わいるどぴっぐの猪突猛進

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人間の脳が大きくなってきたわけ

2016-02-21 15:31:29 | 書評
つぎはぎだらけの脳と心―脳の進化は、いかに愛、記憶、夢、神をもたらしたのか?
デイビッド・J. リンデン (著), David J. Linden (原著),(インターシフト (2009/09))

脳がその組織のレベルにおいて、全く洗練されていると言えず、各要素がとても効率的とは言えない形で組み合わされている。しかし驚くほどに上手く働いているというお話しです。
なぜ人間は他の哺乳類と違って産後、すぐに1人で生きていけないのか?
なぜ人間は他の生物と違って言葉を話すのか?
人間は本当に論理的なのか? ということを脳機能から説明します。

1、 脳の基礎知識
 脳幹…心拍数、血圧、呼吸の速さ、体温の調節、消化など生命維持装置にかかわる部位。
    脳幹の一部に損傷を受けると、昏睡状態になる。
 小脳…脳幹と相互に強く結びついている部位で、体の動きを調整する役割を担う。感覚器から得られる体がどう動いているかという情報を利用して、筋肉の動きを修正している。小脳が損傷すると、コーヒーカップを持ち上げる等の動きができなくなる。
 中脳…視覚、聴覚にとって重要な場所。カエルやトカゲでは重要。カエルが舌を伸ばして虫を捕まえるとき、中脳が働いている。
 視床下部…脳の機能の中継所。全体として体の状態を一定に保つことに寄与。例えば体温が下がると反射的に震えださせる。飢えと渇きはここで引き起こされる。ここを損傷すると、食べ過ぎたり、絶食したりする。
大脳皮質…感覚器から送信された情報の解析所。

2、 脳の仕組み
 脳はアイスクリームコーンのようなものと言える。時間が経過するにつれて、小脳の上に、中脳、中脳の上に大脳が形成されている。新しいアイスクリームが乗っかっても、古い方は殆ど変化せずに残った。そういえる理由は、小脳、脳幹、中脳の作りは、殆どカエルと変わらないことからわかる。
ネズミの大脳と人間の大脳は大きさが違うので、大脳の大きさが哺乳類の中の差ともいえる。
 人間の脳は誕生直後に成人の1/3程度で、20歳まで成長する。
3、人間を賢くしているものは何か?
 脳の大きさだけなら象の方が大きい。しわの数もイルカ、クジラ、ネアンデルタール人の方がおおい。
 人間の特徴的なことは、連合皮質が大きいということである。

4、 脳が連携していない根拠
 盲視からわかる。
盲視とは、進化的に新しい視覚機能に対応する部位に損傷を受けた時に盲目になる現象である。しかしこの盲目の人に、ペンライトのようなものをおき、「手にとってくれませんか?」というと、たいていの場合うまく取れるそうです。この理由はカエルのころは中脳で視覚の役割をはたしていたが、脳の外側の大脳とは連動していないため、本人も見えていないと思いつつも、感覚ではわかってしまうことにある。
 つまり、小脳、中脳、大脳は連動してないということで、後からポンポンと違う味のアイスが乗っけられただけなのだそうです。
 
5、 脳の燃費
 脳は重さ1.3Kgで体重65kgなら2%程度であるが、体全体では20%のエネルギー消費をする。

6、 人間はなぜ一夫一妻制を採用して、セックスを隠すのか
 ・人間以外の多くの動物は、メスの排卵の時期に合わせてセックスをする。それに対して人間は、女性の排卵に関係なくセックスをする。
 ・人間以外の多くの生物は自分の排卵の時期がせまると外に向かって積極的に知らせる(例:匂いをだす)が、人間の女性は自分の排卵が本能的にわかるわけではない。したがって、人間の男性は女性がいつ排卵かわからない。
 ・人間以外の生物は年齢を重ねることに受胎能力は落ちるが、完全に生殖能力が落ちることはない。閉経は人間の女性に特有のものらしい。
 ・人間以外の生物では長年つがいとなって生活したり、自分の子供を育てたりするオスは少ない。しかし人間では長年夫婦としていることが価値として存在して、オスも子育てにかかわる。

これらを説明する有力な仮説は以下だそうです。
「女が排卵期を隠すのは、男を常にそばにおいておくため」
・もし排卵の時期がだれの目にも明らかならば、男は妊娠の可能性の高い女性を選ぶ。そして時期が来たらその場を去り、別の妊娠可能性の高い女性を探す。このようなスタイルはヒヒ、ガチョウに見られる。
・排卵期が隠されると、受胎の可能性を高めるには、いつでもその女性とセックスをできなくてはならない。男性がその女性から離れてしまうと、別の男性にその女性を取られてしまう可能性がある。
・排卵期が隠されている場合、常に同じ伴侶といるのが男性にとっては最良の策となる。そして常に一緒にいれば、生まれてきた子供が自分の子供である確率は高い。

では女性がその策をとるメリットはなにか。
・人間の場合、他の多くの動物が離乳と同時に自分で食べ物を見つけられるのに対して、子供が自分で食べ物を見つけられるまで時間がかかる。そこで男性と長年一緒にいることは、子供の食事確保の点から効率がいい。

7、レム睡眠とノンレム睡眠
・爬虫類や両生類は、レム睡眠しかない。
・レム睡眠とノンレム睡眠が交互にくるのは、哺乳類や鳥類の特徴。
・ノンレム睡眠の役割は、子供の時は脳の成長を促すこと。胎児の時の小さい脳を大きくすること。大人になってからの役割は、記憶の関連付けを行うこと。つまり長期記憶に役立つこと。

8、 結局どういうこと?
 脳をゼロから設計しなおすことはできない→後から付け足すしかない→脳のニューロン処理速度は遅い→高機能を持たすには脳を大きくしないといけない→しかし胎児の段階で大きくし過ぎると産道を通れない→未熟な状態で生まれて、産後に成長するというメカニズムを採用する→子供の成長に時間がかかる→メスはオスの手助けを期待する→オスを身近に惹きつけておくため、排卵周期を自覚できないようにする(隠す)→ニューロンの発達には睡眠が必要→ノンレム睡眠の開発→夢を見るようになり、記憶の定着という副次機能


最後に
 この本を正確に理解するには、大学生物学の基礎があった方がいいと思います。高校生物を1Bくらいまでしかやってないと、完全には理解できません。




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