わいるどぴっぐの猪突猛進

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脳はなにかと言い訳する

2020-12-11 19:44:51 | 書評
池谷 裕二(新潮文庫)

池谷裕二先生がVISAで連載してたものを本にしています。読み切り型となっており、医学的知識かなくても読めます。話し言葉をベースにしていますが、ポンポン専門用語出てきてすごいなと思いました。

以下、気になったことを記載いたします。

1.記憶するツール、海馬
記憶は海馬によって作られます。海馬とは大脳皮質の一つとされ、その中でも古皮質に含まれているそうです。また大脳辺縁系と呼ばれるエリアにあります。
海馬は記憶を作るのに有効ではあるが、記憶を蓄える場所ではないそうです。それは海馬を手術で取った患者が、手術以前の記憶はあるものの、手術以後の記憶ができなくなったことからわかりました。ネズミでの実験ですが、オスとメスを一緒に飼育したり、集団内で社会的な立場にいる個体ほど、海馬の神経細胞が増えて記憶が増すそうです。共学の方が記憶いいのかな!?

2.ストレスに慣れるには
体がストレスを感じるとコルチコステロンというホルモンがでて、脳の機能低下を起こすそうです。しかし環境に慣れてくると、コルチコステロンの分泌にも関わらずストレスが減る。そこでネズミの海馬を麻痺させたところ、ストレスがいつまでも減らなくなった。それゆえ環境に慣れるとは海馬と何か関係あるんじゃないかと仮説が立てられ、慣れる=状況の記憶=ストレスを感じにくくなる、と考えられるそうです。

3.下等動物と人間の違い
ネズミなどの下等動物と人間の脳の違いは、大きさ、大脳皮質のシワにあるそうです。そして大脳皮質のシワは思考を司ることから、基本的な生命維持に大脳皮質は必要でないと考えられているそうです。じゃあ生命維持に必要な機能はなんなのさと言うと、恐怖を感じる機能だそうです。恐怖を感じることができないと危険回避できないからですね。

4.恋愛とドーパミン
ドーパミンは快楽物質で、ドーパミンがでる行為を生物は好んでするそうです。そしてドーパミンを沢山放出する場所は、脳の腹側被蓋野だそうです。2005年の神経生理学雑誌に出た論文によると、交際初期の男女にパートナーの写真を見せると、よく反応したのは腹側被蓋野だそうです。つまりパートナーの写真を見て、ドーパミンが沢山出ていたことになります。
池谷先生は理由をこう考えます。まず恋愛感情はヒトにしかないと思われる。そして恋愛感情があると、繁殖目的とは別に、自分にとって適切なパートナーを延々と探し続ける可能性がある。しかしそれでは繁殖適齢期を逃し、子孫が残せなくなる。そのため「この人しかいない」と思わせ、ベストパートナー探しを停止させる必要がある。
恋愛感情という繁殖目的以外が生まれたがゆえに、制御をかける点から盲目的になるとのことです。

5.ストレスとお酒の関係
ストレスを感じると、zif268という遺伝子が活動するそうです。そして脳や体のストレスをコントロールするのは視床下部ですが、お酒を飲んでも視床下部のzif268は活動したそうです。それに対して、大脳皮質のzif268は活動をやめるそうです。このことが意味するのは、体はストレスを物理的に感じている。しかし感覚を司る大脳皮質がお酒で麻痺すると、ストレス感知機能が停止するとのことです。つまりストレスによって体は蝕まれていくけども、感覚自体が停止してストレスがなかったかのようになっているに過ぎないとのこと。例えば、熱いヤカンを触ると火傷してストレスを受けているが、感覚ないため熱いと思わず触り続けてしまうというわけです。怖いですね。

4.じゃあストレス解消法は?
ストレスを感じてるか測る方法は遺伝子の動きを見る方法もあれば、ストレスホルモンの血中濃度を測る方法もあるそうです。ある実験で、ストレスホルモンを意図的に注入します。当然、注入後はストレスを感じます。しかしその際に「ストレスを感じて辛くなったらこのボタンをおしてください。点滴が止まります」と伝えると、ボタンを押さなくてもストレスが減るそうです。言い換えると、実際にストレスホルモンの注入は続いているのに、ボタンを押せば止まると逃げ道があると思うだけで、ストレスホルモンの血中濃度が減ることを指しています。
つまりストレス解消する方法を実施することだけでなく、「私は解消する方法があるもんね」と信じている、勘違いしているだけでもストレスが減ることを指します。

他にも色々ありますが、こんなところで。


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