日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

晩秋の大地を行く 2020 - 鳥松

2020-10-20 22:24:50 | 居酒屋
富喜和荘の唯一にして最大の難点は11時の門限です。「しらかば」を出て釧路川のほとりをしばし歩くと、時計が気になってきました。あとはザンギをいただくだけです。「鳥善」が早仕舞いしていたことにより、選択肢は「鳥松」に絞られました。
一連の騒動を通じて、飲食業はどこもかしこも大打撃を受けました。酔客相手の店においては、影響の度合いがなおさら大きいということも分かっています。ましてや釧路では、上客だった船員の姿が消えたとも聞きました。当店にとっては受難の時代です。暖簾をくぐると、先客皆無の店内で店主と女将が手持ち無沙汰にしていました。とはいえ、お客が完全に途絶えたというわけでもありません。しばらく経つと持ち帰りの注文の電話が立て続けに入り、一杯やった帰りと思しき地元客も続け様に飛び込んできました。それらがいずれも一人客という光景に、世相が反映されているかのようでもあります。

鳥松
釧路市栄町3-1
0154-22-9761
1700PM-030AM
日曜定休
ザンギ一人前600円
コメント

晩秋の大地を行く 2020 - しらかば

2020-10-20 20:52:12 | 居酒屋
釧路で近年顕在化しているのは宿泊問題ですが、今回はもう一つの問題がありました。呑み屋の定休日をどのようにして避けるかというものです。発端は、年中無休だった「万年青」が定休日を設けるようになったことにありました。月曜に設定された定休日に、第一と第三火曜も加わったのは去年のことです。つまり今週は連休ということになります。仮に昨日着いたとすると、連泊では「万年青」に行くことができません。そうなった場合は、中標津か根室に足を延ばし、中一日で釧路に戻るつもりでした。着くのが今夜になったことでその必要はなくなったものの、今夜については「しらかば」だけが頼みの綱です。それだけに、早仕舞いで振られはしないかが若干の懸念材料でした。
一瞬色めき立ったのは、明かりの消された袖看板が見えたときです。暖簾は掛かり、行灯の明かりもついてはいます。しかしながら、去年は同じ状況で振られるという経験をしました。同じ轍を踏むのかと、恐る恐る暖簾をくぐると、女将からも何事もなかったように迎えられ、カウンターの一番奥の指定席に収まるという顛末です。ただし、一人だけいた先客が少しでも早く帰っていれば、その時点で早仕舞いしていた可能性はあり得ます。どうにか滑り込めたのは大きいものがありました。

すすきのはもちろんのこと、旭川の三・六街と比べても釧路の繁華街は静かです。先客が一人という状況も何度か経験してきました。それだけに、今夜の人出がそこまで少ないとも思われません。しかし、女将によると人出は相当減っており、特に船員が減ったとの発言が。今でこそ静かに感じる繁華街も、往年は大型船が着く度に賑わったと小耳に挟んだことがあります。寄港地で散財していく船員が、繁華街を支えてきたということです。それが途絶えてしまったのは、物騒なご時世を反映し、外出が御法度とされたからでしょう。巷で噂の集団感染も起きかねない職場だけに、一時横行した無意味な「自粛」というわけではないものの、釧路の店が一層厳しい状況に置かれているのは事実のようです。
そのようなわけで、一人だけいた先客も帰り、中盤からは貸切となりました。目の前の囲炉裏で魚を焼いてもらい、それを真打ちに据えられれば申し分ありません。何があるかとたずねたところ、筆頭に挙げられたのは秋刀魚でした。秋刀魚も今や不漁続きでさっぱりです。今季は特にその傾向が甚だしく、秋はこのまま過ぎ去るかにも思われました。一度限りとなるかもしれない貴重な機会が、釧路で巡ってくるとはまさしく渡りに舟です。迷わず所望したところ、女将からは今日の秋刀魚が今季一だとの返答が。一尾をそのままいただくのは何分今季初だけに、自身の中では比べようがないものの、女将がいうなら間違いはないでしょう。
例年に比べ脂の乗りが今一つとはいうものの、いわれて初めてそうかと思う程度に過ぎません。今季初、場合によっては最後となるかもしれない機会が、今季一の入荷と重なったのは出来過ぎています。あと一日前後しても、この秋刀魚は入らなかったかもしれないからです。今日着いたのは結果として正解だったことになります。

しらかば
釧路市栄町2-3
0154-22-6686
1730PM-2330PM(LO)
日祝日定休

福司三合
牡蠣豆腐
ふき煮付け
鰊切込み
やきとり
秋刀魚
おでん三品
コメント

晩秋の大地を行く 2020 - 富喜和荘

2020-10-20 20:14:11 | 北海道
常々申している通り、無味乾燥な自動車専用道に極力頼りたくはありません。しかし、北十勝から釧路の方へ向かう場合、速さ以上に距離の面で道東道の短縮効果が大きいのも事実です。上士幌から交通量皆無の道道で本別に抜け、阿寒まで道東道を飛ばしました。大半の車が流入する国道に代えて走ったのは、その東側を並行する道道222号線です。広々していながらも、石狩平野、十勝平野とは全く違う荒涼とした雰囲気が暗い中でも感じられる快走路でした。上陸以来最長の約270kmを走り切り、釧路に着いたところです。

道内主要都市の中で、釧路の宿泊事情が近年異常なまでに逼迫しています。連休ならばともかくとして、何の変哲もない平日に混むという事態を経験し、まず疑ったのは学会の弊害です。あまりに頻発する状況から、最近では外国人観光客の激増も一因という仮説を立てていたところでしたが、原因は全く違うところにあるのかもしれません。またもや足をすくわれるところでした。
糠平を出るに先立ち予約サイトを調べたところ、思わず目を疑うような回答がありました。釧路の宿が六軒しかないというのです。しかも、釧路とは釧路管内を意味し、釧路市に限っていうと事実上ゲストハウス一軒しかありませんでした。こうなることが近年やたらに多いため、一応警戒はしていたのです。混むわけはなかろうと思いながらも、出発前に予約サイトを調べたところ、結果はもちろんがら空きでした。それが何故当日までに一変したのかについては、10月の平日という条件からしても不可解というほかありません。真相のほどはさておき、問題は目の前の現実にどう対処するかです。またしても窮地を救ってくれたのは富喜和荘でした。
去年もあわやという場面に見舞われながら、駅裏の商人宿に滑り込むことができました。あのとき世話になったすみれ旅館には今でも感謝しています。しかしそれ以上の収穫だったのは、翌日泊まったこの宿です。簡素ながらも小ぎれいに保たれ、温厚な館主によるもてなしもしみじみありがたく感じられました。日にちは多少前後しても、釧路に二泊することだけは決めていたため、今回も到着時間の読みやすい二泊目にと考えてはいたのです。しかるに信じがたい事態が再現され、二泊どころか一泊できるかどうかさえも危ぶまれる中、幸いにして電話口の館主からは空いているとの返答がありました。明日も空いていると聞き、即決したのはもちろんです。釈然としない部分は残るものの、結果としてはよりよい形に落ち着いてくれました。
コメント

晩秋の大地を行く 2020 - 三日月

2020-10-20 17:27:59 | 北海道
日中の山場にあたる時間帯を泣く泣く棒に振りましたが、月だけは待っていてくれました。糠平の町を出ようとしたところ、西の空には三日月が浮かんでいました。その月を横目にしつつしばらく行くと、次第に周囲が開けてきました。影絵になった丘の上に月が浮かぶお誂え向きの眺めが現れたため、車を止めたところです。
ここまで走ってくる途中、3度を切ったことを知らせる警告音が鳴りました。上陸以来初めてのことです。上川の町内で一瞬だけ半袖シャツに着替えたものの、Tシャツ一枚になったのはラーメンをすすっている間だけです。やはり、北海道もここまで来ると気候が大分違います。これからは晩秋らしさを感じる場面が増えてきそうです。
コメント

晩秋の大地を行く 2020 - 禍根

2020-10-20 17:04:23 | 北海道
案の定禍根となってしまいました。今し方野暮用を終えたところです。
三国峠を越えた後も、無人地帯が長く続きます。電波が届く場所ということになると、少なくとも糠平までは行く必要がありました。その沿道に点在するのが旧士幌線の遺構群です。アーチ橋を中心とした見応えのある遺構を、国道沿いの展望台から眺めることができるため、時間が許せば立ち寄りたいのはやまやまでした。しかし、実質最初の遺構となる幌加駅を訪ねたところで時間が尽き、糠平までまっすぐ走るしかなくなりました。線路は道の東側を通っていたため、昼過ぎという時間帯は頃合いでした。晩秋の柔らかな日が射す条件もお誂え向きだっただけに、むざむざ素通りせざるを得ないのが惜しまれてなりませんでした。せめて開始があと一時間、いや30分でも遅ければ、駆け足ながらも見て回ることは可能だったのですが。
天候の当たり外れは運の問題と割り切れます。しかし、職場の事情で妥協せざるを得なかったときは、後年まで苦々しい思い出となって残ることが少なくありません。今回の出来事も、その一つに加わりそうな気がしています。しかし、全体として捉えれば、不平を述べるのも筋違いな話です。十日を超える長い休みをもらえたことにまず感謝すべきでしょう。恨み言は水に流し、この先の旅がよりよいものになってくれることを願います。
コメント

晩秋の大地を行く 2020 - 三国峠

2020-10-20 14:08:10 | 北海道
国道39号線と分かれてからは、錦繍を通り越し冬枯れの車窓でした。人家皆無の山中を快走してトンネルを抜け、三国峠の展望台にたどり着いたところです。
一昨日に比べると、昨日と今日は雲が多くて日が陰りがちです。最新の予報を見る限り、上川よりも十勝の方が天候は安定しているようでした。しかし、トンネルを抜けた先には青空が広がっているかと思いきや、さほど変わらぬ空模様でした。これなら長居は無用です。まっすぐ走れば、少なくとも糠平か上士幌には着くでしょう。そちらで野暮用を片付け、終わり次第釧路へ向かって移動します。
コメント

晩秋の大地を行く 2020 - 寿老人岩

2020-10-20 13:02:30 | 北海道
上川の市街を過ぎてしばらく行くと、両側に絶壁が切り立つ車窓に変わります。路側帯の広がった場所に車を止めると、寿老人岩なる立札がありました。どれがその寿老人岩とやらなのかは判然としないものの、午後の日差しを浴びた陰影のある岩肌と、色づいた木々との取り合わせが見事です。晩秋らしさを感じる場面が去年の旅より希薄だと再三申してきましたが、これこそまさに晩秋だと思える場面が訪れました。
コメント

晩秋の大地を行く 2020 - 安足間駅

2020-10-20 12:16:06 | 北海道
北海道らしい響きが印象的な安足間駅を訪ねます。郵便局が国道側に移転したせいでもあるのか、伊香牛、中愛別の両駅に比べて寂しげな駅前ではありますが、対向式のホームに立てば、下り方の正面に聳える大雪山が絵になっています。
コメント

晩秋の大地を行く 2020 - 愛山駅

2020-10-20 11:44:19 | 北海道
愛別を振り出しに、愛のつく駅が三つ続きます。トリを飾るのは愛山駅です。
将軍山と同じく仮乗降場を発祥とし、朝礼台から少し離れた場所には小屋のような待合室と屋根付きの自転車置場があります。一台とはいえ自転車があるのは、曲がりなりにも利用されている証です。
線路が向かっていく先には大雪山が鎮座します。中腹に近い高さまで、既に分厚く積雪しており、山頂付近は雪雲に覆われているようです。今のところ、石北峠、三国峠のいずれにも積雪はないと確かめてはいるものの、少しでも危険を感じたときには引き返す覚悟で臨みます。
コメント

晩秋の大地を行く 2020 - 中愛別駅

2020-10-20 11:27:10 | 北海道
一つ飛ばして中愛別駅を訪ねます。伊香牛と当駅には共通点がいくつかあります。交換設備があること、民営化後に駅舎が建て替えられたこと、駅前に郵便局があることなどです。しかし、市街と同じ高さにあった伊香牛駅に対して、こちらはの駅は国道から緩い坂を登った突き当たりに位置します。坂の下から見上げると、駅舎の背後に立ち上がる錦繍の山肌との取り合わせが印象的です。
コメント

晩秋の大地を行く 2020 - 伊香牛駅

2020-10-20 10:58:11 | 北海道
続いて訪ねるのは一つ隣の伊香牛駅です。三角屋根の駅舎を遠目に眺めれば、一昨日訪ねた志文駅に似ているようにも見えるものの、こちらは丸太小屋風に仕上げられており、玄関には駅名を入れた扁額が掲げられます。駅前には煉瓦積みの農業倉庫が二棟あり、郵便局も盛業中です。
コメント

晩秋の大地を行く 2020 - 将軍山駅

2020-10-20 10:38:07 | 北海道
釧路までの長丁場と、佳境で中断せざるを得ない条件に鑑み、寄り道を極力抑えて進みますが、最低限寄っておきたい場所はあります。続いて訪ねるのは将軍山駅です。
立派な駅名とは裏腹の、仮乗降場を出自とする無人駅です。踏切に接する形で、朝礼台と呼び習わされる短いホームが設置され、少し離れたところにはブロック積みの待合室が鎮座します。旧旭鉄管内ではおなじみの光景も、相次ぐ駅の廃止により、いずれ貴重なものとなるかもしれません。快晴下で記録できたことを幸いに思います。
コメント

晩秋の大地を行く 2020 - らーめん夢想

2020-10-20 09:36:32 | B級グルメ
「青葉」に寄らないという決断ができたのは、早朝から開いているラーメン屋が経路上にあると知ったからに他なりません。立ち寄るのは「らーめん夢想」です。
新旭川の駅前から国道39号線に並行する幹線道路を走っていき、環状線を過ぎた先に流通団地があります。店があるのはその一角に事務所を構える青果商の社屋の中と聞いていました。その情報を手掛かりに車を走らせると、通りから少し入った一角に、いかにも事務所然とした箱型の建物があり、勝手口に幟が立っていたという顛末です。
その先にあったのは、店というより事務所の食堂と呼んだ方がふさわしい簡素な空間でした。短冊の品書きにはラーメンだけでなく麺類一式と丼物、おにぎり各種も綴られます。情報源によると、かつて構えていた店から移転してきたとありました。新天地を求めていた当店が縁あってここに落ち着き、ついでに社員食堂も引き受けたというのが実態のようです。勤め人が黙々と朝食をとる雰囲気は、金沢港の厚生食堂にも通じ、こちらの好むところでもあります。
手堅く選んだのは正油ラーメン、はしごはしないという前提でチャーシューも追加しました。深めの丼に濃い色合いのスープを満たして縮れ麺と組み合わせ、七時の位置にメンマを置き、六枚のチャーシューを放射状に並べて、中央に葱を持った出で立ちは、手本通りの旭川ラーメンそのものです。「味特」に比べてスープの味がより濃いのは、酔った後と素面のとき、どちらで最もおいしく感じるかを追求した結果でしょう。満足感の高い一杯でした。

らーめん夢想
旭川市流通団地1条3-26-1 丸光浅田青果卸売内
090-6993-0682
600AM-1400PM(売切御免)
日祝日及び休市日定休
正油ラーメン650円
チャーシュー200円
コメント

晩秋の大地を行く 2020 - 新旭川駅

2020-10-20 09:10:39 | 北海道
九時半の開店を待って「青葉」に入るのが、旭川に泊まったときのお約束でもありますが、実質二時半までしか使えないという条件がそれを許しません。開店まで小一時間待つ余裕はなく、後ろ髪を引かれるものはありながら出発しました。まずは新旭川駅を定点観察していきます。当面は国道39号線を行く予定です。
コメント

晩秋の大地を行く 2020 - ホテルクレッセント旭川

2020-10-20 07:24:24 | 北海道
宿代をほとんどかけずに回れるのは、北海道の旅における特権の一つです。しかし、一連の騒動により宿泊業が大打撃を受けているこのご時世、宿に泊まって散財することも必要です。この先は宿泊主体の行程となります。昨晩世話になったのはホテルクレッセント旭川です。
以前ここに泊まろうとしたことがあります。予約サイトで調べた結果、繁華街に近くて料金もほどほど、それでいながら宿の格式は一枚上手と見受けられたからでした。ただし、そのときは直ちに投宿して出直すことが必須の条件だったため、慣れたところを選ぶという観点からサンホテルに落ち着いたという経緯があります。そのサンホテルが今回満室だったため、ようやくお鉢が回ってきた次第です。
駅前から北の方へ延びる通りが、東西を貫く国道39号線と交わる地点の北西側に建つ宿は、外観からして立派です。吹き抜けのロビーは堂々としており、最上階には展望大浴場もあります。その大浴場は別料金、なおかつ夜しか入れないというのが惜しいところではありますが、仮にユニットバスしかない宿だったとすれば、銭湯を探して立ち寄らざるを得ず、その手間と時間が加わっているところでした。それにより、「独酌三四郎」での席次に影響が出ていた可能性も考えると、宿に大浴場があるという条件は渡りに船でした。サンホテルに振られたときの駆け込み寺として、覚えておきたい一軒です。
コメント