フィリップ・オットー・ルンゲ
夜がすべてを支配し、まことの魂をすべて怠惰の中に飲み込んでしまうかと思う頃、真珠のようなただひとかけらの愛が、わたしはわたしだと言った。そこから夜明けが始まり、真珠は新たな嬰児をこの世に産んだ。
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覚えておられる方もいるでしょう。この絵はかのじょが、例の日記の表紙として採用した絵です。夜明けの太陽の中にヴィーナスのような女性像が現れ、その足元には玉のような嬰児が描かれている。何かのインスピレーションを受けたのでこれを使ったのでしょう。その日記はタイトルを変えられて人類世界に広がっている。そして暗がりにひずんだ人の心をひっくり返し続けている。まさに、ひとりで千万人の子を産むような仕事を、かのじょはしたのです。
あの日記は、世界中の馬鹿にすべてを否定された人間の、玉を砕くような叫びでした。わたしは、美しいのだと。すばらしいのだと。どんな暴虐の嵐の中でも折れはしない。わたしこそが真実なのだと。
新しい神話は、ここから始まっていくのです。