日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

名もなき花

2019-12-10 23:13:09 | 旅日記
長旅が落ち着き次第調べてみようと思っていたのが、北海道で見かけた花畑のことです。刻一刻と傾く北国の短い日に追われるかのごとく、車を走らせていたとき、季節外れの菜の花畑が広がっているのを見て、思わず車を止めました。まさかと思いつつ、通りすがりの農家の御方にたずねたところ、帰ってきたのはリョクヒという聞き慣れない言葉です。直後に調べてみたところ、漢字では緑肥と綴ることが分かりました。読んで字の如く肥料の一種で、生育次第刈り取り、畑の肥やしにするのが目的ということのようでした。菜の花とは対極にあたる晩秋に開花した後、すぐ刈り取られて埋められる名もなき花の存在が、あれ以来片隅に残っていた次第です。
一昔前ならともかく、今や携帯端末であらゆる事共を調べられる時代です。あのとき聞いたアブラナ科という手がかりも含めて調べたところ、行き着いたのはキカラシでした。甜菜の前作として、道東では7月から8月に植えられるという説明からしても、おそらくこれで間違いないでしょう。しかしそれ以上の収穫は、緑肥なるものの役割を知ったことです。旅先でしばしば見かける向日葵畑、コスモス畑の類を、休耕田か何かを使ったものとばかり思っていましたが、あれらは景観緑肥といって、見た目と実益を兼ねたものだったようなのです。そうと知ってから改めて眺めると、稲が刈られた後の田圃で、芝のような短い草が並んでいるのに気付きました。あれもおそらく緑肥でしょう。今更ながらの発見ではありますが、これからは車窓を見る目が若干ながらも変わりそうです。
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