わいるどぴっぐの猪突猛進

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受験脳の作り方

2020-10-20 17:50:30 | 書評
「受験脳の作り方」池谷裕二(新潮文庫)

こんにちは、ピッグです。この本はよんでよかったです。
勉強法の勉強を、実はしませんよね。そこで今回は勉強法について調査しました。

今まで「受験の本なんて高速回転がどうのこうのしか書いてない暗記主義だろう」と思っていましたが、この本は少し違いました。ではまいりましょう。

1、記憶のメカニズム
・PCは「ある」「ない」を0か1で表して電気信号で送るように、脳もデジタル信号を通して情報をやりとりする。それゆえにPCの考え方と似ている。
・脳内の電気信号を、神経伝達物質という。その送受信機を、シナプスという。
・シナプスでのやりとりによって記憶ができるが、記憶を一時的に保管しておくことを短期記憶という。短期記憶はPCでいうRAMにあたり、記憶の素早い出し入れは得意だがすぐに消滅してしまう特徴を持つ。
・長期記憶は大脳皮質に保管される。PCでいうハードディスクにあたる。
・長期記憶にするか短期記憶で終わらせるのか判断している部位が、海馬である。海馬とは太さ1cm、長さ5cm程度である。タツノオトシゴという意味だが、正確な由来はわかっていない。

2、海場の判断基準
・海馬の判断基準は、「生きていくのか不可欠かどうか」である。
なぜこの基準かというと、「臭くなったものを食べたら食中毒を起こす」とか「石が頭に向かって飛んできたら逃げないとケガをする」という情報と、「ソクラテスが死んだのは紀元前399年である」などという教科書的な知識では、食中毒や石の方が命にかかわり大事だからである。動物にとって学習とは、危険な状態におかれた経験で得た情報を記憶して、ふたたび同じ目に遭わないように回避することであるからだ。
・では生存に不可欠な情報で振るいにかける必要があるかというと、エネルギーの節約にある。脳は体重の2%の重量に過ぎないが、消費エネルギーの20%を占める。それゆえ不要な情報を蓄えるとエネルギーの無駄づかいになってしまう。
【結論1】
脳は覚えることよりも、覚えないことを得意としている。

3-1、海馬の騙し方
・そこで物事を覚えるには海馬を騙す必要がある。海馬が「生存に必要な知識」と認識する方法は〇〇ある。(1)繰り返すこと(2)ワクワクしたりドキドキすること(3)空腹になること(4)歩くこと(5)学習後に寝る
(1)繰り返し
・繰り返しのポイントは①タイミング②復習の対象③出力を重視することにある。
①タイミング
復習をいつするかである。2回目の学習(復習1回目)までに1か月経過すると、記憶は殆ど消えてしまい初めての学習と認識されてしまう。そこで
1回目 学習初日
2回目 1回目の翌日
3回目 2回目から1週間後
4回目 3回目から2週間後
5回目 4回目から1か月後 に学習をする。

②内容
復習の効果は同じ内容のものに対して生じるということ。同じ科目でも参考書が替われば、一から参考書を理解しなおさないといけない。世の中には参考書の優劣はあるかもしれないが、思ったほど大きな差があるわけではない。だから参考書は同じものを繰り返すこと。ちなみに参考書選びのコツは、第一印象で決めること。本には相性があるため。

③出力
テストをするということ。普段何気なく目にしていても、問われないと頭に入らないものは沢山あります。例えば、「一番近くのケーキ屋さんは?」と聞かれて答えられないことがあります。目にしてはいるけども、答える(質問される)機会がないと覚えられないということです。また、復習をするときに間違えた問題だけを見直すのはいいものの、再テストする時は合っていた問題も含めて解きなおすのがいいそうです。問題を解くとはテストするということなので、常に思い出す作業がありテストされる回数が増えることを意味するからです。

(2)ワクワクさん
ワクワクさんがでるとシータ派が出て長期記憶(LTP Long Term Potentiation)しやすくなり、繰り返しを80-90%減らすことができる。

3-2、偏桃体への働きかけ
偏桃体が機能すると、(本には書いてないけど、おそらく海馬に働きかけて)長期記憶(LTP)になりやすい。偏桃体は感情を生み出す働きをしていることから、「感情が盛んな時に物事が覚えやすい」。大自然の中は常に生命の危機にさらされているので、効率よく危険を回避するために恐怖など感情の揺さぶりを記憶しやすいメカニズムにしたとのこと。具体的には

3-3、空腹になる
自然界の生物は常に飢餓との闘いのため、空腹の方が記憶力は高いことがわかっている。空腹になるとグレリンが放出され海馬に届き、長期記憶を生じやすくなる。

3-4、歩きながら勉強する
あるくと海馬からシータ波がでるので、記憶しやすくなるそうです。机の周りをグルグル回りながら考えることは、アニメだけでなくて効果あるそうです。

4、睡眠
・脳は睡眠中に情報を組み合わせて整合性をテストして、過去の記憶を整理していく。寝ることで海馬に整理のチャンスを与えていると考えることができる。
・寝る前はモヤモヤしているのに、寝て起きたらなんでもなく解決したりすることを「レミニセンス(Reminiscence)」現象と呼ばれている。
・そしてシータ波が最も出るのは睡眠中で、とりわけ深い眠り(ノンレム睡眠)の時である。ちなみに、このレム睡眠とノンレム睡眠が交互にくるのは鳥類や哺乳類の特徴。爬虫類や両生類にノンレム睡眠はない。
・睡眠前は記憶系がよく、起床直後は暗記系の復習。そして頭がさえるうちに論理系をやる。
・就寝1~2時間前は記憶のゴールデンタイム。(タンパク質摂取のゴールデンタイムみたいだ!)
・時差ボケは海馬の細胞が死ぬので注意。

5、ここまでのまとめ
・長期記憶になるかは、海馬が判断。
・海馬の判断基準は、生命維持に不可欠か。
・その結果、試験とかその類は殆ど忘れる。
・忘れないようにするには(1)繰り返すこと(2)ワクワクしたりドキドキすること(3)空腹になること(4)歩くこと(5)学習後に寝る。
・具体的には、
食事前→勉強(暗記系)
食事後→好きなこと
どうしても眠くなる時→その前に勉強(暗記系)
起きた直後→寝る前に勉強したことの復習(暗記系)
起きてすっきりしたとき→勉強(論理系)

もっとわかりやすい本はこれ。
小学生向けにかかれていますが、ここに書いたことすべて書いてあります。

「勉強脳のつくり方親子で学ぼう! 脳のしくみと最強の勉強法」(日本図書センター)


勉強は教えてくれる先生は多いけど、勉強の仕方を教えてくれる先生は多くないはず。小学校や中学校の塾の先生のやり方で止まっている人は、見なおした方がいいと思います。

続きは次回。


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