一時はかなり迷ったものの、落ち着くべきところに落ち着きました。今夜は袖ヶ浜キャンプ場に泊まります。
十五夜をどこで過ごすかと考えたとき、そもそも輪島に泊まるかどうかという問題がありました。北側に海が開けた輪島市街では、海を背にする形で月が昇って行きます。中秋の名月もそれでは画竜点睛を欠きそうに思われました。代わりに浮上したのが蛸島の民宿です。去年半島最北端の禄剛崎を訪ねた帰り、かつての駅前で見かけた食堂兼民宿は看過しがたいものがありました。輪島とは逆に、あちらでは海が南に開けています。かつての駅前に泊まれるという点でも、海岸から真正面に昇る月を眺められるという点でも申し分ありません。しかも、翌朝は能登線の跡を終点から改めて辿ることができ、一石二鳥という寸法でした。それでも決めかねていたのは、投宿が六時までとされていたからに他なりません。その時刻から逆算すると、日中の行動も多かれ少なかれ制約を受けるため、踏み切れなかったというのが真相です。流れに任せるつもりで走ったところ、能登島を回った時点で六時になってしまったため、その時点で蛸島へ行く選択肢はなくなり、輪島へ車を走らせました。
輪島に泊まると決めた場合、もう一つの選択肢が出てきます。宿泊するか、キャンプをするかという問題です。一連の騒動で大打撃を受けた宿泊業への支援という観点からは、宿代を奢った方が望ましいのはもちろんです。その一方で、一度はキャンプをしておきたいという考えもありました。今から北海道へ渡っても、キャンプはかなり厳しいのが去年の経験から分かっています。つまり、これが今年最初で最後の機会になるかもしれないということです。その機会が十五夜に重なり、さらには適温無風という条件まで揃ったのは出来過ぎています。その結果、今しかできない方を選ぶという基準に照らし、こちらのキャンプ場に落ち着いた次第です。
一つだけ誤算だったのは、よくよく見ると閉鎖中の立看板が出ていることです。正式には八月までの開設ながら、その後も常識の範囲内で使えると聞いており、昨秋訪ねたときにもそのような形で運用されていました。着いたときにも先客がいたため、何の疑念も持たずにいたのです。ところが、呑み屋から戻ってくると、先客の車はいつの間にやら去っており、閉鎖中の看板にも今更ながら気付くという経過です。炊事場の明かりは灯されているため、やってやれないことはなさそうにも見えます。しかし、物騒なご時世を考えると、下手に強行すれば軋轢を生みかねません。さりとて今更投宿するのも面倒です。その結果、今夜は車中泊という形になりました。
まさかの雷雨に見舞われた昨秋の返り討ちに遭ったともいえます。しかし、雷と月では大違いです。目の前の砂浜にはさざ波が寄せては返し、沖合には漁火が点々と灯って、背後の茂みからは秋の虫の声が聞こえてきます。主役の月が、海上ではなく背後に昇っているのが惜しまれるところではありますが、何もかも揃うという虫のよい話はありません。これで必要にして十分です。
「山海」では、飲みきれないと分かっていながら小瓶をもう一本注文しました。残った分を持ち帰り、キャンプ場で飲み直そうという算段です。ホタルイカの沖漬けも持ち帰れたため、これを肴にもう一杯やるつもりです。
十五夜をどこで過ごすかと考えたとき、そもそも輪島に泊まるかどうかという問題がありました。北側に海が開けた輪島市街では、海を背にする形で月が昇って行きます。中秋の名月もそれでは画竜点睛を欠きそうに思われました。代わりに浮上したのが蛸島の民宿です。去年半島最北端の禄剛崎を訪ねた帰り、かつての駅前で見かけた食堂兼民宿は看過しがたいものがありました。輪島とは逆に、あちらでは海が南に開けています。かつての駅前に泊まれるという点でも、海岸から真正面に昇る月を眺められるという点でも申し分ありません。しかも、翌朝は能登線の跡を終点から改めて辿ることができ、一石二鳥という寸法でした。それでも決めかねていたのは、投宿が六時までとされていたからに他なりません。その時刻から逆算すると、日中の行動も多かれ少なかれ制約を受けるため、踏み切れなかったというのが真相です。流れに任せるつもりで走ったところ、能登島を回った時点で六時になってしまったため、その時点で蛸島へ行く選択肢はなくなり、輪島へ車を走らせました。
輪島に泊まると決めた場合、もう一つの選択肢が出てきます。宿泊するか、キャンプをするかという問題です。一連の騒動で大打撃を受けた宿泊業への支援という観点からは、宿代を奢った方が望ましいのはもちろんです。その一方で、一度はキャンプをしておきたいという考えもありました。今から北海道へ渡っても、キャンプはかなり厳しいのが去年の経験から分かっています。つまり、これが今年最初で最後の機会になるかもしれないということです。その機会が十五夜に重なり、さらには適温無風という条件まで揃ったのは出来過ぎています。その結果、今しかできない方を選ぶという基準に照らし、こちらのキャンプ場に落ち着いた次第です。
一つだけ誤算だったのは、よくよく見ると閉鎖中の立看板が出ていることです。正式には八月までの開設ながら、その後も常識の範囲内で使えると聞いており、昨秋訪ねたときにもそのような形で運用されていました。着いたときにも先客がいたため、何の疑念も持たずにいたのです。ところが、呑み屋から戻ってくると、先客の車はいつの間にやら去っており、閉鎖中の看板にも今更ながら気付くという経過です。炊事場の明かりは灯されているため、やってやれないことはなさそうにも見えます。しかし、物騒なご時世を考えると、下手に強行すれば軋轢を生みかねません。さりとて今更投宿するのも面倒です。その結果、今夜は車中泊という形になりました。
まさかの雷雨に見舞われた昨秋の返り討ちに遭ったともいえます。しかし、雷と月では大違いです。目の前の砂浜にはさざ波が寄せては返し、沖合には漁火が点々と灯って、背後の茂みからは秋の虫の声が聞こえてきます。主役の月が、海上ではなく背後に昇っているのが惜しまれるところではありますが、何もかも揃うという虫のよい話はありません。これで必要にして十分です。
「山海」では、飲みきれないと分かっていながら小瓶をもう一本注文しました。残った分を持ち帰り、キャンプ場で飲み直そうという算段です。ホタルイカの沖漬けも持ち帰れたため、これを肴にもう一杯やるつもりです。