日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

春まだ浅い北陸へ 2018続編 - 山海

2018-03-10 22:42:22 | 居酒屋
「連」で腹八分目になったとき、品書きにある「もずく雑炊」なるものが気になりました。それで締めくくれば過不足がなかったでしょう。しかし、初めての土地ともなるとつい欲張ってしまうのが人情というものです。時間からして選択肢は自ずと絞られ、もう一軒の推奨店である「山海」を訪ねました。

輪島の町は想像していた以上に静かです。改めて自分の足で歩いてみても、「居酒屋王国」どころか繁華街らしきものさえ見当たらず、商店や住宅に混じる形で飲食店がまばらに散らばっているだけでした。その明かりも途切れ、いくら何でもここに呑み屋はないだろうと半信半疑になりかけたとき、通りから左へ折れたところに番組で見た雑居ビルが忽然と現れました。他の店はスナックばかりで、扉の向こうからは酔客の歌声が漏れてきます。奥にあるこの店にも暖簾はなく、スナックから転用したかのようなドアノブ付きの玄関は、一見すると勝手口のようにしか思えません。ここだと分かっていても一瞬躊躇させられる店構えです。時間からして早仕舞いもあり得るかと覚悟しつつ扉を開けると、小上がりにはまだ先客がおり、首尾よく入店という顛末です。

居酒屋を標榜する「連」に対し、こちらの屋号には大衆割烹とあります。外観こそやや怪しげながらも、店主と女将が二人で仕切る店内は、その名の通りの大衆割烹でした。怪しげな雑居ビルの店構えと、大衆割烹然とした店内の設えの対比は、高松の聖地「美人亭」のようでもあります。
カウンターの背面にあるガラス戸つきの食器棚に品書きが一品ずつ貼られ、カウンターの突き当たりにも小さな短冊の品書きが並んでいて、中央に鎮座するネタケースには様々な魚介が整然と収められています。まず目に留まったのは春を告げるさよりですが、それ以外の魚もぴかぴかに光ってうまそうです。これをむざむざ見過ごすこともできず、二軒目にもかかわらず盛り合わせを注文すると、サザエ、ガスエビ、アオリイカ、平目、ノドグロ、ホウボウ、それに目当てのさよりを入れた七点盛りが出てきました。もちろん味についても申し分ありません。次いで注文したいしる鍋は、能登特産のいしるを使った出汁で茄子、大根、アオリイカとガスエビ、それに新わかめを煮た、肴にはお誂え向きの一品でした。

放映開始から五年にわたり、月に二回の割合で制作された教祖の番組も、今週の放送で120回目を迎えます。それだけの回数を重ねると、教祖といえども持ち駒が尽きてくるということか、最近では初見の町が紹介されることも増えてきました。この場合、教祖御自ら長年通った店ではなく、人伝に聞いた店を取材する形になるため、教祖の推奨店としては首を傾げるような店がいくつか出てきます。佐渡の店が二軒紹介されたときも、是非行ってみたいと思うまでには至らず、昨年訪ねたときは町に泊まらずキャンプをしました。
去年の夏に放映された輪島の回についても、やや懐疑的な部分はありました。教祖の推奨店らしい老練さまでは感じられず、むしろ「酒場放浪記」にでも出てきそうな、悪くいえばありふれた店のようにも感じられたからです。しかし、なまじ評価が高いとこちらの期待値も上がってしまい、結果としてその期待以上の感動までは得られないという経験をしばしばしています。過剰な期待をせずに臨み、その期待を超える結果だったという点では上々といってよいでしょう。想像していたのとやや違う形だったとはいえ、「居酒屋王国」の名に偽りなしと実感した次第です。

山海
輪島市河井町6-21-12
0768-22-5254
1800PM-2300PM(LO)
日曜定休

酒三合
刺身盛合せ
いしるなべ
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春まだ浅い北陸へ 2018続編 - 連

2018-03-10 21:25:56 | 居酒屋
教祖の番組で輪島が取り上げられたとき、冒頭で「居酒屋王国」なる副題の種明かしがありました。教祖御自ら名付けたわけではなく、地元の情報誌の特集を拝借したものだったのです。とはいえ、居酒屋王国とは聞き捨てなりません。実際に乗り込むまでは、そこそこの繁華街があって、素通りしがたい呑み屋が何軒かあるのかもしれないと思っていました。しかし、着いた時点でそれは勝手な思い込みにすぎなかったと悟りました。街灯以外の明かりがほとんどなく、行き交う車も少なくて、離島の港町にでも来たかのような雰囲気だったからです。ここは四の五の言わず教祖の導きに従うべきだろうと思いました。
問題は、二軒紹介された店の中からどちらへ行くかでした。ここで決め手となったのが、宿の女将の奨めでした。これから呑み屋へ行くと話したところ、それならここへといわれたのが、奇しくも教祖が紹介した「連」だったのです。かくして輪島での一軒目は決まりました。

教祖が手にしていた情報誌の表紙を飾ったのもこの店です。女将からは、電話一本入れてから行った方がよいという指南を受けました。おそらく市内屈指の人気店なのでしょう。結局電話はせずに乗り込むと、背丈ほどある下駄箱に、数え切れないほどの靴が収まっていました。静まりかえった町の中で、ここだけが別世界のような賑わいです。しかし、幸いにしてカウンターは先客二名と落ちついており、首尾よく入店と相成りました。
靴の数からしてもかなりの大店なのは明らかですが、カウンターは他の区画と仕切られていて、一人酒を酌むにも好都合です。日替わりの肴は左の壁際の黒板に書かれ、それ以外にも手元の冊子の品書きが。品数の豊富さと安さは、語弊を恐れずいうなら金沢の「わり勘」に通ずるものが感じられます。そのように感じるのは、教祖の推奨店にありがちな老練さこそないものの、「酒場放浪記」にでも出てきそうな地元客御用達の大衆的な雰囲気が共通しているからでもあります。もし自分で探り当てれば心底感動していたでしょう。
大衆的と申しましたが、安いだけの店ではありません。冷酒を所望したところ、番組にも登場した輪島塗のぐい呑みが出てきました。さらには刺身の皿も醤油の小皿も漆器です。ふぐが一推しされるところは能登らしく、カワハギの糠漬けはへしことも一味違う逸品でした。金沢とも富山とも全く違う食文化は、離島の酒場のようでもあります。はるばる訪ねた甲斐はあったと実感させてくれる一軒です。


輪島市河井町24-17-21
0768-22-8414
1730PM-2300PM
木曜定休

千枚田
刺身盛合せ
ふぐの唐揚げ
皮はぎぬか漬
みそ汁
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春まだ浅い北陸へ 2018続編 - 輪島の夜

2018-03-10 21:04:24 | 北陸
交通量のほとんどない国道を快走し、出発からの走行距離が800kmに達したところで輪島に着きました。投宿して風呂から上がったところです。
風呂には夜通し入れるとのことであり、後回しにして呑みに行く手もあったのです。しかし、あまりに寒くて熱い風呂に浸からずにはいられませんでした。日中でも7度までしか上がらず、日が暮れた時点では4度に下がって、輪島市街は氷点下です。先週末の暖かさから一転、季節が巻き戻されたかのような寒い夜になりました。ただし、日中の透明な青空は、鉛色をした冬の空とも違いました。これが能登の早春なのかもしれません。

能登へ行こうと思い立ったのは、車を現地に置いている今回がまたとない機会だからですが、もう一つの決め手として、昨年教祖の番組で輪島が紹介されたことが挙げられます。そもそも能登に泊まろうなどという発想が全くなかったところへ、輪島の店が紹介されたことで、能登が潜在意識の中に刷り込まれ、今回唐突に思い浮かんだという経緯があります。
それ以外に何の手がかりもなく乗り込んだ輪島の町ですが、思った以上に静まりかえっているというのが第一印象で、この町に果たして呑み屋があるのかと疑わしくなってきます。時間的にいっても、くまなく歩いて店の当たりをつける余裕はありません。番組で紹介された店に加え、宿の女将に勧めてもらった店もあるため、そのいずれかを訪ねてみるつもりです。
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春まだ浅い北陸へ 2018続編 - 大島海水浴場

2018-03-10 18:29:23 | 北陸
千里浜に着いてから少し経ったところで雲が厚くなってしまいました。しかし、西の空の彼方が晴れているのが見えました。先週の経験からしても、日没間際に夕日が一瞬顔を出すだろうと予想しました。夕景が絵になる場所を求めて国道沿いを走っていくと、何とも半端な場所で夕日が沈んでいくのが見えてきました。さらに走れば頃合いの景勝地があるとはいうものの、そこまで走っていては間に合いそうにありません。切羽詰まってカーナビを見ると、国道から折れて小さな岬へまっすぐ延びる道がありました。ここしかないと咄嗟に閃き、カーナビを頼りに海岸へたどり着くと、夕日が水平線に接したところでした。そのまま水平線の彼方に日が沈むのを見届けるという顛末です。
カーナビには大島海水浴場とあります。小さな岬の南側に弓形の砂浜があって、そこから岬と西の空が重なるのを一望できるという寸法です。高さはそれほどでもないものの、適度に雲があるため広がりが出て、岬の周囲に露出した岩礁も夕景を引き立てるのに一役買っています。咄嗟に駆け込んだ割には上出来といってもよい眺めです。適当に訪ねても外れがないという点では、讃岐うどんのようなものともいえばよいでしょうか。能登に数多散らばるであろう夕日の名所の中で、今回立ち寄れるのはわずか二ヶ所にすぎませんが、明日の夕景も楽しみにしておきましょう。
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春まだ浅い北陸へ 2018続編 - なぎさドライブウェイ

2018-03-10 17:04:45 | 北陸
今回が初見となるのと里山海道に対し、以前も走ったのが千里浜のなぎさドライブウェイです。視界の彼方まで続く長い長い砂浜を自走できる、全国でもここだけという触れ込みの海岸で、今回是非再訪したい場所でもありました。
最寄りのICが近付くと通行不可の案内が出たため、一旦通り過ぎました。しかし、その先のPAから海岸を見渡すと、羽咋の方から砂浜を走ってくる車が見えました。もしやと思い次のICで下りると、果たして通行可に変わっていたため、そのままドライブウェイを南下してきたところです。
以前走ったときはごく平凡な曇り空で、よい眺めとはいえ画竜点睛を欠くものがありました。しかし、今日は西日が傾いていくお誂え向きの条件です。しかも、快晴ならただ眩しいだけになりかねないところ、雲が適度に西日を遮ってくれます。これならどちらの方向へ走っても楽しめるでしょう。起点まで往復してこようかと思っています。
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春まだ浅い北陸へ 2018続編 - のと里山海道

2018-03-10 15:51:38 | 北陸
能登といえば、高速道路並みの高規格道路が縦横に走る、半島としては最も道路事情がよい地域の一つです。それも、無味乾燥なバイパスなどではなく、眺めのよい快走路という触れ込みだったため、今回能登へ行くにあたって楽しみにしていました。まずはのと里山海道をひた走り、高松で小休止をとっています。
海沿いと里山が半々の路線の中で、まず海沿いを半分ほど走ってきたことになりますが、聞きしに勝る快走路です。海沿いを貫く高規格道路といえば、思い出すのは西湘バイパスですが、海の広さはあちらをも上回るような気がします。そのように思うのは、海岸線があちらよりも長いだけでなく、砂丘の上を道が通っているため高さがあり、なおかつ適度に波が立っているからでもあるのでしょう。交通量もほどほどで、速度についても思いのままという状況のところ、あまりに眺めがよくて一気に駆け抜けるのがもったいなく思われ、あえて速度を控えめにして走りました。
特筆すべきは、この道が全区間無料で開放されているということです。対面通行にもかかわらず臆面もなく料金を徴収する高速道路も多い中、片側二車線の好眺望のバイパスがどこまで行っても無料とは恐れ入ります。この道が鉄道を廃止に追い込んだかと思うと複雑な心境ではありますが、それはさておき残りの区間も楽しみです。
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春まだ浅い北陸へ 2018続編 - 大野の町並み

2018-03-10 14:56:21 | 北陸
能登へ向かって走るつもりが、金沢市内で足踏みしています。漁港の近くに曰くありげな町並みが現れました。
一帯を大野というらしく、日本海の風雪を遮る松林の高台に沿った形で、南西から北東の方へ町並みが続いています。いかにも日本海の漁港らしい無塗装の羽目板の民家に加え、醤油の蔵がいくつもあって、金沢の城下町とは全く違う成り立ちなのが一目瞭然です。
一角に建つ案内板には、古くから北前船の寄港地として栄え、藩主の奨励により醤油の醸造が盛んになったとあります。自身知る中でいうなら、富山市街に対する岩瀬の町のようなものなのでしょう。しかし、あちらと違って観光客の姿はなく、静かな雰囲気はむしろ生地の町に通ずるものです。またしても盲点があったことに気付かされました。
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春まだ浅い北陸へ 2018続編 - 厚生食堂

2018-03-10 13:21:33 | B級グルメ
能登は盲点であり未踏の地だと申しましたが、金沢市街にも盲点があります。港の方へ行ったことが一度もないのです。
経路上ということもあり、今回初めて立ち寄ると、漁港の一角に頃合いの食堂がありました。厚生食堂という名には聞き覚えがあります。休日は観光客で長蛇の列ができる有名店のようです。しかし、半ばあきらめつつも店先へ向かうと、幸いにして待ち客の姿はなく、先客が出て席が空いたところに収まりました。
屋号からして、元々は漁業関係者向けの食堂なのでしょう。「船員厚生食堂」の暖簾を掲げた厨房との仕切壁には、丼物とうどんを中心にした品書きの短冊が並んでいて、魚については日替わりのホワイトボードに書かれていました。ただし、高価な海鮮丼の類は一つもなく、千円の海鮮丼の他には揚げ物の定食と刺身、フライの単品しかありません。観光客に迎合しない、虚飾なき漁港の食堂然とした品書きは好ましいものがあります。
その中から北陸らしさが決め手となって選んだのはメギスフライ定食800円也。気前よく五本盛られたメギスのフライと、ぎっしり詰まった丼飯は、まさに船員御用達です。お姉さん方が小気味よく立ち回る店内の雰囲気も上々。観光客で混み合う様を想像したところが、これは思わぬ収穫でした。

厚生食堂
金沢市無量寺町ヲ51
076-268-1299
1100AM-1400PM
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春まだ浅い北陸へ 2018続編 - 野町駅

2018-03-10 12:09:19 | 北陸
金沢駅前からバスに乗ろうとしたところ、見覚えのある番号がやってきました。前回と前々回、野町から金沢駅まで乗ったのと全く同じ車両です。今度は野町でバスを降り、車を引き取って出発します。
このことからもお分かりの通り、二度にわたる一時帰京の拠点にしたのは野町駅前の駐車場でした。一見半端な場所を選んだのは、金沢駅前よりも安かろうと見込んだ上のことです。野町に車を止められれば、「わり勘」で一杯やってから駅に向かえばよく、流れに無駄がないという点でも好都合でした。こうして現地へ乗り込んだところ、駅前に一日最大500円の駐車場があったため即決した次第です。
この駐車場にはよい点がもう一つありました。野町の駅に接した工場の正門の前にあり、駅前から守衛所からも丸見えになっているため、防犯上もきわめて理想的なのです。15年で20万km走った車が、よもやいたずらされたり盗まれたりはしないだろうと思っても、旅先に一週間置くというのは心理的に落ち着きません。しかし、24時間監視されているかと思うと、今回は安心感がありました。この駐車場を見つけたことが、二度目の延長を後押しした要因の一つでもあります。今回金沢に戻ってくることはなさそうですが、何かにつけて使えそうな駐車場でした。
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春まだ浅い北陸へ 2018続編 - 雪解け

2018-03-10 10:06:45 | 北陸
只今福井を発車しました。金沢まであと40分です。
先週末、汗ばむ陽気で雪がたちまち解けていくのを目の当たりにして、次週戻るまでには跡形もなく消え去るだろうと思いました。それだけに、木之本を過ぎたところで残雪が現れたのは意外でした。田畑を覆っていた雪こそほぼ解けたものの、日陰や線路際には積もったままの雪が所々残っていて、かき集められた雪が背丈以上に積み上がっているところも相当数あります。多少なりとも寒さが戻ったためでしょう。
とはいえ、飛騨からたどり着いた先々週との眺めの違いは明らかです。先週末と比べても、伊吹山の雪解けが目に見えて進むなど、日毎に春が迫っているのをありありと実感しています。週毎に移り変わる車窓といえば、印象に残っているのは田植えの時期の東北ですが、雪解けが進んでいくのを見届けたのは初めてです。貴重な経験となりました。
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春まだ浅い北陸へ 2018続編 - しらさぎ1号

2018-03-10 08:08:42 | 東海
名古屋からは「しらさぎ」に乗り継いで金沢へ向かいます。
混むとしても米原から先なのは経験上分かっていたため、悠然とホームに向かったところ、自由席がほぼ埋まっているのに面食らいました。先頭車の前の方が空いていて事なきを得たものの、発車までにほぼ埋まるであろうことは明らかでした。十分に空いている状況ならば、まず御嶽山と伊吹山が見える右側に着席し、米原で方向転換する間に白山が見える反対側へ移るところですが、これでは途中で席を移るわけにも行きません。米原までが一時間、そこから先が二時間という配分に鑑み、米原から先の車窓を重視して左側に着席しました。
出発時には曇っていて、富士山は影も形も分からなかったものの、豊橋を過ぎた頃から青空が広がり、彼方には雪化粧した養老山が見えています。平日五日のうち三日が雨という散々な一週間でしたが、またしても週末に限って晴れるという幸運に恵まれました。この先の車窓も楽しみです。

★名古屋750/しらさぎ1(1M)/1048金沢
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春まだ浅い北陸へ 2018続編 - のぞみ151号

2018-03-10 06:15:28 | 関東
始発の一本後の新幹線で旅立ちます。本日は博多までの運行です。新大阪止まりの日も多い中、博多まで延長されるということは、乗客が増えるという想定なのでしょう。実際のところ、これまで同様の場面ではいずれも混み合い、さらに二本後の広島行に流れました。またも混むかと身構えたものの、幸いにして杞憂に終わり、三列席はがら空き、二列席も窓側が半分ほど埋まっただけで東京駅を出るという結果です。これなら名古屋まで隣にお客が来ることはないでしょう。一本でも見送れば、「しらさぎ」への乗り継ぎが一時間遅れる状況だっただけに助かります。

★東京606/のぞみ151(7151A)/742名古屋
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