日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

豊穣の能登を行く 2020 - 山海

2020-10-03 20:57:50 | 居酒屋
月と太鼓の鑑賞に一時間あまりを費やし、そろそろお客が引けてきそうな時間帯になってきました。しかし、「どんぶらこ」を恐る恐るのぞいてみると、カウンターは相変わらずの盛況です。二晩続けて機会を逃し、満を持して臨んだ今夜もこの結果ということであれば、縁がなかったと割り切るしかありません。物騒なご時世、初見の店に飛び込むのも憚られます。「山海」か「連」の二者択一という状況で、中一日となる前者に飛び込むという顛末です。
同じ道中で二度目ということになれば、趣向を変える余裕が出ます。刺身に続いて注文したのは、一昨日も品書きにあったいもだこなる一品です。その正体は、里芋と蛸を炊いたこの時期らしいものでした。しかし、富山でも金沢でも同じものを見た記憶がありません。華々しさこそないものの、能登の文化の独特さが改めて窺われる一品です。
次いで目に留まったのは、町野産自家米使用の張り紙でした。「連」の店主は漁師でもあると小耳に挟みましたが、こちらの店主は農家でもあるようです。収穫があらかた終わったこの時期なら、おそらく新米に切り替わっているでしょう。その自家米をいただいて締めくくるということで腹は決まりました。店主の十八番の一つでもある中華料理の中から、カニ玉飯に惹かれるものはありながらも、巡り巡って選んだのは、最もてらいのないおにぎりです。女将手製のおにぎりを、これもおそらく自家製だろうたくあんとともにいただいて席を立ちました。

山海
輪島市河井町6-21-12
0768-22-5254
1800PM-2200PM
日曜定休

千枚田
さしみの盛合せ
いもだこ
ふぐのしょうゆ漬
おにぎり
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豊穣の能登を行く 2020 - 御陣乗太鼓

2020-10-03 20:47:06 | 北陸
投宿したとき、今夜は御陣乗太鼓の実演があると女将から聞きました。観光客向けの見世物に本来興味はありません。しかし、朝市を訪ねたときにも申しましたが、一生に一度だけでも見るのであれば、騒動で人出が減った今こそ好機です。ひとしきり月を眺めると、その開演時刻になりました。しかも会場は岸壁のすぐ近くです。毒を喰らわば皿までの心境で見物したところ、これがついででは済まないほどの代物でした。
極めて単純にいえば、松明が灯る中、鬼のような覆面をした奏者が太鼓を叩くというものです。その太鼓は一つしかなく、二人、または三人で同時に叩くということを今更知りました。もうしばらく鑑賞していて気付いたのは、一人は規則的に休みなく打ち続け、他の奏者は抑揚をつけながら打っていることです。いずれもかなりの力強さと躍動感があり、奏者が交代していくのもそのためでしょう。六人の奏者が最終盤に勢揃いして最高潮に達し、20分近い上演が締めくくられるという顛末です。鼓の音が響く中、背後で月が昇っていくのも風流でした。印象的な一夜を演出してくれたことに感謝します。
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豊穣の能登を行く 2020 - 怪我の功名

2020-10-03 20:09:20 | 北陸
意中の店には振られたものの、怪我の功名とはいえるかもしれません。十五夜に勝るとも劣らない、見事な月を眺めることができたからです。
意中の店とはもちろん「どんぶらこ」です。宿を出てまっすぐ向かったのもここでした。しかし、一見すると空いているにもかかわらず、帰ってきたのは満席という無情の返答でした。予約満席、さもなければご時世に鑑み札止めにしたということでしょうか。いわば梯子を外されたことで、直ちに次へという気分でもなくなりました。しかし、結果としてはこれが分かれ道となりました。折しも昇ってきた月が、絵になるとすれば岸壁の方だろうと思って向かったところ、お誂え向きの眺めが広がっていたのです。
東の空を眺めると、正面には高い山が連なります。その上空のほどよい高さに月が浮かび、鏡のような凪いだ水面に月明かりが映っていました。しかも心憎いのは、いかにも秋らしい薄雲が出ていることです。薄雲が刻一刻と形を変え、月も次第に昇っていくため、いつまででも眺めていられそうな気がしてきます。しかし、雲一つなければ単調な眺めになっていたでしょう。雲があるのとないのとでは大違いです。「どんぶらこ」には振られたものの、この月によって全てが報われました。
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豊穣の能登を行く 2020 - 三連泊

2020-10-03 19:18:43 | 北陸
結局今日は一本道を行って戻っただけでした。出発から1420kmを走破して、輪島の街に舞い戻りました。予定外の三泊目に突入です。
金沢か富山まで行くつもりだと今朝方は申しました。しかしそれは、あちらへ向けて半島を南下していくという前提があってのことでした。一向に進まなかったことにより、もう一日と悪魔がささやき始めました。二晩続けて呑み屋が一軒限りとなったことにより、「どんぶらこ」という切り札が温存され、もう一泊しても不足はない状況だったことから、「迷ったら買え」の原則に従った次第です。
輪島に三連泊したのは、さらなる延長を視野に入れてのことでもあります。前回の延長は、嵐の中を帰るのが面倒という消極的な理由に基づいていました。しかし、再度の延長を思いついたのは、相棒の通算23万kmをできるだけよい形で迎えたいという積極的な理由によります。出発前はまだ先と思っていた節目まで、今の時点であと900km少々です。自走で帰れば500kmは下らないことを考えると、その時点で残りが400kmほどになります。一泊二日の小旅行でも達成されそうな距離です。しかし、場合によっては帰りの長距離移動の最中にもなりかねません。深夜の長距離移動となる復路には、できることなら重ねたくないのが本音です。その結果、通算20万kmを達成したときのように、旅先に車を置いて少しずつ距離を稼ぐのも一案という方向に傾きました。明日帰るという選択肢を完全に放棄したわけではないものの、「迷ったら買え」の原則通り、さらに一週延長する可能性は高いと見込まれます。
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豊穣の能登を行く 2020 - 名脇役

2020-10-03 16:31:39 | 北陸
能登線の遺構を辿っていくつもりが、予想外の好天によって事情が変わりました。わずかに三駅進んだだけではありますが、これ以上足掻いたところで稼げる数は知れています。むしろこの晴天を生かすべきと思い立ち、見附島まで戻ってきたところです。
昨日の眺めも決して悪くはなかったのです。しかし、適度に雲が出たときの眺めを知っていただけに、雲一つない青空をかえって物足りなく感じました。曇り空が俄に晴れた今ならば、これぞ真骨頂というべき眺めになるだろうと踏んだのでした。その狙い通り、遠くの方には薄雲が漂う一方で、上空には綿のような雲が漂い、眺めが刻一刻と変わります。改めて思うのは、白い巨岩が主役のようでありながら、岩よりも空を大きく入れた方が断然絵になるということです。さりとてこの空だけでも様にはならなかったでしょう。上空に漂う雲は、主役の岩を引き立てる名脇役といってよいかもしれません。
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豊穣の能登を行く 2020 - 恋路海岸

2020-10-03 15:15:31 | 北陸
珠洲市街に入ってからは両側に建て込んだ場所が多くなり、海を間近に望める場所はわずかでした。久々に広がるのが、その名も恋路海岸です。曰くありげな駅名も、この景勝地に由来するものでした。
波打際へ出てみると、来し方の海岸には見附島が突き出しており、その右側には半島が禄剛崎へと延びています。ただし、海が広くて高さもないため、見晴らしこそよいものの、写真に撮っても絵になりにくい景勝地の典型と見受けられました。例外があるとすれば、適度に雲が出たときだろうと思ったところ、図らずも空が晴れてくるという経過です。見附島に比べてしまえばささやかとはいえ、浜辺からほどよい距離を置いた場所には松の木が林立する岩場もあります。その岩場を手前に置いて、空を大きく写し取りました。
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豊穣の能登を行く 2020 - 恋路駅

2020-10-03 14:27:48 | 北陸
宗玄のトンネルを抜けた先に現れるのが恋路駅です。両側をトンネルに挟まれた築堤上には、ホームが現役当時のままの姿で残り、沿道には駅への案内板も建ちます。トロッコの乗り場として、今なお用途があるためでしょう。
看板をよくよく見れば、要予約といっても事前の予約が要るわけではなく、電話をかければ係員が来てくれるという仕組みのようです。お姉さんがホームに常駐しているということは、先客に便乗する形で乗れてしまうのかもしれません。しかし、このご時世にもかかわらず、何だかんだでお客が切れ目なく来ます。順番を待つ余裕はないため、後ろ髪引かれるものはありながらも見送りました。
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豊穣の能登を行く 2020 - 宗玄酒造

2020-10-03 13:02:40 | 酒屋
切り崩された築堤は、鵜島駅の上り方で復活します。しかし、次に道路と交差していた地点へ向かうと、またもや一変していました。車を降りて見回したところ、下り方には橋台が、上り方にはトンネルの坑口があり、その間の築堤が100mほど崩されて、工場の敷地に飲み込まれています。その工場が宗玄の蔵だと気付いたとき、全ての謎が解けるという顛末です。
看板商品の一つでもある「隧道蔵」は、読んで字のごとくトンネルの中で熟成された酒です。上り方に見えるのが件のトンネルでしょう。それとともに知ったのは、酒の貯蔵に使うだけでなく、トロッコも走らせているということです。ただし予約が必要で、残念ながら今回乗ることは叶いません。代わりに酒と粕を持ち帰ります。

★宗玄酒造
珠洲市宝立町宗玄24-22
0768-84-1314
800AM-1700PM(土日 900AM- )
年末年始休業
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豊穣の能登を行く 2020 - 鵜島駅

2020-10-03 12:34:39 | 北陸
南黒丸の先に短いコンクリート橋が残っているのを車窓越しに一応確認。線路は再び狭い平地の山側を築堤とトンネルで行く線形に変わります。トンネルを抜けた先にあったのが鵜島駅です。
当駅の変貌ぶりは南黒丸をも上回ります。駅の跡地が築堤ごと切り崩され、山側を走る国道と集落を接続する道が跡地を貫いているのです。切り崩された距離はざっと100mかそれ以上といったところでしょうか。かなりの大工事だったことが一目瞭然です。
そのようなわけで、駅の跡地は跡形もなく失せたものの、築堤が切り崩される直前には、沿線で何度も見てきたおなじみの橋台が残っています。トンネルを抜け、築堤を通ってきた線路が道を跨ぎ、その先に駅があったところ、跨道橋の先が根こそぎ切り崩されたということです。その橋台の手前には鳥居、奥にはお宮が建っているため、ここにあった橋は参道を跨いでいたということになります。一風変わった遺構でした。
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豊穣の能登を行く 2020 - 南黒丸駅

2020-10-03 11:54:31 | 北陸
線路の跡は一瞬だけ途絶えてから復活し、築堤となってしばらく続きます。地平の高さに下りた場所から眺めると、前後には未舗装の農道が続いていました。踏切だったと思しき場所には、駅の接近を示すための標識が、現役当時とは違う方角に建っています。しかし、その位置から当然見えて然るべきかつてのホームが見当たりません。線路跡の農道を辿っていくと、驚いたことに駅の跡地は茫々たる茂みと化して、影も形もありませんでした。
何かに転用する目的があったというならともかく、わざわざ更地にした後で、草茫々のままにするのは不可解です。釈然としないものを感じて振り返ると、ソメイヨシノらしき樹木が並んでいる一帯が見えました。そちらへ歩いて向かったところ、上戸駅と同じ様式の待合室が、停止位置の標識とともに茂みから顔を出していたという顛末です。線路の跡そのものと思っていた農道は、実は元からあったものらしく、実際にはその脇の茂みに線路が通っていたのでした。しかも、藪の背丈が高すぎて、運転中の姿勢で眺めると待合室が隠れてしまったということのようです。雑草の繁殖力がここまで凄まじいとは思いませんでした。
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豊穣の能登を行く 2020 - コンクリート橋

2020-10-03 11:13:31 | 北陸
昨日走った経路を引き返してきました。引き続き能登線の跡を辿ります。昨日とは対照的な曇り空が残念ではありますが、線路の跡を辿る上では、陰影のできにくい条件はむしろ好都合です。雨さえ降らなければよしということにしておきましょう。
鵜飼駅を出た直後に現れたのは、三本の橋脚を持つコンクリート橋です。完全な形で現存する橋としては、同じく鵜飼の手前にあった鉄橋に並ぶ遺構ということになります。しかし、鉄橋を渡った先には住宅が建っており、その先も背丈以上の藪が茂ります。よく見ると、枕木で作った柵と境界標が残っており、線路が通っていた位置の特定は一応可能です。しかし、ここまで変貌してしまうと、列車は二度とやってこないという当たり前の事実をも再認識させられます。一抹の淋しさを覚える光景です。
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豊穣の能登を行く 2020 - 太っ腹

2020-10-03 09:44:22 | 北陸
強く思うところがあり、横文字混じりの振興策には便乗しない方針を採りましたが、一部だけでも取り返すことができました。昨晩宿泊したところ、燃料の割引券をいただいたのです。それも、1リットルにつき30円も値引かれるという太っ腹でした。輪島市の主導により、宿泊客に配布しているもののようです。お上による振興策を是としないのは、需要喚起を口実にして、旅行代理店、予約サイトの運営会社を始めとする大企業の利権を守ろうとしているのがあけすけだからです。民宿を含む市内の宿を網羅しているものならば、無下に断る理由もありません。ありがたく恩恵に与ります。金沢からそのまま走って帰るはずが、土壇場の逆転劇で能登へと転戦し、燃料を八割方使い切っていた状況では、渡りに船でもありました。おかげで千五百円以上が浮いたことになります。
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豊穣の能登を行く 2020 - 新橋旅館

2020-10-03 07:58:09 | 北陸
昨晩輪島に戻ったとき、来し方に十六夜の月が昇っていました。あの月を眺めつつ、キャンプ場でもう一晩明かすのも悪くはなかったものの、宿泊業への支援も兼ねて宿代を奢りました。世話になったのは二年ぶりの再訪となる新橋旅館です。
例によって日が暮れてから予約サイトで調べたところ、輪島の市街に限っていうとルートインしか候補がありませんでした。しかしこのご時世、平日にあらゆる宿が埋まったとは考えにくいものがあります。予約サイトの〆切を過ぎただけだろうと見て直接一報入れたところ、どうにか飛び込めたという結果は、金沢で「きくのや」に泊まったときと同様になりました。
横文字混じりの振興策から除外されてきた差別的な取り扱いも、ようやく撤廃されました。予約サイトでルートインを押さえれば、そちらの方が安上がりではあったのでしょう。しかし全く惜しいとは思いません。そもそも申請するつもりがなかったからです。強きを助け弱きを挫く卑劣な政策には、一切同調しないと再三主張してきました。いくばくかの給付を餌に片棒を担がされるより、世話になってきた宿に直接還元したかった次第です。
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豊穣の能登を行く 2020 - 四日目

2020-10-03 06:02:09 | 北陸
おはようございます。昨晩は宿に戻るや倒れ込み、そのまま眠りに落ちました。車中泊の翌日だったにもかかわらず、日中はそこそこ健闘したものの、一杯やったところで疲れが噴出し、宿へと戻る足取りをやたらに重く感じました。もう一度月見をしたいところではありましたが、あの状態で車中泊をするのはさすがに無理だったでしょう。宿で一晩休めたのは助かりました。
快晴は一日で終わり、天候は明日へ向かって下り坂と予想されます。ただし、今日に関する限り雨の心配はありません。昨日に続き能登線の遺構を辿っていき、金沢か富山のいずれかに一泊する案が今のところ有力です。
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