日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

豊穣の能登を行く 2020 - 袖ヶ浜キャンプ場

2020-10-01 23:16:35 | 北陸
一時はかなり迷ったものの、落ち着くべきところに落ち着きました。今夜は袖ヶ浜キャンプ場に泊まります。
十五夜をどこで過ごすかと考えたとき、そもそも輪島に泊まるかどうかという問題がありました。北側に海が開けた輪島市街では、海を背にする形で月が昇って行きます。中秋の名月もそれでは画竜点睛を欠きそうに思われました。代わりに浮上したのが蛸島の民宿です。去年半島最北端の禄剛崎を訪ねた帰り、かつての駅前で見かけた食堂兼民宿は看過しがたいものがありました。輪島とは逆に、あちらでは海が南に開けています。かつての駅前に泊まれるという点でも、海岸から真正面に昇る月を眺められるという点でも申し分ありません。しかも、翌朝は能登線の跡を終点から改めて辿ることができ、一石二鳥という寸法でした。それでも決めかねていたのは、投宿が六時までとされていたからに他なりません。その時刻から逆算すると、日中の行動も多かれ少なかれ制約を受けるため、踏み切れなかったというのが真相です。流れに任せるつもりで走ったところ、能登島を回った時点で六時になってしまったため、その時点で蛸島へ行く選択肢はなくなり、輪島へ車を走らせました。
輪島に泊まると決めた場合、もう一つの選択肢が出てきます。宿泊するか、キャンプをするかという問題です。一連の騒動で大打撃を受けた宿泊業への支援という観点からは、宿代を奢った方が望ましいのはもちろんです。その一方で、一度はキャンプをしておきたいという考えもありました。今から北海道へ渡っても、キャンプはかなり厳しいのが去年の経験から分かっています。つまり、これが今年最初で最後の機会になるかもしれないということです。その機会が十五夜に重なり、さらには適温無風という条件まで揃ったのは出来過ぎています。その結果、今しかできない方を選ぶという基準に照らし、こちらのキャンプ場に落ち着いた次第です。

一つだけ誤算だったのは、よくよく見ると閉鎖中の立看板が出ていることです。正式には八月までの開設ながら、その後も常識の範囲内で使えると聞いており、昨秋訪ねたときにもそのような形で運用されていました。着いたときにも先客がいたため、何の疑念も持たずにいたのです。ところが、呑み屋から戻ってくると、先客の車はいつの間にやら去っており、閉鎖中の看板にも今更ながら気付くという経過です。炊事場の明かりは灯されているため、やってやれないことはなさそうにも見えます。しかし、物騒なご時世を考えると、下手に強行すれば軋轢を生みかねません。さりとて今更投宿するのも面倒です。その結果、今夜は車中泊という形になりました。
まさかの雷雨に見舞われた昨秋の返り討ちに遭ったともいえます。しかし、雷と月では大違いです。目の前の砂浜にはさざ波が寄せては返し、沖合には漁火が点々と灯って、背後の茂みからは秋の虫の声が聞こえてきます。主役の月が、海上ではなく背後に昇っているのが惜しまれるところではありますが、何もかも揃うという虫のよい話はありません。これで必要にして十分です。
「山海」では、飲みきれないと分かっていながら小瓶をもう一本注文しました。残った分を持ち帰り、キャンプ場で飲み直そうという算段です。ホタルイカの沖漬けも持ち帰れたため、これを肴にもう一杯やるつもりです。
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豊穣の能登を行く 2020 - 山海

2020-10-01 21:14:11 | 居酒屋
前回輪島を訪ねたときと同様に、到着後は呑み屋街の下見を済ませておきました。物騒なご時世だけに、看板が繰り上げられたり、余所者を断ったりしているかもしれないと踏んだのです。その予感は残念ながら的中し、県外客、観光客お断りを掲げている店がいくつかありました。武生の銭湯にしてもそうでしたが、小さな町になればなるほど、余所者に対する警戒心は強まるのかもしれません。痛かったのは、その中の一つに「わらしべ」が含まれていたことです。「連」の定休日にも重なって、元々一つ欠けていた持ち駒はさらに減らされ、既出の中では「山海」と「どんぶらこ」の二者択一となりました。しかも、身軽になって出直すと、「どんぶらこ」の明かりは既に消えており、「山海」にも断られれば万事休すという状況に。恐る恐る玄関をくぐると、何事もないかのように迎えられ、ようやく安堵するという顛末です。

教祖の番組で輪島が取り上げられたとき、「連」とともに紹介された店がこちらです。一昨年に初めて輪島を訪ねたときはてらいなくこの二軒を選び、半年後にも再訪を果たしました。これは、期待に違わぬ名店だったということでもあります。去年こそ休みに重なりはしたものの、開いていれば是非再訪したい店の一つがここでした。
他の店が選択肢からことごとく外れていった上での結果とはいえ、腹具合が万全な一軒目で入れたのは初めてです。貴重な機会を活かすべく、まずは刺盛りとくろも酢を選びました。刺盛りは、11時の位置に三切れ盛られた平政から始まり、時計回りに梅貝、白身三種、アオリイカを並べて、中央に甘海老を置いた七点です。白身はそれぞれ鯛の湯引き、平目の昆布〆、ホウボウの刺身でしょうか。北陸では端境期となる秋だけに、鰤のような花形こそ見当たらないものの、同じ白身でも調理を変えるという一工夫は心憎いものがあります。くろも酢はもずくとも一味違う、箸休めにも好適な一品でした。
一軒限りなら後先を考える必要もありません。フグの唐揚に続いては、前回先客がすすっていたラーメンを注文。チャーシュー、メンマ、葱、わかめに加えて、なるとの代わりに昆布巻の蒲鉾を添えるところが北陸ならではです。やや薄味にスープを仕立て、予め胡椒を振ってから出すのは、呑んだ後に最もおいしく感じられるようにするための工夫でしょう。細い縮れ麺もこのスープによく合っています。〆の一品まで抜かりはありませんでした。

山海
輪島市河井町6-21-12
0768-22-5254
1800PM-2200PM
日曜定休

おれの酒
千枚田
さしみの盛り合せ
くろも酢
ふくの唐揚
ラーメン
イカ沖漬け
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豊穣の能登を行く 2020 - 常盤湯

2020-10-01 20:42:39 | 温泉
昇って行く満月を横目に北上し、本日の投宿地となる輪島に着きました。呑み屋街へ繰り出す前に一風呂浴びます。立ち寄るのは常盤湯です。
輪島に三軒ある銭湯のうち、前回世話になった末広湯は定休日で、実質的には二者択一でした。その中からこちらを選んだのは、土日定休という条件が決め手になってのことです。平日に能登を訪ねる機会はなかなかありません。必然的に、平日しか空いていない方を選んだ次第です。
箱形をした現代的な外観からすると、建築の年代は比較的新しいのでしょう。一押しで適温、適量の湯が注がれるカランを、銭湯で見かけることは多くありません。しかし、建物こそ無味乾燥でも、漁港の周辺には余所者が知る輪島とも一味違う趣があります。その一角に明かりを灯す佇まいは上々でした。

★常盤湯
輪島市鳳至町42-2
0768-22-0941
1300PM-2130PM
土曜及び日曜定休
入浴料460円
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豊穣の能登を行く 2020 - ツインブリッジのと

2020-10-01 18:18:45 | 北陸
日中の残り時間を能登島に注ぎ込んだのは、結果として正解だったのかもしれません。海沿いに一周するのとほぼ同時に日が暮れたからです。もう一本の橋を渡って能登半島に戻りました。
ツインブリッジのとなる命名は、コンクリート製の斜張橋にちなんだものでしょう。橋としての造形で能登島大橋の上を行くのはもちろんのこと、眺望でも断然こちらが勝っています。ただし、橋の袂から対岸を眺める限り、長さが決定的に違うとは思われません。湾の中程に架かっており、周囲に目立つ建物がないことと、高さが全く違うことで、眺めも変わってくるようです。南側の眺めが特に広々としており、こちらを先に渡るべきだったかと少し後悔させられました。
ただし、後から渡ったからこその収穫もあるにはありました。橋の架かる方角に日が沈んでいったらしく、影絵になった二本の主塔とケーブルにより、お誂え向きの眺めが広がっていたのです。しかも、ひとしきり撮り終えると、能登島の向こうから十五夜の月が昇ってきました。橋に重なる満月といえば、一昨年の正月の大鳴門橋が思い出されます。あちらと違って照明灯がつかない代わりに、月明かりで橋が影絵になってくれるかもしれません。ほどよい高さに昇るまでもうしばらく粘ってみます。
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豊穣の能登を行く 2020 - 能登島大橋

2020-10-01 16:04:48 | 北陸
氷見市街の手前で俄か雨に降られるも、七尾の市街に入ったところでようやく空が晴れてきました。何はさておき眺めのよい場所へと考え、やってきたのは能登島大橋です。
七尾湾に浮かんだ島との間に二本架かる橋のうち、和倉の市街に近い方がこちらです。中央部を高くしたコンクリート橋は、今や各地で見かけるありふれた出で立ちをしています。橋の上からの眺めも感嘆するほどでなく、勝手に期待していた分だけ拍子抜けしました。しかし、橋の袂から眺めると、去年訪ねた見附島を彷彿させる切り立った岩肌が突き出して、背後に漂う大きな雲と重なっています。一つだけでも絵になるものを切り取れたのは幸いです。
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豊穣の能登を行く 2020 - 禾多重力開女台

2020-10-01 14:02:26 | 北陸
「新しい生活様式」なる制約が課せられる状況で、長時間市街を歩きたくないと先日も申しましたが、人通りがほとんどなければ無駄に気兼ねする必要もありません。市街にも無料の駐車場があったため、土蔵造りが建ち並ぶ一帯を歩いてから高岡を出ました。主戦場となる能登へ向かって移動を開始したところです。
一昨年の早春以来、二年半で四度目の能登半島です。自身にとって全くの空白地帯だった場所へ、これほどの頻度で通えるようになったのは、皮肉なことに北陸新幹線の恩恵でもあります。奥能登まで行こうとすれば、移動だけでも一日がかりの大仕事です。行って戻れば二日かかることを考えると、金沢、富山のついででは行きづらいものがありました。しかし、新幹線で直行すると九時台には高岡に着き、その日のうちに奥能登まで走れます。一週間まで無料で使える高岡駅の駐車場と組み合わせれば、土日だけでも行けるという寸法です。しかし今回は本日から数えて四日を確保しました。その恩恵に与って、能登には二泊するつもりでいます。輪島に一泊するのは既定方針ですが、もう一泊は流れ次第です。
晴れそうで晴れない天候は相変わらずです。雨晴のお立ち台から見渡すと、新湊と富山の方は晴れているにもかかわらず、これから向かう氷見と七尾の方角は曇っているのが分かります。しかし、最新の情報によると夕方までには晴れるようです。今日は十五夜、印象的な月夜になってくれることを願います。
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豊穣の能登を行く 2020 - 将来軒

2020-10-01 11:34:27 | B級グルメ
富山を出る間際に晴れて色めき立つも、再び曇ってしまいました。これなら先を急ぐ必要もありません。少し早めのお昼をいただいていきます。「将来軒」が開くのを待って飛び込みました。
高岡でお昼といえばデリーですが、去年訪ねたこちらの店も上々でした。あれ以来気になっていたロース丼が今回の目当てです。その正体は、適度な厚さのロース肉を唐揚にしてご飯に乗せ、甘辛いそぼろと醤油ダレをかけ、みじん切りの浅漬けを添えたものでした。麻婆飯、中華飯、天津飯がある中で丼を名乗るのは、器の違いに由来します。飯より深く、麺より浅い丼を使うのは、とろみのないタレをかけたご飯と平たい皿の相性がよろしくないからでしょうか。さっぱりしたタレと浅漬けの効用により、揚げ物といえどもくどさを感じさせません。研究の跡が窺われる一品でした。

将来軒
高岡市川原本町5-18
0766-22-9224
火曜定休
餃子330円
ロース丼700円
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豊穣の能登を行く 2020 - 扇子昆布

2020-10-01 11:06:33 | B級グルメ
高岡を出る前に寄っておきたかったのが扇子昆布です。氷見でも買ったばかりではありますが、量り売りは当店だけの特徴です。

★扇子昆布店
高岡市旅籠町51
0766-23-0808
900AM-2000PM
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豊穣の能登を行く 2020 - 具イ本イヒ

2020-10-01 10:01:21 | 北陸
相棒と合流して活動を再開します。通算23万kmまではあと1300km強に迫り、次回かその次あたりで到達しそうな見通しです。福井へ向けて出発した時点ではまだ先と思っていた目標が、次第に具体化しつつあります。去年の晩秋、道東で迎えた22万kmの節目は実に印象的でした。偶然に左右される部分が大きいため、あの奇跡を自身の意思だけで再現できるわけではないものの、それ相応の場所で迎えられるよう、できるかぎりの算段を巡らせていくつもりです。
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豊穣の能登を行く 2020 - はくたか551号

2020-10-01 09:15:49 | 北陸
新幹線で一駅だけ移動します。乗車したのは東京から下ってきた始発の「はくたか」です。一本前の「つるぎ」をあえて見送ったのは、新高岡で在来線との接続がないからでもあります。昨晩の疲れが残っている状況では、小一時間でも余計に休めるのは助かります。国鉄形の気動車にも一駅とはいえ乗れるため、一石二鳥という寸法です。

★富山912/はくたか551(551E)/920新高岡928/332D/931高岡
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豊穣の能登を行く 2020 - アルファーワン富山駅前

2020-10-01 08:39:46 | 北陸
富山に舞い戻ったのは一週間ぶり、アルファーワンの世話になるのもそれ以来でした。帰京前に泊まったとき、決め手となったのは大浴場と駅からの近さでしたが、今回とりわけ重要だったのが後者の条件です。富山駅の周辺に泊まるというと、近年愛用しているのは高志会館ですが、昨晩に関する限りは駅から10分弱歩くところが難点でした。投宿して出直すと九時過ぎになり、目当ての店が早仕舞いしてしまう可能性もあったからです。実際には九時過ぎでも入れはしたものの、おそらくはしごはできなかったでしょう。駅前の横断歩道を渡った先に宿があり、なおかつ電車通りの向かいが繁華街という立地の恩恵は絶大でした。
もう一つの絶大なる価値として眺望があります。今回割り当てられたのは、低層階ながらも駅側の部屋でした。駅前の交差点を行き交う電車を一望できる好位置です。その位置から眺めると、全体の配置が絶妙だと改めて思います。近からず遠からずほどよい距離を置いた場所に交差点があり、しかも南北方向に走る軌道が交差点の手前だけやや斜めになるため、駅を出た電車が一時停止すると、背後に横たわる高架の新幹線駅、右奥にある円形のバス乗り場との距離感もほどよい具合になるという仕掛けです。しかし、違う角度から眺めても、これほど完成された眺望にはならないかもしれません。ついでにいえば、元々この眺めだったというわけでもありません。駅の直下に電停が移設されるまでは、東の方から来た軌道が南へ向きを変えるだけの交差点だったからです。一回泊まっただけではこのようなことにも気付かなかったでしょう。重ねて泊まったからこその発見でした。
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豊穣の能登を行く 2020 - 二日目

2020-10-01 07:45:24 | 北陸
おはようございます。昨晩は宿に戻るや一風呂浴びる余力もなく倒れ込み、そのまま眠りにつきました。始業を繰り上げ、終わり次第列車に飛び乗るという慌ただしい一日だっただけに、自覚する以上に疲れていたのでしょう。しかも、体力に陰りが見えてきた昨今、一晩休んだだけでは疲れがとれません。予報通りに晴れてきたため、すぐにでも活動を再開したいのはやまやまながら、もう一休みしてから出発します。
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