世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

2016-02-10 05:17:11 | ちこりの花束

 ある日の事、長男と次男が、海岸で黒い鳥を拾ってきました。それはほとんど真っ黒な大きな鳥で、どうやら軍鶏のようでした。多分闘鶏用のものでしょうが、両足がマヒして動かなくなっていました。闘鶏用としてはもう使えないので、元の飼い主に捨てられてしまったのでしょう。
 どうしようかと思いましたが、子供の気持ちもくんでやらなければと、世話を始めました。それにその鳥は、足こそ動きませんでしたが、全身ほとんど真っ黒な羽と、鋭く澄んだ金茶色の瞳がとても美しくて、世話をしてあげたいなという私の気持ちも働いたのです。エサや水をあげると、飢えていたのか勢いよく食べました。糞で汚れていたおしりを洗ってやったり、マヒしていた足をさすってやったりすると、きれいな瞳を気持ちよさそうに細めました。それだけでも、何となく幸せな気持ちになったものでした。
 けれど、世話をして七日あまりで、鳥は死んでしまいました。朝、硬くなって死んでいる鳥を見た時は、少し予期はしていたものの、涙が流れました。
「人間を恨まないで死んでくれたと思うから、それでいいよね」
 子供とそう語り合いました。


(2002年7月ちこり25号、編集後記より)




この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 思いやめし弥勒 | トップ | 試験 »
最新の画像もっと見る

ちこりの花束」カテゴリの最新記事