わいるどぴっぐの猪突猛進

いつも疑問に思うことを書いていきます。

勉強脳を作る その2

2020-10-21 14:55:06 | 書評
受験脳の作り方 その2
こんにちは。ピッグです。後半戦を書いていきます。

前回までのあらすじ
・長期記憶になるかは、海馬が判断。
・海馬の判断基準は、生命維持に不可欠か。
・その結果、試験とかその類は生命維持に不可欠でないので殆ど忘れる。
・忘れないようにするには(1)繰り返すこと(2)ワクワクしたりドキドキすること(3)空腹になること(4)歩くこと(5)学習後に寝ること

・具体的には、
食事前→空腹なので集中力アップ→勉強(暗記系)
食事後→満腹なので集中力ダウン→好きなこと
どうしても眠くなる時→その前に勉強(暗記系)
起きた直後→記憶が定着しやすい→寝る前に勉強したことの復習(暗記系)
起きてすっきりしたとき→勉強(論理系)

1、目標の立て方
・虫のような小さな生物の脳に、次第に複雑な機能がつけたされて人の脳は現在にいたる。動物の脳は生命維持に重要な機能が多いが、ヒトの脳は生命維持とは直接関係ない高度な能力が詰まっている。
・記憶したら報酬を与えると、記憶力は増す。テストに合格したら褒美(=報酬)を与えるというような、不純な動機を理由とする外発的なものでもよい。また、外発的な動機は目に見えるものだけでなく、達成感のようなものでも構わない。
・そして報酬はなかなか獲得できないものレベルの高いものよりは、小まめな方がいい。達成可能な小刻みなものにする。

2、マインドの持ち方
・脳は失敗を繰り返すことによって物事を学んでいくので、思考錯誤の途中で挫けてしまうと正解にたどりつくことができない。そこで一つの成功にたどり着くには、①失敗に負けない根気②解決する能力③楽天的な性格が必要である。
・例えば、テレビ画面を犬に見せ、画面に○の図形が点灯した時にボタンを押すとエサがもらえる仕組みを作ったとする。犬はこの法則を理解するまでに、いくつかステップを踏む。まずボタンを押したとき偶然エサが出てくるとする。この場合は図形の点灯の有無に関わらず、延々とボタンを押し続ける。次に画面に図形が出た時だけ出ることがわかると、図形が出た時だけ押すようになる。まずこの段階にたどりつくまでに多くの失敗を要する。挫けやすい上手くいかない。さらにさらに図形を〇や◇とおり混ぜると、図形なら何でもボタンを押すので、〇にだけ反応するまでさらに失敗を要する。このように常に失敗する。
・失敗に挫けずにトライする。このマインドが何より大事になる。

3、学習の仕方
(1)モヤっと学ぶ
・最初から〇や◇と複数の図形を使うと、犬は図形とエサの関係以上のことは学べなくなる。そこでステップは小出し(まず、〇の図形だけで行う。それをクリアしたら、〇や◇を混ぜる)にしていく必要がある。
・つまり、ぼやっと学び、それを少しずつ精査していくのがいい。
(2)記憶の種類
・記憶には方法記憶、知識記憶、経験記憶とある。それぞれが階層になっており、方法記憶が最下層で、経験記憶が最上位にある。年齢によって記憶のしやすさが変わるので、年齢に応じて変えていく必要がある。
・方法記憶とは、自転車の乗り方のように、体で動作を覚えているとされる記憶。無意識に作られ、言語化することが難しいが一度習得すると忘れない。
・知識記憶とは、きっかけがないと思い出せない知識や情報の記憶。「カール大帝が××年に何々をした」のように実感の伴っていないものです。
・経験記憶とは、自分の過去の経験が絡んだ、自由に思い出せる記憶です。自分の経験、実感と絡めているので、「あのとき、〇〇で覚えた(あった)こと」という具合に、定着をしやすい。もっとも、経験記憶も時が経てば単なる知識になってしまう。講義を受けると記憶にのこりやすいのは、教室、同室の人、視覚、聴覚の利用など刺激があるので、経験として記憶しやすいからだと思う。
・3~4歳は経験による記憶がまだないため、方法記憶しかない。それゆえ自分の実感に紐づいておらず、説明できないとのこと。
・中学生くらいまでは知識記憶が優位だが、その後は経験記憶が優位になる。自分の実感、感覚に紐づけていくといい。歩きながら思う、インパクトのある場所で行う、思い出すなど、すべて経験記憶になる。
・同時に、「こうきたら、こう」みたいな対応は方法記憶によるもの。経験による記憶を、方法記憶に落とし込めると記憶が長く定着する。例えば、「あの時にあそこにパスを出して失敗した(経験記憶)。しかし自陣に仲間がいない時はパスを出さない方がいい気がする(方法記憶)」という具合です。
・試験中にひらめくという場合、偶然ひらめくのではない。それまでに沢山の問題を解いて悩んでいるからこそ、その設問を類型化できてパターン化できるといえる。

4、勉強方法の勉強
・Aという知識を学んだ場合、Aという知識の理解の方法も学ぶ。つまりAという知識、Aという知識の覚え方と2つ学ぶことになる。
・次に、Bを学んだ場合、Bという知識、Bという知識の覚え方の2つを新たに学ぶ。それゆえに、Aの分を合わせると4つ学んだことになる。
・このように知識は2の階乗ずつ増えていくので、学べば学ぶほど、知識は増えていく。

5、まとめ
ヒトは失敗が前提というところが、とても印象に残っています。失敗しないようにするのでなく、失敗することを前提にする。いいですねえ。

受験脳の作り方

2020-10-20 17:50:30 | 書評
「受験脳の作り方」池谷裕二(新潮文庫)

こんにちは、ピッグです。この本はよんでよかったです。
勉強法の勉強を、実はしませんよね。そこで今回は勉強法について調査しました。

今まで「受験の本なんて高速回転がどうのこうのしか書いてない暗記主義だろう」と思っていましたが、この本は少し違いました。ではまいりましょう。

1、記憶のメカニズム
・PCは「ある」「ない」を0か1で表して電気信号で送るように、脳もデジタル信号を通して情報をやりとりする。それゆえにPCの考え方と似ている。
・脳内の電気信号を、神経伝達物質という。その送受信機を、シナプスという。
・シナプスでのやりとりによって記憶ができるが、記憶を一時的に保管しておくことを短期記憶という。短期記憶はPCでいうRAMにあたり、記憶の素早い出し入れは得意だがすぐに消滅してしまう特徴を持つ。
・長期記憶は大脳皮質に保管される。PCでいうハードディスクにあたる。
・長期記憶にするか短期記憶で終わらせるのか判断している部位が、海馬である。海馬とは太さ1cm、長さ5cm程度である。タツノオトシゴという意味だが、正確な由来はわかっていない。

2、海場の判断基準
・海馬の判断基準は、「生きていくのか不可欠かどうか」である。
なぜこの基準かというと、「臭くなったものを食べたら食中毒を起こす」とか「石が頭に向かって飛んできたら逃げないとケガをする」という情報と、「ソクラテスが死んだのは紀元前399年である」などという教科書的な知識では、食中毒や石の方が命にかかわり大事だからである。動物にとって学習とは、危険な状態におかれた経験で得た情報を記憶して、ふたたび同じ目に遭わないように回避することであるからだ。
・では生存に不可欠な情報で振るいにかける必要があるかというと、エネルギーの節約にある。脳は体重の2%の重量に過ぎないが、消費エネルギーの20%を占める。それゆえ不要な情報を蓄えるとエネルギーの無駄づかいになってしまう。
【結論1】
脳は覚えることよりも、覚えないことを得意としている。

3-1、海馬の騙し方
・そこで物事を覚えるには海馬を騙す必要がある。海馬が「生存に必要な知識」と認識する方法は〇〇ある。(1)繰り返すこと(2)ワクワクしたりドキドキすること(3)空腹になること(4)歩くこと(5)学習後に寝る
(1)繰り返し
・繰り返しのポイントは①タイミング②復習の対象③出力を重視することにある。
①タイミング
復習をいつするかである。2回目の学習(復習1回目)までに1か月経過すると、記憶は殆ど消えてしまい初めての学習と認識されてしまう。そこで
1回目 学習初日
2回目 1回目の翌日
3回目 2回目から1週間後
4回目 3回目から2週間後
5回目 4回目から1か月後 に学習をする。

②内容
復習の効果は同じ内容のものに対して生じるということ。同じ科目でも参考書が替われば、一から参考書を理解しなおさないといけない。世の中には参考書の優劣はあるかもしれないが、思ったほど大きな差があるわけではない。だから参考書は同じものを繰り返すこと。ちなみに参考書選びのコツは、第一印象で決めること。本には相性があるため。

③出力
テストをするということ。普段何気なく目にしていても、問われないと頭に入らないものは沢山あります。例えば、「一番近くのケーキ屋さんは?」と聞かれて答えられないことがあります。目にしてはいるけども、答える(質問される)機会がないと覚えられないということです。また、復習をするときに間違えた問題だけを見直すのはいいものの、再テストする時は合っていた問題も含めて解きなおすのがいいそうです。問題を解くとはテストするということなので、常に思い出す作業がありテストされる回数が増えることを意味するからです。

(2)ワクワクさん
ワクワクさんがでるとシータ派が出て長期記憶(LTP Long Term Potentiation)しやすくなり、繰り返しを80-90%減らすことができる。

3-2、偏桃体への働きかけ
偏桃体が機能すると、(本には書いてないけど、おそらく海馬に働きかけて)長期記憶(LTP)になりやすい。偏桃体は感情を生み出す働きをしていることから、「感情が盛んな時に物事が覚えやすい」。大自然の中は常に生命の危機にさらされているので、効率よく危険を回避するために恐怖など感情の揺さぶりを記憶しやすいメカニズムにしたとのこと。具体的には

3-3、空腹になる
自然界の生物は常に飢餓との闘いのため、空腹の方が記憶力は高いことがわかっている。空腹になるとグレリンが放出され海馬に届き、長期記憶を生じやすくなる。

3-4、歩きながら勉強する
あるくと海馬からシータ波がでるので、記憶しやすくなるそうです。机の周りをグルグル回りながら考えることは、アニメだけでなくて効果あるそうです。

4、睡眠
・脳は睡眠中に情報を組み合わせて整合性をテストして、過去の記憶を整理していく。寝ることで海馬に整理のチャンスを与えていると考えることができる。
・寝る前はモヤモヤしているのに、寝て起きたらなんでもなく解決したりすることを「レミニセンス(Reminiscence)」現象と呼ばれている。
・そしてシータ波が最も出るのは睡眠中で、とりわけ深い眠り(ノンレム睡眠)の時である。ちなみに、このレム睡眠とノンレム睡眠が交互にくるのは鳥類や哺乳類の特徴。爬虫類や両生類にノンレム睡眠はない。
・睡眠前は記憶系がよく、起床直後は暗記系の復習。そして頭がさえるうちに論理系をやる。
・就寝1~2時間前は記憶のゴールデンタイム。(タンパク質摂取のゴールデンタイムみたいだ!)
・時差ボケは海馬の細胞が死ぬので注意。

5、ここまでのまとめ
・長期記憶になるかは、海馬が判断。
・海馬の判断基準は、生命維持に不可欠か。
・その結果、試験とかその類は殆ど忘れる。
・忘れないようにするには(1)繰り返すこと(2)ワクワクしたりドキドキすること(3)空腹になること(4)歩くこと(5)学習後に寝る。
・具体的には、
食事前→勉強(暗記系)
食事後→好きなこと
どうしても眠くなる時→その前に勉強(暗記系)
起きた直後→寝る前に勉強したことの復習(暗記系)
起きてすっきりしたとき→勉強(論理系)

もっとわかりやすい本はこれ。
小学生向けにかかれていますが、ここに書いたことすべて書いてあります。

「勉強脳のつくり方親子で学ぼう! 脳のしくみと最強の勉強法」(日本図書センター)


勉強は教えてくれる先生は多いけど、勉強の仕方を教えてくれる先生は多くないはず。小学校や中学校の塾の先生のやり方で止まっている人は、見なおした方がいいと思います。

続きは次回。