わいるどぴっぐの猪突猛進

いつも疑問に思うことを書いていきます。

ドイツ人はなぜ、1年に150日休んでも仕事が回るのか

2020-02-15 19:37:37 | 書評
熊谷 徹 こんにちは。ピッグです。 今日は書評を書きます。 この本は2015年に出版されています。筆者によれば元NHK記者として働き、その後25年ほどドイツに住んでいるようです。以下、筆者の言葉を借りながら、気になることをつぶやいていきます。
ドイツ人のサラリーマンは、1年に150日休んでいる。…その内訳は、土日が150日、それに祝日やクリスマス休暇、有給休暇などを加えて150日になる。 実際には150日以上休んでいるドイツ人も珍しくない。ドイツ企業のほとんどのサラリーマンは、毎年約30日の有給休暇をほぼ100%消化し、1日10時間以上働かない。午後6時にはたいていの企業のオフィスはがらんとしている。日曜日と祝日の労働は、原則して禁じられている。…ドイツでは日本以上に休暇を取る権利が法律によって保障されている。1963年に施行された「最低限の休暇に関する法律」は、すべての勤労者は1年間に最低24日間の有給化を取る権利があると定めている。(p.3-19)
本当かなと思い調べました。 ジェトロのページにこうあります。年間25-30日のお休みだと。(p.8) JETRO 欧州・ロシア雇用制度一覧(2016 年 10 月) それよりも気になるのはこちらです。
労働時間法は1日の労働時間を8時間と規定している。実際には多くの労働協約がそれよりも短い労働時間を規定している。(p.8)
労働協約とは、企業と組合の代表が結ぶ契約のようなものです。ドイツと日本の制度は異なるかもしれませんが、日本の場合は事業場の従業員の3/4以上が加入していれば、その事業場の全従業員に効力がおよびます。(労働組合法16条、17条) 8時間よりも短いのかあという驚きです。 じゃあ日本の有給取得率はどうなっているのか調べてみました。 厚生労働省 H31 就労条件総合調査 付与年休の平均は18日。 取得日は、平均9.4日。取得率は、52.4%だそうです。 ちなみに年間休日総数の平均は、108.9日。 おおきく違いますね。 土日が月に8日として、年間96日。そこに年末年始が5日と計算すると101日。 年間休日108日って、そこから7日。祝祭日の全部は休めないってことですよね。 初年度の年休は10日と思いますが、その分しかとれないんですね。 残念です。 次に気になるのはこの記載。
ドイツでは、有給休暇をとっても、同僚から否定的な見方をされることは、まずない。良心の呵責を感じる人もいない。社員全員が、交代で30日の有給休暇をとるからだ。したがってねたみはおきないし、旅行先からお土産を買ってきて同僚に配る必用もない。(p.26-27)
本当なら素晴らしいですね。それは権利だからですよね。 ではどうしてそんな仕組みができるのか。こう記載があります。
ドイツ人のお客さんが、ある企業に問い合わせの電話をかけたとしよう。担当者は2週間の休暇を取っていて、オフィスにいない。彼の同僚が電話に出て、「担当者はいま休暇をとっておりますので、私が代わってご用件を承ります」と答える。 日本ならば、お客さんは「2週間も休暇を取るとは何事だ」と怒るかもしれない。 しかしドイツのお客さんは、「担当者は休暇中だ」と言われても怒らない。お客さん自身も自分の会社で休暇を取るし、ドイツ社会で休暇がきわめて重要であることを理解しているからだ。ドイツのお客さんは、自分の顔なじみの担当者がいなくて問い合わせに対応できなくても、代わってきちんと対応してくれる人がいれば、「何が何でも自分の担当者を出せ」とは要求しない。ドイツでは仕事が人につくのではなく、企業についているのだ。(p.27-28)
これは職務主義を言っているのだと思います。今なにができるか、そのスキルに値段が付くという考え方と思います。いま英語ができるのは10000円。部長としてマネジメントできるから、10万円などです。したがって営業職から経理にかわった場合、経理の経験はゼロなので給与は下がることになります。それに対して、日本の場合は人に給与がついているので、営業から経理に代わっても給与がさがらない仕組みとなっています。 次に気になるのはこの記述。
ドイツの管理職は社員に休暇を完全に取るよう推奨する。これは企業経営者が社員の健康を守るような労働条件を確保することを、労働法によって義務づけられているからだ(これをFuersorgepflicht つまり「保護義務」と呼ぶ)。(p.30)
本当かなと思い調べました。なんとなくそれっぽいところまでは見つけました。 次の記述は、病欠のための休みがあるという点。 これも本当っぽい 記事を見つけました。 ただ、この権利保障の裏にあるのは、効率という考えのようです。

ドイツで残業という言葉に付きまとうイメージは、日本よりはるかに悪い。残業時間が多い社員は、無能と見なされることもある。つまり仕事の効率が悪く、無駄なミスが多いので、労働時間が長くなると考えられるのだ。(p.79)
ふむふむ本当なのかなと思って調べると、反対を述べる人がいます。 「ドイツに残業がない」なんて、真っ赤なウソ。海外を理想化しすぎる人の言葉には、気をつけよう。 「ドイツ人は残業しない」説の大いなる誤解 この雨宮さんは、残業あると書いています。しかしここにも気になる記述があります。
いくら「ドイツだから」といっても、終わらせなくてはいけない仕事があるのにみんながみんな仕事を放り投げて家に帰るはずがありません。 確かに、「わたしは帰ります」と権利を主張する人は日本よりもいますし、実際に仕事を放り投げて定時帰宅することも可能でしょう。でも問題は、そういう人が上司や会社に評価されるか、ということです。
帰れるんだ。評価さえ気にしなければ。これはいいことを聞きました。
ただ、ドイツにおける残業というのは、あくまで自分やチームの仕事を終わらせるためにするものなので、付き合いや理不尽な要求によるものは少ない、という側面はあるかもしれません。
なるほど。とりあえずやる、という観念がないのですね。 それでは給与はどうやって決めているのでしょうね。 経営者側としては時間に対して膨大な仕事を与えて、無能なレッテルを貼っておくほうが簡単なはずです。そこが見えません。 また天宮さんの記事にもあるのですが、労働時間貯蓄制度があるそうです。 今日2時間残業したから、明日は2時間就業時間中であっても早く帰るといった制度です。かなりフレキシブルでいいですね。 その上で天宮さんがいい言葉を書いていました。
欧米の有給休暇消化率を踏まえて、日本もそれに見習おうという意見も目にします。 たしかに長期休暇、バカンスはヨーロッパの多くの国で認められた権利です。ドイツもまた、毎年1カ月の休暇を取る国としても知られています。 でもその数字だけを見て「みんな休暇を取っても仕事が回る。さすがドイツ!」なんていう主張には、ちょっとツッコミを入れたくなってしまいます。 誰かが休暇を取れば、仕事は滞ります。バカンスに最適な夏はとくに、オフィスがガラガラになります。この前なんて、税務署に行ったら租税条約の担当者と確定申告の担当者が両方休暇中で、その後に行った歯医者もまた休暇で閉まっていて、処方箋をもらおうとホームドクターのところへ行ったら、彼女もまた休暇中でした。ちなみに、たまに行くカフェもお休みだったし、駅に入っている安いアジアンレストランも閉まっていました。 「みんな休暇が取れていいじゃないか」というのは、あくまで自分が休暇を取る側の話です。仕事を依頼した側、ユーザー側に立ってみましょう。バカンスのせいで全然仕事が回っておらず、手続きがなにも進まない。担当主義なので、「それは担当者じゃないとわからない。担当者が帰ってくるのは1カ月後」と言われる。これが、「休暇が取れるドイツの姿」なのです。
ぼくはそれでいいと思っています。 じゃあなんでこんな考えがあるのか。熊谷さんの記載にヒントがある気がします。
 米国や英国は、純粋資本主義と、競争原理を最重視する自由放任主義に基づく市場経済を採用している。これらの国々は、政府が市場や企業の経済活動に介入することを最小限に抑え、「小さな政府」を理想とする。 社会保険制度は、市民の所得格差による弊害を減らすことを目的としているが、米国や英国では社会保険制度を最小限度に抑えている。社会保険制度が充実していないために、事故などで動けなくなった市民は、民事訴訟によって損害賠償を請求する。訴訟が部分的に社会保障制度を代替する機能を果たしている。 このため、「弁護士産業」がドイツや日本よりも発達している。所得税率や法人税率は低く抑えられ、政府による企業活動の規制も少ない。新しいビジネスを始めるには、米国は世界で最も適した国である。 米国では、競争に勝った富裕層はますます豊かになり、競争の負け組となった低所得層は貧困に苦しむという構図が事実上追認されている。ある意味では、弱肉強食のルール、ジャングルの掟が支配 している。利潤の極大化と所得格差をあえて是認する姿勢が、米国を世界最強の資本主義国家に育てあげた。アップルやマイクロソフト、グーグル、フェイスブックなど21世紀の成長企業の多くが米国企業であることは、偶然ではない。 ドイツの社会的市場経済は、米英と異なり、政府が大きな役割を果たす経済体制だ。企業は、政府が定めた法律の枠の中で競争をしなくてはならない。たとえば最低休暇日数や、労働時間に関するルールを破って競争をすることは禁じられている。 競争に敗れた企業や市民を救済するために、政府は社会保険制度を整備する。病気やけがなどのために働けなくなった市民、リストラで解雇された市民のためには、政府が「安全ネット」を提供する。失業した市民も国の費用で職業訓練を受け、再就職のための道を探ることができる。 社会的市場主義という言葉の中の「sozial=社会的な」という言葉は、社会保障や社会保険という言葉に使われている。つまり、政府が金を投じて市民の健康や最低限の暮らしを守る仕組みのことである。 この言葉、ドイツでは良い響きを持っている。例えば、「あの企業はsozialな会社だ」というと、「利潤の最大化だけでなく、社員の福利厚生にも配慮する会社だ」という意味だ。つまり株主や経営者だけでなく、勤労者の権利などの「公共の利益」をも重視するという、前向きな評価が込められている。(p.114-117)
利潤の最大化を会社に求める代わりに社会保障を厚くするか、利潤の最大化以外の要素も会社に認めるかということですね。 ふむふむ。 早く資格とって、ドイツの仕組みを勉強したいなあ。