2007年 ドイツ映画 監督はウーヴェ・ボルという監督です。 知らないなァ・・・という方でも、意外とご覧になっていらっしゃるかもしれません。私も最初、この監督、誰だっけと思って検索したら、何と『ザ ハウス オブ ザ デッド』も『アローン イン ザ ダーク』も見たし、『ポスタル』も見ているし、『SEED』も見ていました。 ゲームには全く関心がないせいか、前作同様に本作もゲームビデオの映画化作品だということには関心がないので、ゲームの「ダンジョン シージ」についてまるで知りません。あくまで、映画『イン ザ ネーム オブ ザ キング ダンジョン シージ テイル』についての備忘録です。
主演がジェイソン・ステイサム。 なので、間違いなく彼のアクションを楽しめる映画なのですが、 『トランスポーター』シリーズのようなスタイリッシュなアクションを期待してはいけない。何といっても古代ギリシャローマ時代にバーバリアンと称されたケルトやゲルマン民族の神話時代の延長の中世初期といったイメージの時代。 冒頭からして『ロード オブ ザ リング』風のまさに「王の帰還」となった内容のファンタジーだからです。 ジェイソン・ステイサムの役どころは痩せた土地で細々と農耕が始められた時代に農夫として生きる主人公ファーマー。 蛮族が王国に攻めてくるため王国を守る兵士が募集されるという場面で、『ヘル・ボーイ』のロン・パールマンがいきなりノリックという役柄で登場するので、アクション映画ファンは期待値が高くなりますよね。
何だかこの二人が並んだ時点で、現代からワープした中世に現代の特殊部隊の元仲間が訪ねてきたような錯覚を持ってしまいますが、ファーマーとは家族同様の間柄の男。 往々にしてこういう役柄の男は主人公の頼もしい味方なれど、戦いで死ぬか悪役に殺されてしまうと相場が決まっているので、「どっちかなァ」と思って見てしまいますが・・・・ 順当な展開として早々と蛮族に襲撃される場面になり、ここでファーマーと名乗るジェイソン・ステイサムの農夫像、鋤を持っているが実は剣の腕前は相当なものなんだぞというキャラ紹介。そういう見せ場ですが、まあ、体つきと雰囲気からしてジェイソン・ステイサムは農夫というイメージではないので、ファンはここで「待ってました」と掛け声をしたくなるかもしれませんが、そんな腕前でもいざというときにそこにいなければどうしようもない。 市場に農作物を売りに出かけた先で蛮族に襲撃される妻子を救うことが出来ず、可愛い盛りの息子も妻の両親も皆殺され、愛する妻は奴隷として連れ去られてしまい後を追うことに。
妻を演じていたのは『ジョーブラックによろしく』で魅力全開だったクレア・フォラーニでしたが、農婦役で、しかも土にまみれるようなシーンが多かったせいか、小さな息子のいる女性としては皺がかなり目立っていて老け顔に見えました。 老け顔のステイサムと夫婦役ということで、 同年代の彼女が起用されたのかもしれませんが、 違和感があったのは彼女より10歳以上も若いリーリ・ソビエスキーの存在ゆえかもしれませんね。役柄ゆえか、リーリ・ソビエスキーの出番の多さは準主役級でした。監督の好みかなァ・・・
王国の司祭の娘で後に黒魔術と戦うことになる未来の女祭司。 剣術にも優れ王に仕え戦場にも出たいという願望を持った現代女性が共感するキャラクターのためか、妻役のクレア・フォラーニよりもずっと出番が多かったです。つりんつるんの美肌がとても目立っていました。 同じく、森に住む妖精、じゃなく、反戦平和主義者の女たちを代表してアップの出番が多かったのが、こちら、
ローアングルから撮影した森の高木からターザンのように降りてくる女の子たちのリーダー格です。このクリスタナ・ローケン、どこかで見た顔だわと思ったら、あの評判倒れとなった『ターミネーター3』で女ターミネーターをやった彼女です。 アクション映画に準主役級で出演出来るというのは、いまや若手女優の必須要件みたいになっていますけれど、この手の顔立ちはアクションでブレイクするタイプじゃないと思うので、もしかするとこういうアクション映画に出ることでソンをしているかも。 こうした若い子達の出番が多かった印象のせいか、妻役を演じたクレア・フォラーニが存在感を示すには、国王の妃役かうば役に年配の存在感のある女優さんを配しても良かったかも。何といっても、活劇ファンタジーなのだから。 本作を盛り上げたのは、 こうした女優陣以上に、男優たち。 その1と2は、前掲の主役とその相棒のロン・パールマンですが、家庭を持った以上国よりも個人の幸せが大事だと語るジェイソン・ステイサムと彼に従う友人と義弟=農夫という身分、 そういう彼らと違って、国のために国王に忠誠を誓う司祭や兵士たちの代表として、こちら。 国王の一番の理解者であり、ジェイソン・ステイサムが実は王の息子であることを見抜く千里眼の司祭を、 なかなかの存在感を見せてくれたいたのが、 このジョン・リス・デイヴィス。 ★多くの画像がこちらでご覧になれます。http://www.imdb.com/name/nm0722636/ 映画では脇役ながら主人公の身近で存在感のある心憎い役を演じることが多い印象ですが、もっと活用してもらいたい俳優の一人ですね。
そして、兵士たちを束ねる勇敢で精悍な司令官に、 ブライアン・J・ホワイトという黒人俳優が起用されていて、 なかなかのはまり役でした。この画像だと温厚ですが、本作では戦闘シーンが多く蛮族との戦争シーンでは剣を振るう姿がなかなか様になっていました。
司祭の娘であり、将来この国を担っていくことになる女祭司のリーリ・ソビエスキーとなかなかいい感じでしたよ。この二人で「オセロ」をやったら面白いかもしれないなァと思えたほど。
こうした家来たちを持った国王が、 こちらのバート・レイノルズです。
なかなか味わいのある王様で人望もあるのですが、バカな甥っ子のバカさ加減に気づきながら、息子代わりに思って甘やかしてきたツケで、その甥っ子に射殺されてしまうのですよね。 けれど、やはり王様は王様ということで、 死の床で、何故か気になりながらも自分に反抗的な姿勢を示す生意気な農夫が、実は死んだとばかり思っていた息子だったことを知り、王としての心得を語って死んでいきます。
この王様殺しの甥が最高にイカレテいるので笑えます。
この笑顔で、ある時は卑屈なまでに王に媚びて許しを請い、ある時は王位継承を狙い続ける野心のあまり気が狂いそうになるおバカを演じているのですが、相手によってカメレオンのように態度を変えるこの男、司令官とは水と油。 その司令官との決戦では、なかなかの剣の腕前を見せてくれますので、楽しみに事欠かない活劇です。 何といっても、このおバカな男ではジェイソン・ステイサムの相手にはならないので、悪役の真打に登場してもらうと、
そう、B級映画の常連であり、サスペンスの帝王というお顔の彼、レイ・リオッタ。 国王のおバカな甥っ子と組んで権力奪取を狙う黒魔術の使い手に堕した元司祭という役柄で、画面いっぱいにアップで映し出される彼の青い瞳とニキビ痕だらけのお顔が微妙にマッチングしていて、何とも言い様がありません。レイ・リオッタのこのお顔は、ホント、サイコサスペンスの帝王と言っていい感じですね。 彼の魔術が泥まみれの蛮族を命知らずの兵士に変えるのですが、その威力たるや相当なもの、それに苦戦するジェイソン・ステイサムたちの戦いぶりが見所ですが、思えば、悪は強しですね。泥人形を最強の兵士にしてたった一人で正規軍と戦うのですもん。
ということで、以上、本作の面白さは、何といってもキャスティングの妙でした。その意外性、独創性のキャスティングで最後まで楽しませてくれた歴史ファンタジー風アクション映画でした。 (チャンバラ&忍者起用の活劇シーンの映像がフォルダから探せず、残念でした)
★http://inthenameoftheking.com/