1-1 状態目標の達成に必要な具体的要素を5個以上書き出す
初対面の人とも会話できる
人前でも物怖じせずに話せる
相手の立場にたって会話をできる
ユーモアのセンスがある
話した相手に好印象を与える

【1-2 行動目標】
1-1-2 状態目標に達成に必要な行動目標を5個以上書き出す
初対面の人と会うような勉強会に参加する
TEDの動画を見てプレゼンの技術を学ぶ
相手の立場に立って会話をする本を読む
・・・ (略)

【1-3 数値目標 】
1-1-3 行動目標の数値目標に置き換える
勉強会に月1回参加する
TEDの動画を週1本見る
相手の立場に立って会話をする本を月1冊読む
・・・(略)


第2、自分で考えない
目標設定において主体的であること一見矛盾するのですが、「具体的に何をするのか」を自分で考える必要がないとしています。例えば「初対面の人と会話できる」の場合、その具体的行動を過去に誰かが考えているかもしれません。「知らない人に街で話しかけようか」と、自分で創造的に考える必要がないとしています。特に初めて物事に取り組んだ分野では、仮説自体が的外れなことがあるわけです。

試験であれば、その試験に歴史があればあるほど傾向があります。また上司との関係で悩む人は、長い人類の歴史で過去にあるでしょう。このように同じように疑問を抱え対策をしている先人はいる可能性が高く、「ネットで調べる」や「先輩の意見を聞く」などして、既存の方法を試すことを推奨しています。
ネット検索で「新商品の開発の仕方」を調べてみれば、たくさんのアプローチが見つかります。アイデアの達人が書いたいい本も見つかるでしょう。その中から「自分と似た課題に、優れた答えを出した人」を探せばいいのです。人間の悩みなど、それほど多くの種類があるわけでありません。大抵の悩みは、自分が考えるよりも前に、たくさんの人が悩んでいて、いい答えを出している人がいます。そこを調べて解答を見ちゃった方が効率的です(p.343)

これは前例踏襲に繋がるという負の側面があるのは間違いなく、いつもの私なら否定的です。しかし自分より賢い人が解決策を作っていることも人類の歴史でありえますから、自分でゼロから考える必要などないことを指しています。

私が大学に入学した頃、京大在学中に司法試験に合格した教授がこう言いました。
人類の歴史の中で君が考えるような疑問は誰かが考えて、すでに解決していることの方が多い。だから自分のオリジナリティを出すためには、まず過去の集積を学ぶ必要がある。その蓄積になかったものが初めてオリジナリティになるので、過去の集積を素早く学ぶ技術そのものが重要なのです。

きっと教授は東大メンタルの筆者と同じ考えで、物事の処理を自分で産み出す喜びよりも、誰かが発明した方法で手短に処理する方に重きがあるのでしょう。

第3、相対的に考える
試験なら試験問題を作る人が、試験の答えを考えた上で作ります。仕事なら、上司が指示を与えた時点では上司自身も漠然とした答えしかないかとしれませんが、後ほど仕事の査定をします。経営者なら、これまた消費者の行動という曖昧なものですが、それでも消費者の行動をみて判断します。このように採点基準、査定基準、購入基準といった自分以外の第三者の基準があるため、「●●という行動をする」という状態目標の設定では、自分で考える必要はないと筆者はします。つまり判断する人の基準に合わせているだけであり、物事を完璧にする必要はないとも言い換えられるわけです。例えばTOEICに絞って勉強すればTOEICの点数が上がっただけであり、何も英語が万能になることまでは必ずしも意味しない。簿記1級に特化して勉強すれば簿記1級に合格できたというだけであり、あらゆる経理の問題を処理できるようになることも意味しないわけです。このように「目標達成した」というだけで、「その分野に万能になった」とか「なんでもかんでも答えられる」ことを意味するわけでないのです。

これは私にも実感があり、ビジネス実務法務検定1級をうける際に過去問しかしませんでした。そのため体系的に著作権法、特許法、景品表示法を学んでいませんので、自分で説明することはできません。しかしそれら法律で頻繁に問題になる現象と条文自体は過去問と解答例で触れているため、「自分でゼロから説明はできないけども、どうやらこれが頻繁にある生じる問題で、頻繁に生じる問題にはこの条文らしい」との指摘ができます。つまり物事を本質的に理解なんか全くしてないのですが、誰か営業担当から質問されれば説明したことになるわけです。

第4、最低基準と目標基準を作る
状態目標から行動目標と数値目標を作ったとしても、高い数値によって自分を苦しめてやる気をなくすことなどいくはでもあります。そこで、「最低限の目標」と「理想的な目標」の2つを作りその間で物事を処理することで心が折れないようにするということになります。

まとめ
以上のことを私なりの言葉でまとめると以下のようになります。
1.試験、仕事、人間関係のように、自分が判断する権限のないところでは、自分で考えない。まして「本質的」だとか「真髄」だとかいうことは考えなくていい。言葉足らずだったり、よくわからない説明だったりするが、世間ではその程度で良いとされるためである。
2.他人に判断する権限がある場合、その対策方法も自分で考えなくていい。長い歴史があったり、多くの人が関わったりする分野ほど、既に賢い人が対策を作成していることがあるためである。そして長く残っている方法ほど対策としての効果が保証されたと仮定して、実行してみる。
3.その対策において状態目標→行動目標→数値目標と、数値化に落とし込む。
4.数値化できたとしてもハードなものは途中で心が折れるので、最低目標と理想という2つの数値を作ってその間でやりくりする。

つまり「自分で創造する必要なんてほとんどないよ」とか「自分が納得しなくても、他人の基準を満たすことはいくらでとあるよ」ということを言っており、「あなたの考えなんてどうでもいいから誰かの真似を一生懸命したらどうか」と言っています。

さてさて、ここまで方策はわかりましたがここからが問題です。
【疑問1】
マニュアル化されない分野はどうするのか?(●●心得という類の本はあるけども、社内で日々発生する例えば上司とのコミュニケーションを、具体的ケースで書いたものはほとんどない。また、異性とのデートをケーススタディごとにしたものもほぼ見たことがない。そのため「気の利いたコメントをする」とか「相手が気分良くなるように」という指摘はあっても、「気の利いた」とか「気分良く」とは、目前の人の価値観に依存する。そしてその「①目前の人の判断基準の見分け方②その判断基準からすると、どのような表現が気の利いたと判断されるか」というところまで踏み込んだものがない)
【疑問2】
ASDに顕著と思いますが、そもそも他人のルールに従うのが苦痛の人はどうするか?

それは別の本で探っていきましょう。 東大メンタルによれば、自分で想像的に考える必要はこれっぽちもなくて「誰かが作った先例を使う」のがベースのようなので。


習慣が10割

2021-01-11 16:54:30 | 書評
吉井雅之 すばる舎

こんにちは。ぴっぐです。
すばる舎はおもしろ本を出すところで、過去に「発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術」だすところですね。

この本のまとめを書こうと思ったのですが、面倒なので一言でまとめるとこうなりました。
・人間は快にちかづき不快を避ける
・ダイエットや勉強が続かないのは我慢という不快があるから
・ダイエットや不快を快にかえる必要がある
・快は意識的に「これって快だよね」と思わないと、当然すぎて気づかない
・そのために「今日の良かった点」を日記にする
・上手くいかない日ほど、良かった点をたくさん書く

という感じです。

脳はなにかと言い訳する

2020-12-11 19:44:51 | 書評
池谷 裕二(新潮文庫)

池谷裕二先生がVISAで連載してたものを本にしています。読み切り型となっており、医学的知識かなくても読めます。話し言葉をベースにしていますが、ポンポン専門用語出てきてすごいなと思いました。

以下、気になったことを記載いたします。

1.記憶するツール、海馬
記憶は海馬によって作られます。海馬とは大脳皮質の一つとされ、その中でも古皮質に含まれているそうです。また大脳辺縁系と呼ばれるエリアにあります。
海馬は記憶を作るのに有効ではあるが、記憶を蓄える場所ではないそうです。それは海馬を手術で取った患者が、手術以前の記憶はあるものの、手術以後の記憶ができなくなったことからわかりました。ネズミでの実験ですが、オスとメスを一緒に飼育したり、集団内で社会的な立場にいる個体ほど、海馬の神経細胞が増えて記憶が増すそうです。共学の方が記憶いいのかな!?

2.ストレスに慣れるには
体がストレスを感じるとコルチコステロンというホルモンがでて、脳の機能低下を起こすそうです。しかし環境に慣れてくると、コルチコステロンの分泌にも関わらずストレスが減る。そこでネズミの海馬を麻痺させたところ、ストレスがいつまでも減らなくなった。それゆえ環境に慣れるとは海馬と何か関係あるんじゃないかと仮説が立てられ、慣れる=状況の記憶=ストレスを感じにくくなる、と考えられるそうです。

3.下等動物と人間の違い
ネズミなどの下等動物と人間の脳の違いは、大きさ、大脳皮質のシワにあるそうです。そして大脳皮質のシワは思考を司ることから、基本的な生命維持に大脳皮質は必要でないと考えられているそうです。じゃあ生命維持に必要な機能はなんなのさと言うと、恐怖を感じる機能だそうです。恐怖を感じることができないと危険回避できないからですね。

4.恋愛とドーパミン
ドーパミンは快楽物質で、ドーパミンがでる行為を生物は好んでするそうです。そしてドーパミンを沢山放出する場所は、脳の腹側被蓋野だそうです。2005年の神経生理学雑誌に出た論文によると、交際初期の男女にパートナーの写真を見せると、よく反応したのは腹側被蓋野だそうです。つまりパートナーの写真を見て、ドーパミンが沢山出ていたことになります。
池谷先生は理由をこう考えます。まず恋愛感情はヒトにしかないと思われる。そして恋愛感情があると、繁殖目的とは別に、自分にとって適切なパートナーを延々と探し続ける可能性がある。しかしそれでは繁殖適齢期を逃し、子孫が残せなくなる。そのため「この人しかいない」と思わせ、ベストパートナー探しを停止させる必要がある。
恋愛感情という繁殖目的以外が生まれたがゆえに、制御をかける点から盲目的になるとのことです。

5.ストレスとお酒の関係
ストレスを感じると、zif268という遺伝子が活動するそうです。そして脳や体のストレスをコントロールするのは視床下部ですが、お酒を飲んでも視床下部のzif268は活動したそうです。それに対して、大脳皮質のzif268は活動をやめるそうです。このことが意味するのは、体はストレスを物理的に感じている。しかし感覚を司る大脳皮質がお酒で麻痺すると、ストレス感知機能が停止するとのことです。つまりストレスによって体は蝕まれていくけども、感覚自体が停止してストレスがなかったかのようになっているに過ぎないとのこと。例えば、熱いヤカンを触ると火傷してストレスを受けているが、感覚ないため熱いと思わず触り続けてしまうというわけです。怖いですね。

4.じゃあストレス解消法は?
ストレスを感じてるか測る方法は遺伝子の動きを見る方法もあれば、ストレスホルモンの血中濃度を測る方法もあるそうです。ある実験で、ストレスホルモンを意図的に注入します。当然、注入後はストレスを感じます。しかしその際に「ストレスを感じて辛くなったらこのボタンをおしてください。点滴が止まります」と伝えると、ボタンを押さなくてもストレスが減るそうです。言い換えると、実際にストレスホルモンの注入は続いているのに、ボタンを押せば止まると逃げ道があると思うだけで、ストレスホルモンの血中濃度が減ることを指しています。
つまりストレス解消する方法を実施することだけでなく、「私は解消する方法があるもんね」と信じている、勘違いしているだけでもストレスが減ることを指します。

他にも色々ありますが、こんなところで。

勉強脳を作る その2

2020-10-21 14:55:06 | 書評
受験脳の作り方 その2
こんにちは。ピッグです。後半戦を書いていきます。

前回までのあらすじ
・長期記憶になるかは、海馬が判断。
・海馬の判断基準は、生命維持に不可欠か。
・その結果、試験とかその類は生命維持に不可欠でないので殆ど忘れる。
・忘れないようにするには(1)繰り返すこと(2)ワクワクしたりドキドキすること(3)空腹になること(4)歩くこと(5)学習後に寝ること

・具体的には、
食事前→空腹なので集中力アップ→勉強(暗記系)
食事後→満腹なので集中力ダウン→好きなこと
どうしても眠くなる時→その前に勉強(暗記系)
起きた直後→記憶が定着しやすい→寝る前に勉強したことの復習(暗記系)
起きてすっきりしたとき→勉強(論理系)

1、目標の立て方
・虫のような小さな生物の脳に、次第に複雑な機能がつけたされて人の脳は現在にいたる。動物の脳は生命維持に重要な機能が多いが、ヒトの脳は生命維持とは直接関係ない高度な能力が詰まっている。
・記憶したら報酬を与えると、記憶力は増す。テストに合格したら褒美(=報酬)を与えるというような、不純な動機を理由とする外発的なものでもよい。また、外発的な動機は目に見えるものだけでなく、達成感のようなものでも構わない。
・そして報酬はなかなか獲得できないものレベルの高いものよりは、小まめな方がいい。達成可能な小刻みなものにする。

2、マインドの持ち方
・脳は失敗を繰り返すことによって物事を学んでいくので、思考錯誤の途中で挫けてしまうと正解にたどりつくことができない。そこで一つの成功にたどり着くには、①失敗に負けない根気②解決する能力③楽天的な性格が必要である。
・例えば、テレビ画面を犬に見せ、画面に○の図形が点灯した時にボタンを押すとエサがもらえる仕組みを作ったとする。犬はこの法則を理解するまでに、いくつかステップを踏む。まずボタンを押したとき偶然エサが出てくるとする。この場合は図形の点灯の有無に関わらず、延々とボタンを押し続ける。次に画面に図形が出た時だけ出ることがわかると、図形が出た時だけ押すようになる。まずこの段階にたどりつくまでに多くの失敗を要する。挫けやすい上手くいかない。さらにさらに図形を〇や◇とおり混ぜると、図形なら何でもボタンを押すので、〇にだけ反応するまでさらに失敗を要する。このように常に失敗する。
・失敗に挫けずにトライする。このマインドが何より大事になる。

3、学習の仕方
(1)モヤっと学ぶ
・最初から〇や◇と複数の図形を使うと、犬は図形とエサの関係以上のことは学べなくなる。そこでステップは小出し(まず、〇の図形だけで行う。それをクリアしたら、〇や◇を混ぜる)にしていく必要がある。
・つまり、ぼやっと学び、それを少しずつ精査していくのがいい。
(2)記憶の種類
・記憶には方法記憶、知識記憶、経験記憶とある。それぞれが階層になっており、方法記憶が最下層で、経験記憶が最上位にある。年齢によって記憶のしやすさが変わるので、年齢に応じて変えていく必要がある。
・方法記憶とは、自転車の乗り方のように、体で動作を覚えているとされる記憶。無意識に作られ、言語化することが難しいが一度習得すると忘れない。
・知識記憶とは、きっかけがないと思い出せない知識や情報の記憶。「カール大帝が××年に何々をした」のように実感の伴っていないものです。
・経験記憶とは、自分の過去の経験が絡んだ、自由に思い出せる記憶です。自分の経験、実感と絡めているので、「あのとき、〇〇で覚えた(あった)こと」という具合に、定着をしやすい。もっとも、経験記憶も時が経てば単なる知識になってしまう。講義を受けると記憶にのこりやすいのは、教室、同室の人、視覚、聴覚の利用など刺激があるので、経験として記憶しやすいからだと思う。
・3~4歳は経験による記憶がまだないため、方法記憶しかない。それゆえ自分の実感に紐づいておらず、説明できないとのこと。
・中学生くらいまでは知識記憶が優位だが、その後は経験記憶が優位になる。自分の実感、感覚に紐づけていくといい。歩きながら思う、インパクトのある場所で行う、思い出すなど、すべて経験記憶になる。
・同時に、「こうきたら、こう」みたいな対応は方法記憶によるもの。経験による記憶を、方法記憶に落とし込めると記憶が長く定着する。例えば、「あの時にあそこにパスを出して失敗した(経験記憶)。しかし自陣に仲間がいない時はパスを出さない方がいい気がする(方法記憶)」という具合です。
・試験中にひらめくという場合、偶然ひらめくのではない。それまでに沢山の問題を解いて悩んでいるからこそ、その設問を類型化できてパターン化できるといえる。

4、勉強方法の勉強
・Aという知識を学んだ場合、Aという知識の理解の方法も学ぶ。つまりAという知識、Aという知識の覚え方と2つ学ぶことになる。
・次に、Bを学んだ場合、Bという知識、Bという知識の覚え方の2つを新たに学ぶ。それゆえに、Aの分を合わせると4つ学んだことになる。
・このように知識は2の階乗ずつ増えていくので、学べば学ぶほど、知識は増えていく。

5、まとめ
ヒトは失敗が前提というところが、とても印象に残っています。失敗しないようにするのでなく、失敗することを前提にする。いいですねえ。

受験脳の作り方

2020-10-20 17:50:30 | 書評
「受験脳の作り方」池谷裕二(新潮文庫)

こんにちは、ピッグです。この本はよんでよかったです。
勉強法の勉強を、実はしませんよね。そこで今回は勉強法について調査しました。

今まで「受験の本なんて高速回転がどうのこうのしか書いてない暗記主義だろう」と思っていましたが、この本は少し違いました。ではまいりましょう。

1、記憶のメカニズム
・PCは「ある」「ない」を0か1で表して電気信号で送るように、脳もデジタル信号を通して情報をやりとりする。それゆえにPCの考え方と似ている。
・脳内の電気信号を、神経伝達物質という。その送受信機を、シナプスという。
・シナプスでのやりとりによって記憶ができるが、記憶を一時的に保管しておくことを短期記憶という。短期記憶はPCでいうRAMにあたり、記憶の素早い出し入れは得意だがすぐに消滅してしまう特徴を持つ。
・長期記憶は大脳皮質に保管される。PCでいうハードディスクにあたる。
・長期記憶にするか短期記憶で終わらせるのか判断している部位が、海馬である。海馬とは太さ1cm、長さ5cm程度である。タツノオトシゴという意味だが、正確な由来はわかっていない。

2、海場の判断基準
・海馬の判断基準は、「生きていくのか不可欠かどうか」である。
なぜこの基準かというと、「臭くなったものを食べたら食中毒を起こす」とか「石が頭に向かって飛んできたら逃げないとケガをする」という情報と、「ソクラテスが死んだのは紀元前399年である」などという教科書的な知識では、食中毒や石の方が命にかかわり大事だからである。動物にとって学習とは、危険な状態におかれた経験で得た情報を記憶して、ふたたび同じ目に遭わないように回避することであるからだ。
・では生存に不可欠な情報で振るいにかける必要があるかというと、エネルギーの節約にある。脳は体重の2%の重量に過ぎないが、消費エネルギーの20%を占める。それゆえ不要な情報を蓄えるとエネルギーの無駄づかいになってしまう。
【結論1】
脳は覚えることよりも、覚えないことを得意としている。

3-1、海馬の騙し方
・そこで物事を覚えるには海馬を騙す必要がある。海馬が「生存に必要な知識」と認識する方法は〇〇ある。(1)繰り返すこと(2)ワクワクしたりドキドキすること(3)空腹になること(4)歩くこと(5)学習後に寝る
(1)繰り返し
・繰り返しのポイントは①タイミング②復習の対象③出力を重視することにある。
①タイミング
復習をいつするかである。2回目の学習(復習1回目)までに1か月経過すると、記憶は殆ど消えてしまい初めての学習と認識されてしまう。そこで
1回目 学習初日
2回目 1回目の翌日
3回目 2回目から1週間後
4回目 3回目から2週間後
5回目 4回目から1か月後 に学習をする。

②内容
復習の効果は同じ内容のものに対して生じるということ。同じ科目でも参考書が替われば、一から参考書を理解しなおさないといけない。世の中には参考書の優劣はあるかもしれないが、思ったほど大きな差があるわけではない。だから参考書は同じものを繰り返すこと。ちなみに参考書選びのコツは、第一印象で決めること。本には相性があるため。

③出力
テストをするということ。普段何気なく目にしていても、問われないと頭に入らないものは沢山あります。例えば、「一番近くのケーキ屋さんは?」と聞かれて答えられないことがあります。目にしてはいるけども、答える(質問される)機会がないと覚えられないということです。また、復習をするときに間違えた問題だけを見直すのはいいものの、再テストする時は合っていた問題も含めて解きなおすのがいいそうです。問題を解くとはテストするということなので、常に思い出す作業がありテストされる回数が増えることを意味するからです。

(2)ワクワクさん
ワクワクさんがでるとシータ派が出て長期記憶(LTP Long Term Potentiation)しやすくなり、繰り返しを80-90%減らすことができる。

3-2、偏桃体への働きかけ
偏桃体が機能すると、(本には書いてないけど、おそらく海馬に働きかけて)長期記憶(LTP)になりやすい。偏桃体は感情を生み出す働きをしていることから、「感情が盛んな時に物事が覚えやすい」。大自然の中は常に生命の危機にさらされているので、効率よく危険を回避するために恐怖など感情の揺さぶりを記憶しやすいメカニズムにしたとのこと。具体的には

3-3、空腹になる
自然界の生物は常に飢餓との闘いのため、空腹の方が記憶力は高いことがわかっている。空腹になるとグレリンが放出され海馬に届き、長期記憶を生じやすくなる。

3-4、歩きながら勉強する
あるくと海馬からシータ波がでるので、記憶しやすくなるそうです。机の周りをグルグル回りながら考えることは、アニメだけでなくて効果あるそうです。

4、睡眠
・脳は睡眠中に情報を組み合わせて整合性をテストして、過去の記憶を整理していく。寝ることで海馬に整理のチャンスを与えていると考えることができる。
・寝る前はモヤモヤしているのに、寝て起きたらなんでもなく解決したりすることを「レミニセンス(Reminiscence)」現象と呼ばれている。
・そしてシータ波が最も出るのは睡眠中で、とりわけ深い眠り(ノンレム睡眠)の時である。ちなみに、このレム睡眠とノンレム睡眠が交互にくるのは鳥類や哺乳類の特徴。爬虫類や両生類にノンレム睡眠はない。
・睡眠前は記憶系がよく、起床直後は暗記系の復習。そして頭がさえるうちに論理系をやる。
・就寝1~2時間前は記憶のゴールデンタイム。(タンパク質摂取のゴールデンタイムみたいだ!)
・時差ボケは海馬の細胞が死ぬので注意。

5、ここまでのまとめ
・長期記憶になるかは、海馬が判断。
・海馬の判断基準は、生命維持に不可欠か。
・その結果、試験とかその類は殆ど忘れる。
・忘れないようにするには(1)繰り返すこと(2)ワクワクしたりドキドキすること(3)空腹になること(4)歩くこと(5)学習後に寝る。
・具体的には、
食事前→勉強(暗記系)
食事後→好きなこと
どうしても眠くなる時→その前に勉強(暗記系)
起きた直後→寝る前に勉強したことの復習(暗記系)
起きてすっきりしたとき→勉強(論理系)

もっとわかりやすい本はこれ。
小学生向けにかかれていますが、ここに書いたことすべて書いてあります。

「勉強脳のつくり方親子で学ぼう! 脳のしくみと最強の勉強法」(日本図書センター)


勉強は教えてくれる先生は多いけど、勉強の仕方を教えてくれる先生は多くないはず。小学校や中学校の塾の先生のやり方で止まっている人は、見なおした方がいいと思います。

続きは次回。

ゼロからはじめる心理学・入門

2020-09-30 14:54:52 | 書評
こんにちは。ぴっぐです。
ついに扇風機をしまいました。9月中にしまうのは早い方です。
今日はなかなかいい本の紹介です。

ゼロからはじめる心理学・入門
金沢創ほか
有斐閣ストゥデイア

10の心理学(計量心理学、知覚心理学、学習心理学、進化心理学、神経心理学、個人差心理学、認知心理学、発達心理学、感情心理学、社会心理学)の概要と、発達障害、アセスメントと支援という項目からできています。

興味のある発達系から、本を要約していきます。

1. 発達障害
発達心理学では多数派が辿るパターンのことを「定型発達」とよび、多数派が通らない発達を非定型発達と呼ぶそうです。したがって、非定型発達は通常よりも発達が進みすぎている場合も、遅れている場合も含みます。DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorder)という検査手法をとりますが、DSMとは診断と統計に関する指針です。統計とあるくらいですから、多いか少ないかを示すものにすぎず価値判断は介在していません。つまり多数派だからよくて、少数派だからダメだということは意図していません。
「発達」という単語がつく理由は、特定の障害が、特定の年齢で顕著になるからだそうです。例えばADHDは小学校に入学した学童期、特に6歳から10歳にかけてその特徴が明らかになります。自閉症は定型発達の発話開始時である3歳頃に、その診断がつくそうです。発達障害とはdevelopmental disorder とされていますが、disabilityとされていないことがポイントとされます。
disabilityという用語には何等かの能力の欠如を意味しているのに対し、disorderという語には、何らかの能力を特定の環境において適切に運用できないというニュアンスがある。例えば自閉症児が他者にまったく共感しないように見えたとしても、それは共感の能力が完全に欠如しているのでなく、もともと持っている何等かの要因に邪魔されて発達してきた結果、共感の能力を発揮できない。(p.168-169)
と考えます。つまり能力はあるけども、それを遣えないということです。
そして筆者の言葉が素晴らしいと思うのは以下です。
現代の社会システムや環境が、定型的な心の状態に向けられすぎているがゆえの発達「障害」なのかもしれない。(p.169)
定型的とは均一であることです。コンビニ、お店、すべて日本の商品は同じ。入社の時期も、仕方も、その後も出世もほぼおなじです。均質性が強いところでは、少数派である発達障害の人は生きにくいのかもしれません。

2. 計量心理学
心は目に見えないので、客観的にわかるようにする必要があります。その計測について突き詰めるのが計量心理学です。例えばミュラーリヤーの錯視というものがあります。これは横軸の長さが同じの2本の線の端に、異なる線を引くと長さが違ってみえるものです。人によって「10%長く見えた」、「5cm長く見えた」など感覚は異なるものの、長く見えるという点で一致します。その長さにかんするデータを集めることで、「20%長く見える」という具合に定量化しようとするものです。正確にどの程度変わったか計測できないものの、一定程度長くなったことを計測することで数値化しています。

3. 知覚心理学
心理学では伝統的に知覚を中心に研究が進んでおり、「目の前に見えている視覚世界は、外の本当の世界か」(p.19)と議論してきています。知覚とは目で見えるものですから、取り組みやすいのでしょう。ではなぜ目の前に見えているものが世界かわざわざ議論したのか。それは科学的には見えていないはずのものが、見えるものとして脳内で処理されているからです。全ての人間の目には盲点(視神経は網膜の内側にあり、視神経を脳に接続するため網膜に開ける穴。この穴のため、見えない範囲が生まれる)
があり、実際には見えない領域があります。そして盲点は空白と認識されそうですが、何もない空間として認識されることはありません。これは目が見えていないはずのものを、補っているからとの仮説が立ちます。
目の盲点が面白いようにわかる図─脳は見えていない部分を補っている

4. 学習心理学
学習心理学とは、人が外界からの刺激に対してどのような反応をするか。その反応をする理由は何かを研究するものです。反応には2種類あり、レスポンデントとオペラントがあります。レスポンデントとは、決まりきった反応のことです。例えば、食べ物を見ると唾液がでるというように、「食べ物」(刺激)から「唾液が出る」(反応)が固定されています。オペラントとは、刺激に誘発される反応が固定化していないものです。例えば、難しい問題に直面すると、自傷する子どもがいます。この自傷する理由が他人の注目を得ることにある場合、注目を得る別の手段があれば自傷しなくなる可能性があります。例えば自傷行為が誘発されたとしても平静を装い、注目しないようにする。そこで「先生!」と呼ぶかもしれないし、机をバンバン叩くかもしれない。こちらにとって望ましい行動の時に対応すると、その行動を次からするというものです。

難しい問題(刺激)→自傷(反応)→注目される(結果)
          ↘先生と呼ぶ ↗

ここで先生と呼べばどんな状況でも必ず注目される訳でないので、先生と呼ぶ行動そのものに因果関係が必ずあるわけでありません。しかし先生と呼べば、注目を得ると勘違いしていることになります。この勘違いの典型例が
迷信行動です。
「多くの文化圏では、たとえば旱魃などの際に人々は雨が降って欲しいと考え、雨乞いなどの儀式や祭りがおこなわれることがある。ここで偶然にもアメが降ってきたと仮定しよう。すると仮に次の旱魃が訪れたとき、人々はまた雨乞いの儀式をおこなおうとするかもしれない。…重要なことは、この3つに因果関係があるのかないのかということを、ここでは問題にしていないという点である。」(p.48)
つまり真の因果関係がないけども、真の因果関係を必ず知ることができるとは限らないために、一定の行動(雨乞い)によって雨(望む結果)が誘発されたと考えるわけですね。実はもっと面白い例があります。

1971年にJ.スタッドとV.Lジンメルハグのハトの実験です。
12秒ごとにエサが出てくる条件…を用意し、実験箱の中のハトがどのようなふるまいをするかを示すかを観察したものである。…何もしなくても一定時間たてば餌は出てくるのであるから、この真の因果関係をハトは見抜き、じっと餌が出てくるのを待ち続けるだろうか。…次の餌が出てくる12秒という時間枠に操られるような、さまざまなふるまいをハトは見せたのである。…たとえば、あるハトは、エサが出てくる12秒が近づくと、次第にえさ箱をつつく回数が増えるという行動を自発するようになった。また別のハトは、エサが出てきた2秒後に、体を4分の1回転させるという行動を自発するようになった。さらに別のハトは、ちょうど真ん中の6秒付近で、エサが出てくるカベ沿いに、いわば雨乞いの儀式のようにそれぞれのハトにおいて維持され続けたのである(p.49-50)
つまり生物は自分の行動と結果に因果関係があると思いこんで行動することが、ままあるということに思います。なんでも知った気になって恥ずかしい気がします。

5. 進化心理学
進化心理学とは、特定の行為をなぜするか考える学問だそうです。例えば、涙を流すという行為は①目が乾かないようにする意味(continuous tear)②悲しみによって流れるという意味(emotional tear)の2種類あり神経支配が異なるそうです。そして人間とチンパンジーは遺伝子が95%以上同じであるにも関わらず、感情による涙は流しません。ではなぜ悲しみによる涙を人間が維持し続けたのか。
他者の攻撃行動を抑制し同情をひく…自らの弱みをあえて見せる行動ととらえれば、逆になくことによって他者の深い信頼を獲得することができるかもしれない(p.54)
からだそうです。このような行為を適応的な行為、と呼びます。
そして進化において重要なことは2点あり、
(1)遺伝子による進化(垂直伝播。gene遺伝子)
(2)脳に蓄えられた情報によって同世代集団に対して伝播することによる進化(水平伝播。meme)です。


まず遺伝子による進化で大事なことは
①兄弟間で異なっていること(変異)
②その違いにより生き残りに差があること(適応度) です。
そして適応度の高いものが生き残ります。
それに対して脳の情報による進化とは、文明の継承と言えます。例えば石器の作り方は遺伝子によって継承されてきたというよりも、脳に記録された情報が個体間で伝達され保持されてきたと言えます。遺伝情報であるならば、誰しも石器を作れるようになるからです。そして遺伝情報は承継に時間がかかるが、水平情報なら早く承継されます。

6. 神経心理学
心には実体がないにも関わらず存在するとされています。そして心は脳にあるとされますが、その根拠は脳に変化が加わると性格が変わることにありまます。フィニアスゲージ事件があります。
19世紀のアメリカの鉄道技師であったゲージは、鉄の棒が貫通するという事故により左前頭葉を大きく損傷することとなった。このような深刻な事故にもかかわらず、左目は失ったものの、彼は数か月で身体的な健康を取り戻すことに成功した。しかし、部下に信頼され仕事もでき才能あふれるリーダーだった人物は、感情を制御できず「気まぐれに以前には考えられなかったような冒涜的な言葉を口にするようになった」という。(p.68-69)
このことから前頭葉は感情の抑制、順序だてて物事を考える機能を担っていると考えられています。
脳の一部が心にどこにつながり、どのような役割を果たしているか研究するのが神経心理学です。私が通う清和病院 は「神経研究所」に附属していますので、脳のどの部位が発達障害と関係あるか分析するアプローチを得意としているのかもしれません。そう思うと、認知療法やカウンセリングに力を入れていないように見えるのも納得できます。
またペンフィールドさんによる調査によると、脳は体の各機能と連動しているようです。脳の体積に対して手、唇、舌の割合が大きいそうです。
ペンフィールドの小人 
ここで伝えたいことは、脳の一部を損傷すると、体はピンピンしていても、その体や心を動かせなくなるということです。

7. 個人差心理学
個人差を調査することを目的とした分野だそうです。結局これは、多数派とどのくらい乖離しているかを測るものにすぎません。乖離していたからと言って、劣るということでないそうです。興味なかったので割愛。

8. 認知心理学
認知心理学とは、人間の心の活動をコンピューターに例える学問だそうです。つまり、アウトプットが同じであればそのプロセスは同じになるはずだという仮定をします。例えば、似たような入力情報であるのにアウトプットの早さが違う場合、その過程における処理が異なるとかんがえます。そこでアウトプットを同じになるようにすれば、仮定も同じになるはずだとするそうです。
また認知心理学では記憶のメカニズムについて研究が進んでいますが、E.F.ロフタスによると記憶とは水に溶けたミルクのようなものだそうです。フォルダの中のファイルのようにきれいに整理されているわけでなく脳の中でバラバラに断片的にあり、思い出そうとする度に再構成する。それゆえ偽りの記憶ができてしまうそうです。
自動車事故のビデオ画像を見せた後、画像には存在しなかった「小屋」を質問項目に入れて「小屋をすぎたとき車はどの程度のスピードでしたか」と問うことで、実際には存在しなかった「小屋」が、再構成の際に入り混む(p.108)
のだそうです。
しかしながら断片化されずに記憶できることがあり、それがフラッシュバルブ記憶と呼ばれます。強い感情的な体験を伴うか、自閉症の人に見られることが多いそうです。

9. 発達心理学
従来は段階的に発達していくと考えられていたが、今は失うことで能力を獲得すると考えられている。例えば、LとRの音を赤ちゃんは聞き取ることができるが、日本語では両者の差異がないために聞き分ける能力を失っていくというものです。その他は割愛。

10. 感情心理学
カット

11. 感想
心理学に様々な分野があることがわかり、次に自分がどの分野を学べないか分かった気がします。

Q&Aでわかる テレワークの労務・法務・情報セキュリティ

2020-09-04 18:10:36 | 書評
こんにちは、ぴっぐです。
Q&Aでわかる テレワークの労務・法務・情報セキュリティ(足立 昌聰 (著, 編集))(技術評論社)

労務、法務、情報セキュリティ大きく3つにわけて、テレワークで注意すべきことが書いています。気になるところ記載していきます。

1、労務
 労務で気になるのは導入の方法、賃金、設備投資と思います。
 導入手順としては大きく4つのステップに分かれます。導入目的の明確化、対象者の選定、実施環境の整備、従業員説明と周知という具合です。
対象者の選定において非正規職員(≒有期雇用者)を退職外にできるか問題になりますが、2020年4月より同一労働同一賃金の原則が導入されたので雇用形態のみを理由として区別することができないとしています。
 次に実施環境の整備つまり通信費、光熱費などが会社負担になるか問題となります。そもそもなぜ問題になるかというと、労働基準法89条に以下の規定があるからです。
第89条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
5 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項


もし労働者負担とする時は、就業規則に記載することになります。
この本は「テレワークが週に1、2回とその頻度が少なければ、大した問題にならないかもしれませんが、これが週5日フルで在宅勤務をしてもらうといった場合、一定金額を在宅勤務手当の名称で支給する企業も少なくありません」(p.41)としています。巻末にサンプルをつけていますが、以下のようになっています。
(費用の負担)
第16条 会社が貸与する情報通信機器を利用する場合の通信費は会社負担とする。
(2)在宅勤務に伴って発生する通信費、水道光熱費等は自己負担とする。
(3)業務に必要な郵送費、事務用品費、消耗品費その他会社が認めた費用は会社負担とする。
(4)会社が必要と認める場合、テレワークに伴う環境を整えるための一時金や臨時の手当を支給することがある。

原則として、光熱費等は従業員負担。もっとも、在宅勤務手当等を出すことができますと(4)に定めているんですね。必ず在宅勤務手当を出すわけでないのがポイントです。
 最後に賃金です。これは勤務場所が変わっても大きな変更はないので、従来のままとしています。
 
 ここでせっかくなので、就業規則について書きます。
 日本の労働法は、①就業規則に記載して②周知していることは③合理的内容である限り、契約の内容になるという法律があります。
第7条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。

したがって就業規則に書かれていることは労働者の同意の有無にかかわらず、原則として契約の内容になる。そして就業規則変更にも労働者の同意は不要で、労働者代表に意見を聞けばできる。もっとも一応の歯止めとして、①労働者の受ける不利益の程度②労働条件の変更の必要性③変更後の就業規則の内容の相当性④労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情から判断して相当という4要件があります。
第10条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

じゃあ、どんな時に不利益変更が認められたの?という具体例が、需要があったら書きます。


2、法務
押印、取締役会や株主総会のオンラインなど触れています。
 まず押印。そもそも契約は押印がなくても成立するものです。
民法 第522条
1 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

したがって押印がなくても、締結権限がある人が承認したとわかるようにしておけば記録としては十分です。

 次に、取締役会や株主総会。
 取締役会は完全リモートでもできますが、株主総会はできない可能性があると書いています(p.84)。 
経済産業省 ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド(案)に対するご意見の概要及びそれに対する回答

そこでハイブリッド型バーチャル株主総会をあげています。
経済産業省 ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイドについて
具体例


第3、情報セキュリティ
セキュリティルールの作り方など書いています。こちらは以下のものを基準にすればいいと思います。
「政府機関等の情報セキュリティ対策のための統一基準群(平成30年度版)」について

NHKから国民を守る党の研究

2020-04-09 16:17:35 | 書評
NHKから国民を守る党の研究
えらいてんちょう(矢内東紀)(KKベストセラーズ)

NHKから国民を守る党と戦っている(?)矢内さんの本です。ずっと気になっていました。なるほどなあと思う内容です。筆者の矢内さんは、もともと慶応大学経済学部を卒業後。リサイクルショップを開きながら、生活保護申請のお手伝いなどしていきます。しかし生活保護申請をする人の実体としては、お金の使い方のおかしいひとばかりがいるなと感じてきたとあります。
「貧困は社会のせいだ!」と信じて、生活保護申請随行のボランティアをしたら、クズばっかりだった話

矢内さんは発達障害を自認しており、衆議院議員選挙に立候補すると言われています。
しょぼい政党

しょぼいという聞こえが悪いですが、矢内さんの言いたいことは、片意地貼らずにできることをしていこうというように感じています。

矢内さんはN国党自体に批判的ではあるものの、N国党について調べて本を書いています。
本によると、立花さんは以下の経歴になります。
2005年 NHK退職
2012年 立花孝志ひとり放送局開始
2013年9月 大阪府摂津市議会議員立候補 落選
2014年2月 東京都町田市議会議員立候補 落選
2015年4月 千葉県船橋市議会議員立候補 当選 です。

選挙を一度経験した上で、いけると思ってどんどん出ているのかもしれません。
2011年には動画投稿を開始しているので、はじめ社長という人気ユーチューバー(2012年3月)よりも開始が早いとしています。ユーチューブの再生回数が1日平均3000回を超えたのが2012年4月としており、そのころには何をすると再生回数があがるかを知っていたのかもしれません。

N国党というと2019年柏市議選にてヤジをした私人を公職選挙法違反として逮捕しています。このことが有名ですが、立花さんはそうそう簡単に検察に起訴されないことをどこかで悟ったのかもしれません。それゆえ取締のないルールはファールとは認定されないサッカーのようなものと感じて、アンパイアにファールされない限りはやりつづけることを学んだのかもしれません。

矢内さんの分析でなるほどと思ったのがれいわ新鮮組との比較です。
<類似点>
・どちらも党運営が独裁的である。
・ユーチューブ、SNSを活用して、寄付金やボランティアを集めている。
N国党は地方選挙を重視している。一方で支持者との交流は重視しておらず、ポスター貼りや電話番などのボランティアについても「やらない人間には公認を与えない」というように飴と鞭を採用している。
れいわは国政選挙を重視している。れいわ新鮮組は市議会議員選挙にはほぼ立候補者を擁立していない。一方、地回りをして支持者と交流することを重視している。支持者に役割を与える。ポスター、ポスティング。山本が涙を流しながら支持を訴えるなど、支持者ひとりひとりの自尊心をくすぐる、承認欲求をくすぐる。寄付を募るのも「あなたの力」を必要としているというメッセージになる。
(略)
選挙でヤジを飛ばされた際に、N国党は「嘘つき」といわれただけで執拗に集団で追いかけまわし不法な「私人逮捕」をする。一方、山本は「クソ左翼死ね」というヤジを受けた際に「ありがとうございます。クソ左翼死ねというお言葉をいただきました。ありがとうございます。死にたくなる世の中を変えたいために私は立候補しているんだ。みんなに生きていただきたい」と返しており、そもそもの度量が違う(p.99-101)

N国党はウエブ上ネットワークでつながっているので、集団としてのやりがいや達成感でつながっているわけではないことを書いているのだと思います。つまりN国にかかわるメリットがある人が関わっているだけであり、契約的ということなのかもしれません。

立花さん自身はNHK会長宅に夜訪れる動画を出しているなどして、個人的なアプローチが多い。それを真似する支援者も多いため、反対勢力への言論封殺をしているという趣旨の記載があります。これは威嚇ともいえるわけですが、その行為そのものによって刑事罰になることもないでしょうから、今後もこの手法は続くと思います。

でも自分のお家が突撃されてもいいのでしょうか。
突撃されてもいいと思っているので、自分の住所をさらさないという戦略なのか。それとも突撃されたところで自分は負けないという意味なのか・・・

N国党議員の中でもコンセンサスができてないのかもしれませんね。

ドイツ人はなぜ、1年に150日休んでも仕事が回るのか

2020-02-15 19:37:37 | 書評
熊谷 徹 こんにちは。ピッグです。 今日は書評を書きます。 この本は2015年に出版されています。筆者によれば元NHK記者として働き、その後25年ほどドイツに住んでいるようです。以下、筆者の言葉を借りながら、気になることをつぶやいていきます。
ドイツ人のサラリーマンは、1年に150日休んでいる。…その内訳は、土日が150日、それに祝日やクリスマス休暇、有給休暇などを加えて150日になる。 実際には150日以上休んでいるドイツ人も珍しくない。ドイツ企業のほとんどのサラリーマンは、毎年約30日の有給休暇をほぼ100%消化し、1日10時間以上働かない。午後6時にはたいていの企業のオフィスはがらんとしている。日曜日と祝日の労働は、原則して禁じられている。…ドイツでは日本以上に休暇を取る権利が法律によって保障されている。1963年に施行された「最低限の休暇に関する法律」は、すべての勤労者は1年間に最低24日間の有給化を取る権利があると定めている。(p.3-19)
本当かなと思い調べました。 ジェトロのページにこうあります。年間25-30日のお休みだと。(p.8) JETRO 欧州・ロシア雇用制度一覧(2016 年 10 月) それよりも気になるのはこちらです。
労働時間法は1日の労働時間を8時間と規定している。実際には多くの労働協約がそれよりも短い労働時間を規定している。(p.8)
労働協約とは、企業と組合の代表が結ぶ契約のようなものです。ドイツと日本の制度は異なるかもしれませんが、日本の場合は事業場の従業員の3/4以上が加入していれば、その事業場の全従業員に効力がおよびます。(労働組合法16条、17条) 8時間よりも短いのかあという驚きです。 じゃあ日本の有給取得率はどうなっているのか調べてみました。 厚生労働省 H31 就労条件総合調査 付与年休の平均は18日。 取得日は、平均9.4日。取得率は、52.4%だそうです。 ちなみに年間休日総数の平均は、108.9日。 おおきく違いますね。 土日が月に8日として、年間96日。そこに年末年始が5日と計算すると101日。 年間休日108日って、そこから7日。祝祭日の全部は休めないってことですよね。 初年度の年休は10日と思いますが、その分しかとれないんですね。 残念です。 次に気になるのはこの記載。
ドイツでは、有給休暇をとっても、同僚から否定的な見方をされることは、まずない。良心の呵責を感じる人もいない。社員全員が、交代で30日の有給休暇をとるからだ。したがってねたみはおきないし、旅行先からお土産を買ってきて同僚に配る必用もない。(p.26-27)
本当なら素晴らしいですね。それは権利だからですよね。 ではどうしてそんな仕組みができるのか。こう記載があります。
ドイツ人のお客さんが、ある企業に問い合わせの電話をかけたとしよう。担当者は2週間の休暇を取っていて、オフィスにいない。彼の同僚が電話に出て、「担当者はいま休暇をとっておりますので、私が代わってご用件を承ります」と答える。 日本ならば、お客さんは「2週間も休暇を取るとは何事だ」と怒るかもしれない。 しかしドイツのお客さんは、「担当者は休暇中だ」と言われても怒らない。お客さん自身も自分の会社で休暇を取るし、ドイツ社会で休暇がきわめて重要であることを理解しているからだ。ドイツのお客さんは、自分の顔なじみの担当者がいなくて問い合わせに対応できなくても、代わってきちんと対応してくれる人がいれば、「何が何でも自分の担当者を出せ」とは要求しない。ドイツでは仕事が人につくのではなく、企業についているのだ。(p.27-28)
これは職務主義を言っているのだと思います。今なにができるか、そのスキルに値段が付くという考え方と思います。いま英語ができるのは10000円。部長としてマネジメントできるから、10万円などです。したがって営業職から経理にかわった場合、経理の経験はゼロなので給与は下がることになります。それに対して、日本の場合は人に給与がついているので、営業から経理に代わっても給与がさがらない仕組みとなっています。 次に気になるのはこの記述。
ドイツの管理職は社員に休暇を完全に取るよう推奨する。これは企業経営者が社員の健康を守るような労働条件を確保することを、労働法によって義務づけられているからだ(これをFuersorgepflicht つまり「保護義務」と呼ぶ)。(p.30)
本当かなと思い調べました。なんとなくそれっぽいところまでは見つけました。 次の記述は、病欠のための休みがあるという点。 これも本当っぽい 記事を見つけました。 ただ、この権利保障の裏にあるのは、効率という考えのようです。

ドイツで残業という言葉に付きまとうイメージは、日本よりはるかに悪い。残業時間が多い社員は、無能と見なされることもある。つまり仕事の効率が悪く、無駄なミスが多いので、労働時間が長くなると考えられるのだ。(p.79)
ふむふむ本当なのかなと思って調べると、反対を述べる人がいます。 「ドイツに残業がない」なんて、真っ赤なウソ。海外を理想化しすぎる人の言葉には、気をつけよう。 「ドイツ人は残業しない」説の大いなる誤解 この雨宮さんは、残業あると書いています。しかしここにも気になる記述があります。
いくら「ドイツだから」といっても、終わらせなくてはいけない仕事があるのにみんながみんな仕事を放り投げて家に帰るはずがありません。 確かに、「わたしは帰ります」と権利を主張する人は日本よりもいますし、実際に仕事を放り投げて定時帰宅することも可能でしょう。でも問題は、そういう人が上司や会社に評価されるか、ということです。
帰れるんだ。評価さえ気にしなければ。これはいいことを聞きました。
ただ、ドイツにおける残業というのは、あくまで自分やチームの仕事を終わらせるためにするものなので、付き合いや理不尽な要求によるものは少ない、という側面はあるかもしれません。
なるほど。とりあえずやる、という観念がないのですね。 それでは給与はどうやって決めているのでしょうね。 経営者側としては時間に対して膨大な仕事を与えて、無能なレッテルを貼っておくほうが簡単なはずです。そこが見えません。 また天宮さんの記事にもあるのですが、労働時間貯蓄制度があるそうです。 今日2時間残業したから、明日は2時間就業時間中であっても早く帰るといった制度です。かなりフレキシブルでいいですね。 その上で天宮さんがいい言葉を書いていました。
欧米の有給休暇消化率を踏まえて、日本もそれに見習おうという意見も目にします。 たしかに長期休暇、バカンスはヨーロッパの多くの国で認められた権利です。ドイツもまた、毎年1カ月の休暇を取る国としても知られています。 でもその数字だけを見て「みんな休暇を取っても仕事が回る。さすがドイツ!」なんていう主張には、ちょっとツッコミを入れたくなってしまいます。 誰かが休暇を取れば、仕事は滞ります。バカンスに最適な夏はとくに、オフィスがガラガラになります。この前なんて、税務署に行ったら租税条約の担当者と確定申告の担当者が両方休暇中で、その後に行った歯医者もまた休暇で閉まっていて、処方箋をもらおうとホームドクターのところへ行ったら、彼女もまた休暇中でした。ちなみに、たまに行くカフェもお休みだったし、駅に入っている安いアジアンレストランも閉まっていました。 「みんな休暇が取れていいじゃないか」というのは、あくまで自分が休暇を取る側の話です。仕事を依頼した側、ユーザー側に立ってみましょう。バカンスのせいで全然仕事が回っておらず、手続きがなにも進まない。担当主義なので、「それは担当者じゃないとわからない。担当者が帰ってくるのは1カ月後」と言われる。これが、「休暇が取れるドイツの姿」なのです。
ぼくはそれでいいと思っています。 じゃあなんでこんな考えがあるのか。熊谷さんの記載にヒントがある気がします。
 米国や英国は、純粋資本主義と、競争原理を最重視する自由放任主義に基づく市場経済を採用している。これらの国々は、政府が市場や企業の経済活動に介入することを最小限に抑え、「小さな政府」を理想とする。 社会保険制度は、市民の所得格差による弊害を減らすことを目的としているが、米国や英国では社会保険制度を最小限度に抑えている。社会保険制度が充実していないために、事故などで動けなくなった市民は、民事訴訟によって損害賠償を請求する。訴訟が部分的に社会保障制度を代替する機能を果たしている。 このため、「弁護士産業」がドイツや日本よりも発達している。所得税率や法人税率は低く抑えられ、政府による企業活動の規制も少ない。新しいビジネスを始めるには、米国は世界で最も適した国である。 米国では、競争に勝った富裕層はますます豊かになり、競争の負け組となった低所得層は貧困に苦しむという構図が事実上追認されている。ある意味では、弱肉強食のルール、ジャングルの掟が支配 している。利潤の極大化と所得格差をあえて是認する姿勢が、米国を世界最強の資本主義国家に育てあげた。アップルやマイクロソフト、グーグル、フェイスブックなど21世紀の成長企業の多くが米国企業であることは、偶然ではない。 ドイツの社会的市場経済は、米英と異なり、政府が大きな役割を果たす経済体制だ。企業は、政府が定めた法律の枠の中で競争をしなくてはならない。たとえば最低休暇日数や、労働時間に関するルールを破って競争をすることは禁じられている。 競争に敗れた企業や市民を救済するために、政府は社会保険制度を整備する。病気やけがなどのために働けなくなった市民、リストラで解雇された市民のためには、政府が「安全ネット」を提供する。失業した市民も国の費用で職業訓練を受け、再就職のための道を探ることができる。 社会的市場主義という言葉の中の「sozial=社会的な」という言葉は、社会保障や社会保険という言葉に使われている。つまり、政府が金を投じて市民の健康や最低限の暮らしを守る仕組みのことである。 この言葉、ドイツでは良い響きを持っている。例えば、「あの企業はsozialな会社だ」というと、「利潤の最大化だけでなく、社員の福利厚生にも配慮する会社だ」という意味だ。つまり株主や経営者だけでなく、勤労者の権利などの「公共の利益」をも重視するという、前向きな評価が込められている。(p.114-117)
利潤の最大化を会社に求める代わりに社会保障を厚くするか、利潤の最大化以外の要素も会社に認めるかということですね。 ふむふむ。 早く資格とって、ドイツの仕組みを勉強したいなあ。

読書だけ武器にしろ

2020-01-13 17:04:24 | 書評
筆者 堀江貴文
情報だけ武器にしろ(ポプラ新書)

私は堀江さんの本を何冊も読んでいますが、今回は感想をまとめます。
堀江さんは「今の常識はフィクションでしかない」(p.13)として、その意味は「国家や宗教、貨幣など社会にはルールがあって、皆その枠の中で生きているが、それらはすべて人間が作り出した思い込み」(p.15)とします。「たとえば、昔は宗教の力が強くて、皆宗教が決める戒律にしたがって生きてきた。だが、時代が進むにつれて宗教の根拠が危うくなって力を失った。…だから、社会が与えるルールや常識なんていうものは、そのまま受け入れず、いちいち疑ってかからなくてはならない」(同ページ)としています。つまり既存のルールは時代とともに変わる可能性があるし、自分で変えられることもできるので、ルールに従うことだけを考えるのはやめようと続いていきます。そして「自分の強みを活かせる市場を選ぶ」(p.16)には、「情報を高速で取捨選択する力」(p.21)が必要だという展開になります。そのためには、
① 興味のある人等にSNSでフォローしたり、実際にあったりして、情報を収集する段階
② その情報が正しいか自分で考える段階
③ 最後に、発信する段階 とあります。

ここで今までの私なら(というか今でも思っているけど)、「情報収集が面倒くさい」、「発信するときは気を遣うよね」と思っています。その点について堀江さんは以下のようにも述べます。
1、情報収集が面倒くさいについて
使える情報を手に入れるには、情報の選択眼を養うことが必要だ。そのためには、「質より量」。前提として「圧倒的な量の情報」のインプットが大切になってくる。…極論をいうと、取り入れた情報は、すぐに忘れてもかまわない。本当に大事な情報は脳の片隅で待機してくれている。脳はよくできている。一言一句、丸暗記はできなくても、「そういえば、△△について□□さんが面白いことをいっていた」などと、大体の情報のしっぽをドンピシャのタイミングで引っ張り出してきてくれる。必要に迫られたとき、情報の端緒さえ思い出すことができれば、あとは検索するだけでいい。(p.25-)

なるほど情報そのものに沢山触れる機会を作ることで、だんだんと選球眼が養われていくわけですね。では、情報そのものを大量に処理することが面倒な人は、どうすればいいのでしょうか。

「やりがいってなんだ?」「人生にて幸福とは何だ?」「努力って何だ?」こんなことにいくら頭を使っても、残念ながら何も生まれない。本当に没頭できる「仕事」と「遊び」で自分の時間を埋め、さらに情報のシャワーを浴びれば、抽象的な問答に悩まされることはなくなる。
このように、大量のインプットをし続けてみてほしい。情報の取捨選択が飛躍的に上手くなっていく。同時に、インプットの方法までが最適化されていく。(同p.27-28)

逆説的なんですが、大量の情報をこなそうとした結果、すでに見たことがある情報が多くなって、結果的に処理が早くなると言っています。つまり経験することで何となくやり方がわかり、なんとなくわかってきたので処理が早くなると言っています。残念な気持ちであると同時に、そうかもなあと思います。

では新しいことが苦手なASDの人はどうするか。
それは小まめに休む、「まあ、しょうがないか」と休み休みにいくことだと思います。
結局、情報量と情報の新規性ゆえに疲労はたまりますから、緊張感の解除には休むしかありません。そこで大量に処理するということは、大量に休むことと思います。

同時に、これは同じ考えだと思ったのは「自分の意見に近い情報だけを優先して集めない」という部分です。
自分の考えに近い情報(意見)ばかり集めれば、誰だって心地いいし、安心できる。けれどもそんな情報ばかりにひたりきっていたら、批判性や批評性や、巧みに反論するような論理性は育ちにくい。…「明らかに意見が合わない人」の文章を意図的に読んだり…。もちろんそんなことをしていると、カチンとくることはある。ストレートにむかつくこともある。ただ、部分的には「何だ、いいこといってるじゃん」と素直に思えたりする。自分自身のバイアス(偏見)を修正できることだってある。(p.45-46)


2、発信するときは気を遣うよねについて
一般の人が文章を書こうとするとき、次のようなことを考えはじめると、ますますアウトプットから遠ざかってしまう。「誤字や脱字があったら、恥ずかしい」「固有名詞を間違えたら、バカと思われるんじゃないか」「事実関係の記述をミスったら、大変な問題になるんじゃないか」…。もちろんアウトプットの完成度は高いに越したことはない。でも、「仕事」じゃなければ100点満点を目指す必要はないだろう。万一誰かから指摘を受けたら、むしろ「ありがたい」。注目されていることに感謝すればいい。間違いについては後から直せばいいし、リカバリーなんていくらでも可能だ。(p.158)

失敗そのものを前提にして、そこでかく恥なんて気にしないことですね。

他にもいろいろありますが、今回は久々なのでこの程度にしておきます。

残酷すぎる成功法則

2018-08-14 23:48:17 | 書評
こんにちは、ピッグです。

1、本の概要
残酷すぎる成功法則
筆者:エリックパーカー
監修:橘玲

成功本は大きく2つに分かれるそうです。1つは、「私はこうやって成功した」というもの。もう1つは、歴史や宗教を根拠に「イエスはこういった」という類だそうです。しかしそれは宝くじを買ってたまたま当たった人が、「宝くじを買えばあなたも金持ちになれる」と言っているのと同じで、偶然を普遍化していて根拠が薄い。そこでこの本の目的は、すべてのことに証拠をつけることにあるそうです。

2、気になる記事
いくつかとりあげます。
1980年代から90年代に高校の成績を主席で卒業した人の追跡調査を、カレンアーノルドさんはしたそうです。アーノルドさんによると、その優秀者の中から世界に感銘を与えたり、世界を動かす人はゼロだったそうです。(Lives of Promise. Arnold Karen)そしてその理由は、「学校は基本的に、規則に従い、システムに順応する者に報酬を与える」とのことです。

私は、「これって、会社でも同じだな」と思いました。従業員としていい評価をされるとは使用者(上司)からいい評価をされるということであり、使用者から良い評価をされるとは、与えられた枠に沿うのがうまいということを意味しているからです。自発的に何かを考える必要はない。

次に、ゴータムムクンダさんは、アメリカ大統領を2つに分類したそうです。(Indispensable. Mukunda Gautum)1つは政治家になる正規コースを経たもので、定石を重視する。もう1つは、正規コースを歩まないもの。そして正規コースを歩まない方が、世にインパクトを与える成果を出すという結果になりました。
正規コースを経ていると、型破りな発想が生まれにく、さらにその過程で欠点が修正され均一化してしまうことを指摘しています。

次に興味があるのは、皆が利己主義になったらどうなるかというもの。
ルートフェーンボーンは世界幸福データベースを主催しており、そこで最も幸せから遠い国をモルドバと位置付けました。モルドバの国民性は、自分の利益にならないことは一切しない。例えば、ズルをしても咎める事にメリットがないので咎めない場合、本人のみならず他の人々も努力をしなくなるそうです。そして皆が利己的になった結果皆がズルをするようになり社会的制度が後退、結果的には取り分が減るそうです。

結局ここで言っていることは、自分にだけ有利なようにする→それに周囲が飽き飽きする→人が離れる→有利でなくなる、ということに思います。

これって会社にもあてはまるなぁと感じます。

次になぜゲームは熱心にやるのに、仕事は一生懸命でないのかについて。それはWinnable, Novel, Goals, Feedbackの4つの要素に違いがあるからだそうです。

Winnableは勝てること。ゲームには明確なルールがあり、粘り強くやれば勝てる。裏を返すと①ルールが不明確②粘っても勝てない、とやる気はなくなるわけだ。ふむふむ。

Novelは斬新さのあること。優れたゲームは新たなステージ、新たな敵、新たな功績のように、次から次へと刺激があるそうです。

Goalsは目標であること。スーパーマリオであれば、姫の救出。これぐらい単純だといいそうです。

Feedbackは反応ですね。それによって学べるということ。

このWNGFはまさにその通りと思います。

得点力を鍛える

2018-06-23 19:46:14 | 書評
筆者 牧田幸裕

1、概要
 筆者は大学受験時代、画板を電車の中で広げて勉強するほどの努力派だった。大学合格後まったく勉強しなくなり、単位を落とす。しかし要領のいい同級生は単位をゲット。試験前日の3時間しかないのは同じなので、何が同級生と私を分けたのかというところからスタート。その後に筆者は京大大学院にすすみ、さらにアクセンチュアグループのコンサルタントになり、今は信州大学経営大学院の教授
 得点力とは、ちょうどよい努力で結果をだすことと定義しています。つまり投資対効果の見合う努力を指す。受験や試験と呼ばれるものは一発型の試験なので、その試験合格を結果と定義しやすい。そこでその合格に多くの受験生は特化しているに過ぎないというもの。この「結果を出す」ことにコミットする姿勢そのものを試験勉強で学び、仕事でも人間関係でも一緒で活きるというもの。
 ただ試験と仕事の大きな違いは、
・受験勉強の場合、やらなければならないこととやらないことの区別は、試験にでるか出ないかなので簡単である。しかしビジネスの優先順位つけは、判断基軸が複数で画一的なスタンダードがない。
・従業員の場合、仕事の全体像は示してもらえずパーツのタスクを振られているに過ぎないので、何に重要性があるかわからず順位付けができない ということにあるそうです。

 その対策はマネージャーなどの会議に参加をさせてもらい、理解ができないにしても、何度も出てくる語を覚えることだそうです。それがマネージャー=判断権利者にとって、重要だからです。

 結局、「やらなければならないこと」と「やらなくていいこと」の仕分けをするのが大事なのであるが、その仕分けをするという発想自体は、試験勉強を通して学ぶということでもあるようです。

 しかし判断基準が画一的でないし、判断基準がこちらに見えないことがある。そこでやらなければならないことの見極めには、判断権利者=相手、と似たような発想をする人を探して情報を得れば、判断の仕方を推測できるようになると言います。

これらをまとめると、
1、判断権利者は誰か把握する
2、判断権利者が求めていること、判断基準を理解する
3、判断権利者の求めていることを提供する過程において、自分の価値を信じ、自分が素晴らしいと思うものを自信と信念を持って提供すること。判断権利者に合わせるだけではない。

ただこれにも段階があるそうです。

ステージ1 利己的な「個」
 自分勝手な個やオリジナリティでも顧客が受け入れてくれる段階。相手の度量が大きかったり、余裕があったりする状態。圧倒的に自分の方が市場で強い状態と言ってもいいです。


ステージ2 相手を理解
 相手が求めていることを分析して、それに従う状態。迎合ともいう。市場で圧倒的に相手が強い状態。市場成長期。具体例があったので引用することこうなる。
大学入試の試験も、「傍線①の主人公の心情は、どのようなものか。以下の4つの選択肢から正しいものを1つ選び、記号で答えよ」などと出題され、問題出題者の思考の枠組みに則って、その意図をくみ取り解答することになる。あなたの考えを述べるのでなく、問題出題者の思考パターンを理解することが日本の試験では求められてきた。
でも決してこれは悪いことではなかった。当時の日本の国勢を考えると極めて合理的な試験だった。というのも、当時の日本は高度成長期であり、言われたこを正確に理解し、言われた通りに行動する、ルーティンワークを正確にこなせる人材を量産することが求められていたからである。個性などいらない。あなたの考えなどいらない。ごちゃごちゃ言わず、経営者や上司がいったことを、正確に理解し、従順に行動してくれればそれでよかった。(p.168)


ステージ3 求められる「個」
 相手の要求に合わせる人が多いので、どんぐりの背比べになる状態。そこで自分の信念に沿ったうえで、相手の基準を満たす。具体例は瞬足という靴。
「瞬足」は2009年度に600万足以上を販売した。ファーストターゲット顧客は小学生であり、2010年には639万人いた。したがって、小学生のほぼ全員が2009年に1足「瞬足」を購入していることになる。
…瞬足の成功は、アキレスの営業担当者、開発担当者の顧客ニーズ把握力にある。「瞬足」の開発担当者は、自分の子どもの運動会を中心に子どもたちが履いているシューズの写真を撮り続けていた。そこで、都会の小学校の校庭の狭さを実感していた。また、営業担当者も、運動会のトラック競技でバランスを崩したり、転倒する子どもが多いことを発見していた。そこで明らかになったのは、運動会のかけっこやリレーでは、コーナーで、
1.コーナリングで踏ん張り切れず、転倒する
2.遠心力に負けてコースをはみ出し、順位を落とす
3.転倒しないように注意して走るため、スピードが落ちる
という問題が多く発生していることだった。
…そこで求められているもの。それはカーブを駆け抜けられる学童用運動靴である。…左回りのコーナーを早く駆け抜けるという、ある特定のシーンに特化した、ソールの開発が行われた。…しかし左右非対称なので、その機能性は左カーブ以外では発揮されない。
多くの企業では「直進でも速く走れるように!」とか、「右カーブはどうする?」といいったような意見が出され、せっかくの「個」「オリジナリティ」が失われることが多い。でも、アキレスは違った。(P.175-178)

相手の基準に合わせる面はあるものの、その基準の中で自分の個性を出すと言ってもいいですね。


 判断権利者と判断基準は、出したい結果が決まると決まる。そしてこの結果は現実の解決したい問題から始まることが多いとも言います。これをマッキンゼー系は、「イシューから始めよ」、ボストンコンサルティング系は、「論点思考」、アクセンチュア系は「最少投資で最大効果を求めよ」というらしい。おそらく50代会社役員さんが引用する、ドラッガーのいう「現実から始めよ」という意味何じゃないかと思います。

 この本を読んで、なるほど、ははーんとわかってきました。
一言でいえば、結果を出すということは、結果を出すことだけに特化しているのです。大学受験でいえば合格することだけ。実際に学んだ学科科目がその後も理解しているかどうかは、正直どうでもいいのです。(結果をだす過程で習得したものが、終わった瞬間に消えてなくなるのかは別の議論が必要)
 つまり結果とされるものに、何を取り込むかを考えた際に、現実から始めよ派の人は、とりこんでいる範囲が私より狭いんだと思います。

 ははーん。なるほどね。
 この本はここ数年で1番インパクトがありました。
こんなの当たり前だとみんな思うかもしれないけど、私にとっては全然あたり前ではありませんでした。

僕たちはいつまでこんな働き方をするのか?

2016-10-09 17:18:14 | 書評
「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?」(小暮太一、星海社新書)

30代後半の若手の方ですね。資本論と、金持ち父さん、貧乏父さんから着想を得て今に至るそうです。
この本の重要な部分をまとめると、こうなります。

1、給与の決まり方
(1)そもそも給与はどうやってきまるか、その方式には2種類ある。必要経費方式と利益分前方式である。日本企業は一般に、必要経費方式を採用している。
(2)必要経費方式とは、労働者が労働力を回復するのに必要な程度の給与(=労働再生産コスト)である。そして「資本主義の中で、労働者は豊かになれない」なぜなら、会社は労働再生産コストしとして給与を出すからである。
 成果主義を導入している日本企業もあるが、ベースは必要経費方式である。なぜなら、売上を2倍にしたからといって、給与が2倍になるわけではないからである。
(3)労働再生産コストである給与は、そもそもどうやって決まるか。それは価値と使用価値によって決まる。
価値とは、それを作るのにかかった労力から決まるものである。
使用価値とは、それを使ってどの程度役に立つか、有益かによって決まるものである。
原則として価値によって最初の相場が決まり、次に使用価値によって多少の前後が出る。
 例えば、ビル1棟と鉛筆1本で値段が違うのは、ビル1棟建築にかけるコストが違うからである。原材料、鉄筋、コンクリの費用、安全設計、安全第一、関わる人の人数などによって、建築そのものにかかる費用が膨大だからである。
 介護士と医師で給与が違うのも、同じ仕組みである。介護士の需要は高い。しかし介護士になるためにかける費用は、医師になるためにかける費用よりも少ない。医師の場合は、医学部にいく必要があり、その後に研修もある。その費用がそのまま給与に反映している。
 発展途上国の方が給与は低いのも、同じ仕組みである。発展途上国と先進国で弁護士をとった場合、基本的には仕事の内容は変わらないにも関わらず給与が大きく違う。それは発展途上国は生活費が安いために、毎日の食事、住居、衣服、娯楽などの費用が相対的に安くなるため、同じ労働を生み出すのにかける費用が小さいからである。
 労働で説明すると、
価値とは、その人が明日も労働者として働くために必要な費用である。
使用価値とは、その労働力を使ってその人がどれだけ成果をあげたか、企業にメリットがあるかである。
(4)労働再生産コストは、一般的な社会通念を基準にしている。したがって、20代男性独身、40代女性既婚子供あり等、ここ10年単位以上のスパンで、労働者の年齢、属性、職種、業種などを元に、一般的にこのような生活スタイルをしているので、労働力回復には一般的にこれだけの費用がかかるということが基準にされている。
 例えば、新卒の給与が大企業も零細企業も20万円前後なのは、20代前半の一般的な新人の労働力は、業界を問わず変わらないと考えられている。したがって、その回復にかかる費用も同じと考えられているといえる。
 年功序列が成立しているのは、従来は年齢を経るごとに家庭を持ち、子供を持ち、家を持つのが当たり前であったために、そのような補償まですることが、労働力回復するのに一般的と考えられていたためである。
 逆に、価値はあるが使用価値のないものは、クマの木彫りなどである。木彫りをするまでに職人になる訓練期間は長いかもしれないが、需要がない。
 価値はないが使用価値のあるものは、観光地のジュースである。100円のジュースが300円で売られていると思うが、山頂などでは需要が高くなり役立つので、実際の価値である100円よりも高くなっている。
(5)労働再生産コストは、地位や給与が高くなるほど高くなる。したがって、せっかく転職して給与があがっても、一般に高給とりは仕事で多大なプレッシャーが発生するので、労働力を回復するためのコスト(体力、精神力が回復するためのコスト)は高くなる。結果、手元に残るお金は多くならない。
(6)また商品は当初は革新的技術であっても、すぐにコモディティ化(一般大衆化)する。したがって、商品自体にかける労力が小さくなるので、労働者の労力も小さくなる。結果、労働の価値は下がりがちになるので、給与を高くするのが難しくなる。
(7)労働再生産コストの見直しが図られないのは、労働者がその会社を辞めないからである。その会社を辞めないということは、会社からすると、そのコストを支払えば労働を買うことができることを意味している。

2、会社の利益の出し方
(1)労働再生産コストが、固定費として会社から毎月出ていく。
(2)そこで会社は利益を出すには、労働再生産コスト以上の売り上げを出さないといけない。
(3)売上をだすための方法の一つは、大量生産か、労働生産性の向上である。会社は雇用契約によって、労働者を1日働かせる権利を買い取っているので、できるだけ労働者を使用して労働生産性をあげた方が利益はあがる。
(4)こうして、革新的技術を常に求めて労働者を酷使する、ラットレースが完成する。

3、労働者が生きやすくするために
(1)給与は、価値を元に原則として判断される。
(2)会社は、できるだけラットレースをして労働生産性をあげたい。
(3)しかしラットレースには、労働者から見ると、問題がある。より利潤を獲得しようとして努力をする訳であるが、利潤の元となるパイは市場ごとに決まっていることが多い。自社、己の利潤最大化を目指して努力をするわけであるが、その利潤(市場規模、分配できる給与)は業界、会社で決まっていることが多い。となると、パイは変わらないのに努力しあうことになり、努力をする前と取り分は変わらないのに、努力だけ増すということがありうる。つまり、自己の利益を最大化しようとした結果、自己の利益は最大化しないという囚人のジレンマと同じことが起きうる。
(4)給与は、原則として労働力の価値できまる。次に、需要と供給の関係から、使用価値によって微調整が行われる。そこで、

 ア、労働力の価値を高めることをする
 具体的には、努力の積み重ねによって、専門性を獲得する。残業代、一時の賞与(一時、会社に役立ってはいるが、己の成長に加味していない労働)などを目指すのでなく、獲得するのに労力のかかる技術をマスターするようにする。

(5)会社で利益を増やすには、売上を増やすか、費用を減らすしかない。これを個人に落とし込むと、
売上=年収、昇進等によって得られる満足感(金銭面、精神面)
費用=必要経費(肉体的、精神的労力や苦痛)
売上-費用=自己内利益

そこで自己内利益が増える方法を探す。自己内利益の増やし方は、
ア、 満足感を変えずに、必要経費を下げる
イ、 必要経費を変えずに満足感を上げる の2通りとなる。

ア、 満足感を変えずに、必要経費を下げるとは
 結論は、自分の考え、態度、仕事の選び方によって、明日も同じ労働をするために回復する、「自分にとって」肉体的、精神的労力が小さくなるものを選ぶ。つまり、自分の興味のある仕事を選ぶことである。
必要経費の基準になっているのは、年齢、性別、属性などの総合考慮による世間相場である。そこで世間相場よりも、自己の実際の必要経費を少なくすることができれば、自己内利益を増加させることができる。例えば、営業職に営業手当があるが、営業は顧客から文句を言われたり、ノルマを与えられたりして生じる大きな精神的疲労を回復するための費用という考えに基づく。
そこで自分の考え、態度、仕事の選び方によって、明日も同じ労働をするために回復する、「自分にとって」肉体的、精神的労力が小さくなるものを選ぶ。
 自分にとって、肉体的、精神的疲労が小さくなるものとは、興味の持てる仕事をするということである。得意な仕事や効率的にできる仕事を選べという意味でないのは、得意な仕事等で成果は出せるが、使用者は1日拘束する権利を買っているのだから、新たな仕事が追加でやってくるに過ぎないからである。この方法では自己の必要経費(肉体的、精神的労力や苦痛)は下がらない。
 「クライアントの課題なんて知らないよ。注文されたものを納品すればいいんでしょ」
 「他社の商品なんてどうでもいい。担当している商品が問題なく売れて、怒られなければそれでいい」
 このようなスタンスは、当該仕事に興味がないのだと思われる。

イ、 必要経費を変えずに満足感を上げるとは
結論は、自己の労働力に投資をして、将来の利益に繋がる仕事をすることである。
 ゼロから頑張って稼ぐのでなく、労働力の価値を遣って稼ぐことである。労働力の価値は、知識、経験、スキルなど、自分が積み上げてきたものが反映される。
 例えば、社外取締役、顧問、アドバイザーは、過去からの積み上げを遣って仕事をしている。
 このような積み上げを確保するならば、「自分の労働力に投資する」ことが必要になる。残業代、インセンティブなど、目先のご褒美につられることなく、将来の土台を作る仕事をすることである。 
 例えば、ITエンジニアと建設業界を比べた場合、ITエンジニアはドッグイヤーと呼ばれるように変化が激しい。したがって積み上げるものが活きにくい。
 また、損益計算書的思考から、貸借対照表思考にする必要がある。
損益計算書には、費用、売上、利益の記載しかない。それに対して貸借対照表には、資産という、利益が何によって生み出されたかという記載がある。
 例えば、
・1年間死ぬ気で頑張って、向こう10年間、毎年100万円の収入を生み出す資産を作り上げた
・1年間死ぬ気で頑張って、1000万円稼いだ
前者の場合、利益が将来も持続的に出るように「自己の労働力に投資」している。

4、私の見解
とても面白かった。
売上をあげるか、費用を下げるかは、最近意識していることである。
そして私は費用を下げることとは、精神的疲労を下げることだと思っていた。その精神的疲労を下げる、をさらに具体化すると、興味のあることをするになる。この最後の部分までいきついていなかった。
 売上を上げるに関しては、将来利益を生む可能性のある労働に投資をするという訳だ。それは専門性があるといってもいいし、他の人が身に着けられないものを身に付けるといってもいい。
 アンソニーロビンズは、「人は1年でできることを過大評価して、10年でできることを過少評価する」と言っている。
 私は約10年近く法律をやってきたけども、自分を少し過少評価しているのかもしれないと思いました。

失敗は悪いこと?

2016-06-19 13:20:30 | 書評
ぴっぐです。
最近、朝の散歩とジョギングしてます。
そうすると、22時頃には眠くなるのでちょうどいいのです。
科学的には朝日によって体の体内スイッチがはいる→朝日によってセロトニン形成→有酸素運動も加わってセロトニンが一層形成→明るい気持ちになる→朝日から15時間ほどで眠気のスイッチがはいる→22時には眠くなるということですね。

散歩の途中、以下のものを聞いています。
元々は数年前にTOEIC用に買ったもの。普通の対策本では面白くないので。

人生に前向きになる英語の名言101 Inspiring Quotations

「はじめに」を読むと、100回はリスニング、音読をしろとある。

この中の好きなフレーズにこうあります。

"It turned out that getting fired from Apple was the best thing that could have ever happened to me.The heaviness of being successful was replaced by the lightness of being a beginner again, less sure about everything.It freed me to enter one of the most creative periods of my life"

Every one is afraid to fail.People want to win, not lose. Losing or being a failure is always a bad thing, right? Steve Jobs, one of the most succefull bussinessmen ever, would disagree.
When he was young, Jobs always wanted to win-and he was very good at it! He was a millionaire by his early 20s.He co-founded Apple computers.But then, at age 30, his life fell apart when he was fired from Apple.
But that wasn't the end of Steve Jobs' story.
In fact, that failure led to even greater successes.Being from Apple forced Jobs to try new things.He became more creative.He felt free again. This new freedom let him to create two companies(Next and Pixar)and fall in love and get married. Then Jobds returned to Apple and made the company even more successfull! Talking about his life in 2005, he said "I'm pretty sure none of this would have happened if I hadn't been fired from Apple"

失敗しないようにして萎縮することが大事なのでなくて、失敗したら「その方法がダメだとわかった収穫がある」とおもって次の行動につなげることが大事だということですね。
大事に大事に行き過ぎないように。他人の批判を恐れぬように。
なにより、自分の自分に対する批判を恐れぬように。

人間の脳が大きくなってきたわけ

2016-02-21 15:31:29 | 書評
つぎはぎだらけの脳と心―脳の進化は、いかに愛、記憶、夢、神をもたらしたのか?
デイビッド・J. リンデン (著), David J. Linden (原著),(インターシフト (2009/09))

脳がその組織のレベルにおいて、全く洗練されていると言えず、各要素がとても効率的とは言えない形で組み合わされている。しかし驚くほどに上手く働いているというお話しです。
なぜ人間は他の哺乳類と違って産後、すぐに1人で生きていけないのか?
なぜ人間は他の生物と違って言葉を話すのか?
人間は本当に論理的なのか? ということを脳機能から説明します。

1、 脳の基礎知識
 脳幹…心拍数、血圧、呼吸の速さ、体温の調節、消化など生命維持装置にかかわる部位。
    脳幹の一部に損傷を受けると、昏睡状態になる。
 小脳…脳幹と相互に強く結びついている部位で、体の動きを調整する役割を担う。感覚器から得られる体がどう動いているかという情報を利用して、筋肉の動きを修正している。小脳が損傷すると、コーヒーカップを持ち上げる等の動きができなくなる。
 中脳…視覚、聴覚にとって重要な場所。カエルやトカゲでは重要。カエルが舌を伸ばして虫を捕まえるとき、中脳が働いている。
 視床下部…脳の機能の中継所。全体として体の状態を一定に保つことに寄与。例えば体温が下がると反射的に震えださせる。飢えと渇きはここで引き起こされる。ここを損傷すると、食べ過ぎたり、絶食したりする。
大脳皮質…感覚器から送信された情報の解析所。

2、 脳の仕組み
 脳はアイスクリームコーンのようなものと言える。時間が経過するにつれて、小脳の上に、中脳、中脳の上に大脳が形成されている。新しいアイスクリームが乗っかっても、古い方は殆ど変化せずに残った。そういえる理由は、小脳、脳幹、中脳の作りは、殆どカエルと変わらないことからわかる。
ネズミの大脳と人間の大脳は大きさが違うので、大脳の大きさが哺乳類の中の差ともいえる。
 人間の脳は誕生直後に成人の1/3程度で、20歳まで成長する。
3、人間を賢くしているものは何か?
 脳の大きさだけなら象の方が大きい。しわの数もイルカ、クジラ、ネアンデルタール人の方がおおい。
 人間の特徴的なことは、連合皮質が大きいということである。

4、 脳が連携していない根拠
 盲視からわかる。
盲視とは、進化的に新しい視覚機能に対応する部位に損傷を受けた時に盲目になる現象である。しかしこの盲目の人に、ペンライトのようなものをおき、「手にとってくれませんか?」というと、たいていの場合うまく取れるそうです。この理由はカエルのころは中脳で視覚の役割をはたしていたが、脳の外側の大脳とは連動していないため、本人も見えていないと思いつつも、感覚ではわかってしまうことにある。
 つまり、小脳、中脳、大脳は連動してないということで、後からポンポンと違う味のアイスが乗っけられただけなのだそうです。
 
5、 脳の燃費
 脳は重さ1.3Kgで体重65kgなら2%程度であるが、体全体では20%のエネルギー消費をする。

6、 人間はなぜ一夫一妻制を採用して、セックスを隠すのか
 ・人間以外の多くの動物は、メスの排卵の時期に合わせてセックスをする。それに対して人間は、女性の排卵に関係なくセックスをする。
 ・人間以外の多くの生物は自分の排卵の時期がせまると外に向かって積極的に知らせる(例:匂いをだす)が、人間の女性は自分の排卵が本能的にわかるわけではない。したがって、人間の男性は女性がいつ排卵かわからない。
 ・人間以外の生物は年齢を重ねることに受胎能力は落ちるが、完全に生殖能力が落ちることはない。閉経は人間の女性に特有のものらしい。
 ・人間以外の生物では長年つがいとなって生活したり、自分の子供を育てたりするオスは少ない。しかし人間では長年夫婦としていることが価値として存在して、オスも子育てにかかわる。

これらを説明する有力な仮説は以下だそうです。
「女が排卵期を隠すのは、男を常にそばにおいておくため」
・もし排卵の時期がだれの目にも明らかならば、男は妊娠の可能性の高い女性を選ぶ。そして時期が来たらその場を去り、別の妊娠可能性の高い女性を探す。このようなスタイルはヒヒ、ガチョウに見られる。
・排卵期が隠されると、受胎の可能性を高めるには、いつでもその女性とセックスをできなくてはならない。男性がその女性から離れてしまうと、別の男性にその女性を取られてしまう可能性がある。
・排卵期が隠されている場合、常に同じ伴侶といるのが男性にとっては最良の策となる。そして常に一緒にいれば、生まれてきた子供が自分の子供である確率は高い。

では女性がその策をとるメリットはなにか。
・人間の場合、他の多くの動物が離乳と同時に自分で食べ物を見つけられるのに対して、子供が自分で食べ物を見つけられるまで時間がかかる。そこで男性と長年一緒にいることは、子供の食事確保の点から効率がいい。

7、レム睡眠とノンレム睡眠
・爬虫類や両生類は、レム睡眠しかない。
・レム睡眠とノンレム睡眠が交互にくるのは、哺乳類や鳥類の特徴。
・ノンレム睡眠の役割は、子供の時は脳の成長を促すこと。胎児の時の小さい脳を大きくすること。大人になってからの役割は、記憶の関連付けを行うこと。つまり長期記憶に役立つこと。

8、 結局どういうこと?
 脳をゼロから設計しなおすことはできない→後から付け足すしかない→脳のニューロン処理速度は遅い→高機能を持たすには脳を大きくしないといけない→しかし胎児の段階で大きくし過ぎると産道を通れない→未熟な状態で生まれて、産後に成長するというメカニズムを採用する→子供の成長に時間がかかる→メスはオスの手助けを期待する→オスを身近に惹きつけておくため、排卵周期を自覚できないようにする(隠す)→ニューロンの発達には睡眠が必要→ノンレム睡眠の開発→夢を見るようになり、記憶の定着という副次機能


最後に
 この本を正確に理解するには、大学生物学の基礎があった方がいいと思います。高校生物を1Bくらいまでしかやってないと、完全には理解できません。