わいるどぴっぐの猪突猛進

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ゼロからはじめる心理学・入門

2020-09-30 14:54:52 | 書評
こんにちは。ぴっぐです。
ついに扇風機をしまいました。9月中にしまうのは早い方です。
今日はなかなかいい本の紹介です。

ゼロからはじめる心理学・入門
金沢創ほか
有斐閣ストゥデイア

10の心理学(計量心理学、知覚心理学、学習心理学、進化心理学、神経心理学、個人差心理学、認知心理学、発達心理学、感情心理学、社会心理学)の概要と、発達障害、アセスメントと支援という項目からできています。

興味のある発達系から、本を要約していきます。

1. 発達障害
発達心理学では多数派が辿るパターンのことを「定型発達」とよび、多数派が通らない発達を非定型発達と呼ぶそうです。したがって、非定型発達は通常よりも発達が進みすぎている場合も、遅れている場合も含みます。DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorder)という検査手法をとりますが、DSMとは診断と統計に関する指針です。統計とあるくらいですから、多いか少ないかを示すものにすぎず価値判断は介在していません。つまり多数派だからよくて、少数派だからダメだということは意図していません。
「発達」という単語がつく理由は、特定の障害が、特定の年齢で顕著になるからだそうです。例えばADHDは小学校に入学した学童期、特に6歳から10歳にかけてその特徴が明らかになります。自閉症は定型発達の発話開始時である3歳頃に、その診断がつくそうです。発達障害とはdevelopmental disorder とされていますが、disabilityとされていないことがポイントとされます。
disabilityという用語には何等かの能力の欠如を意味しているのに対し、disorderという語には、何らかの能力を特定の環境において適切に運用できないというニュアンスがある。例えば自閉症児が他者にまったく共感しないように見えたとしても、それは共感の能力が完全に欠如しているのでなく、もともと持っている何等かの要因に邪魔されて発達してきた結果、共感の能力を発揮できない。(p.168-169)
と考えます。つまり能力はあるけども、それを遣えないということです。
そして筆者の言葉が素晴らしいと思うのは以下です。
現代の社会システムや環境が、定型的な心の状態に向けられすぎているがゆえの発達「障害」なのかもしれない。(p.169)
定型的とは均一であることです。コンビニ、お店、すべて日本の商品は同じ。入社の時期も、仕方も、その後も出世もほぼおなじです。均質性が強いところでは、少数派である発達障害の人は生きにくいのかもしれません。

2. 計量心理学
心は目に見えないので、客観的にわかるようにする必要があります。その計測について突き詰めるのが計量心理学です。例えばミュラーリヤーの錯視というものがあります。これは横軸の長さが同じの2本の線の端に、異なる線を引くと長さが違ってみえるものです。人によって「10%長く見えた」、「5cm長く見えた」など感覚は異なるものの、長く見えるという点で一致します。その長さにかんするデータを集めることで、「20%長く見える」という具合に定量化しようとするものです。正確にどの程度変わったか計測できないものの、一定程度長くなったことを計測することで数値化しています。

3. 知覚心理学
心理学では伝統的に知覚を中心に研究が進んでおり、「目の前に見えている視覚世界は、外の本当の世界か」(p.19)と議論してきています。知覚とは目で見えるものですから、取り組みやすいのでしょう。ではなぜ目の前に見えているものが世界かわざわざ議論したのか。それは科学的には見えていないはずのものが、見えるものとして脳内で処理されているからです。全ての人間の目には盲点(視神経は網膜の内側にあり、視神経を脳に接続するため網膜に開ける穴。この穴のため、見えない範囲が生まれる)
があり、実際には見えない領域があります。そして盲点は空白と認識されそうですが、何もない空間として認識されることはありません。これは目が見えていないはずのものを、補っているからとの仮説が立ちます。
目の盲点が面白いようにわかる図─脳は見えていない部分を補っている

4. 学習心理学
学習心理学とは、人が外界からの刺激に対してどのような反応をするか。その反応をする理由は何かを研究するものです。反応には2種類あり、レスポンデントとオペラントがあります。レスポンデントとは、決まりきった反応のことです。例えば、食べ物を見ると唾液がでるというように、「食べ物」(刺激)から「唾液が出る」(反応)が固定されています。オペラントとは、刺激に誘発される反応が固定化していないものです。例えば、難しい問題に直面すると、自傷する子どもがいます。この自傷する理由が他人の注目を得ることにある場合、注目を得る別の手段があれば自傷しなくなる可能性があります。例えば自傷行為が誘発されたとしても平静を装い、注目しないようにする。そこで「先生!」と呼ぶかもしれないし、机をバンバン叩くかもしれない。こちらにとって望ましい行動の時に対応すると、その行動を次からするというものです。

難しい問題(刺激)→自傷(反応)→注目される(結果)
          ↘先生と呼ぶ ↗

ここで先生と呼べばどんな状況でも必ず注目される訳でないので、先生と呼ぶ行動そのものに因果関係が必ずあるわけでありません。しかし先生と呼べば、注目を得ると勘違いしていることになります。この勘違いの典型例が
迷信行動です。
「多くの文化圏では、たとえば旱魃などの際に人々は雨が降って欲しいと考え、雨乞いなどの儀式や祭りがおこなわれることがある。ここで偶然にもアメが降ってきたと仮定しよう。すると仮に次の旱魃が訪れたとき、人々はまた雨乞いの儀式をおこなおうとするかもしれない。…重要なことは、この3つに因果関係があるのかないのかということを、ここでは問題にしていないという点である。」(p.48)
つまり真の因果関係がないけども、真の因果関係を必ず知ることができるとは限らないために、一定の行動(雨乞い)によって雨(望む結果)が誘発されたと考えるわけですね。実はもっと面白い例があります。

1971年にJ.スタッドとV.Lジンメルハグのハトの実験です。
12秒ごとにエサが出てくる条件…を用意し、実験箱の中のハトがどのようなふるまいをするかを示すかを観察したものである。…何もしなくても一定時間たてば餌は出てくるのであるから、この真の因果関係をハトは見抜き、じっと餌が出てくるのを待ち続けるだろうか。…次の餌が出てくる12秒という時間枠に操られるような、さまざまなふるまいをハトは見せたのである。…たとえば、あるハトは、エサが出てくる12秒が近づくと、次第にえさ箱をつつく回数が増えるという行動を自発するようになった。また別のハトは、エサが出てきた2秒後に、体を4分の1回転させるという行動を自発するようになった。さらに別のハトは、ちょうど真ん中の6秒付近で、エサが出てくるカベ沿いに、いわば雨乞いの儀式のようにそれぞれのハトにおいて維持され続けたのである(p.49-50)
つまり生物は自分の行動と結果に因果関係があると思いこんで行動することが、ままあるということに思います。なんでも知った気になって恥ずかしい気がします。

5. 進化心理学
進化心理学とは、特定の行為をなぜするか考える学問だそうです。例えば、涙を流すという行為は①目が乾かないようにする意味(continuous tear)②悲しみによって流れるという意味(emotional tear)の2種類あり神経支配が異なるそうです。そして人間とチンパンジーは遺伝子が95%以上同じであるにも関わらず、感情による涙は流しません。ではなぜ悲しみによる涙を人間が維持し続けたのか。
他者の攻撃行動を抑制し同情をひく…自らの弱みをあえて見せる行動ととらえれば、逆になくことによって他者の深い信頼を獲得することができるかもしれない(p.54)
からだそうです。このような行為を適応的な行為、と呼びます。
そして進化において重要なことは2点あり、
(1)遺伝子による進化(垂直伝播。gene遺伝子)
(2)脳に蓄えられた情報によって同世代集団に対して伝播することによる進化(水平伝播。meme)です。


まず遺伝子による進化で大事なことは
①兄弟間で異なっていること(変異)
②その違いにより生き残りに差があること(適応度) です。
そして適応度の高いものが生き残ります。
それに対して脳の情報による進化とは、文明の継承と言えます。例えば石器の作り方は遺伝子によって継承されてきたというよりも、脳に記録された情報が個体間で伝達され保持されてきたと言えます。遺伝情報であるならば、誰しも石器を作れるようになるからです。そして遺伝情報は承継に時間がかかるが、水平情報なら早く承継されます。

6. 神経心理学
心には実体がないにも関わらず存在するとされています。そして心は脳にあるとされますが、その根拠は脳に変化が加わると性格が変わることにありまます。フィニアスゲージ事件があります。
19世紀のアメリカの鉄道技師であったゲージは、鉄の棒が貫通するという事故により左前頭葉を大きく損傷することとなった。このような深刻な事故にもかかわらず、左目は失ったものの、彼は数か月で身体的な健康を取り戻すことに成功した。しかし、部下に信頼され仕事もでき才能あふれるリーダーだった人物は、感情を制御できず「気まぐれに以前には考えられなかったような冒涜的な言葉を口にするようになった」という。(p.68-69)
このことから前頭葉は感情の抑制、順序だてて物事を考える機能を担っていると考えられています。
脳の一部が心にどこにつながり、どのような役割を果たしているか研究するのが神経心理学です。私が通う清和病院 は「神経研究所」に附属していますので、脳のどの部位が発達障害と関係あるか分析するアプローチを得意としているのかもしれません。そう思うと、認知療法やカウンセリングに力を入れていないように見えるのも納得できます。
またペンフィールドさんによる調査によると、脳は体の各機能と連動しているようです。脳の体積に対して手、唇、舌の割合が大きいそうです。
ペンフィールドの小人 
ここで伝えたいことは、脳の一部を損傷すると、体はピンピンしていても、その体や心を動かせなくなるということです。

7. 個人差心理学
個人差を調査することを目的とした分野だそうです。結局これは、多数派とどのくらい乖離しているかを測るものにすぎません。乖離していたからと言って、劣るということでないそうです。興味なかったので割愛。

8. 認知心理学
認知心理学とは、人間の心の活動をコンピューターに例える学問だそうです。つまり、アウトプットが同じであればそのプロセスは同じになるはずだという仮定をします。例えば、似たような入力情報であるのにアウトプットの早さが違う場合、その過程における処理が異なるとかんがえます。そこでアウトプットを同じになるようにすれば、仮定も同じになるはずだとするそうです。
また認知心理学では記憶のメカニズムについて研究が進んでいますが、E.F.ロフタスによると記憶とは水に溶けたミルクのようなものだそうです。フォルダの中のファイルのようにきれいに整理されているわけでなく脳の中でバラバラに断片的にあり、思い出そうとする度に再構成する。それゆえ偽りの記憶ができてしまうそうです。
自動車事故のビデオ画像を見せた後、画像には存在しなかった「小屋」を質問項目に入れて「小屋をすぎたとき車はどの程度のスピードでしたか」と問うことで、実際には存在しなかった「小屋」が、再構成の際に入り混む(p.108)
のだそうです。
しかしながら断片化されずに記憶できることがあり、それがフラッシュバルブ記憶と呼ばれます。強い感情的な体験を伴うか、自閉症の人に見られることが多いそうです。

9. 発達心理学
従来は段階的に発達していくと考えられていたが、今は失うことで能力を獲得すると考えられている。例えば、LとRの音を赤ちゃんは聞き取ることができるが、日本語では両者の差異がないために聞き分ける能力を失っていくというものです。その他は割愛。

10. 感情心理学
カット

11. 感想
心理学に様々な分野があることがわかり、次に自分がどの分野を学べないか分かった気がします。

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