一年ぶりの新世界にやってきました。新世界の代名詞といえば串カツですが、本日はこれまた大阪らしい正統派の大衆酒場に飛び込みました。訪ねるのは「酒の穴」です。
大阪の居酒屋といえば、教祖が近年激推ししている若い店主が造った新進気鋭の店が思い浮かびます。しかし、それらの店は眼中にありませんでした。今回はいわゆる「コテコテ」の店を選びたかったからです。
去年大阪に立ち寄ったのは、やはり和歌山からの帰り道、最終の新幹線が出るまでのわずかな時間でした。今日にもまして時間が厳しく、実質30分ほどしか捻出できなかったため、串カツの店で軽く一杯ひっかけて終了という、「立ち寄った」と称するにはおこがましいほどのささやかさでした。つまり、大阪を訪ねるのは今回が実質二年ぶりとなるわけです。これだけの間が開けば、大阪の文化そのものというべき店を選びたくなるのが必然であり、「明治屋」の次をどこにすると考えたとき、一も二もなく浮かんできたのは大衆酒場でした。そのような大衆酒場が多々ある中、経路上無駄なく立ち寄れるのが決め手となって、この店を大阪での二軒目に選んだ次第です。
三年前に訪ねた「
天満酒蔵」と同様、ここは「
酒場放浪記」で知った店です。粒が揃った教祖の推奨店に対し、この番組に登場する店は玉石混淆ですが、関西に関する限りは心惹かれる名酒場がいくつも登場しており、この店も例外ではありませんでした。
「天満酒蔵」が白鶴の直売所なのに対し、こちらの看板には菊正宗直売所とあります。短冊の品書きに「一級酒」とあるのが定番の上撰で250円、「特級酒」こと特撰でも350円という値段から推して知れるように、肴は安いものなら100円から、高いものでも300円といったところが相場で、予算を気にせず安心して飲み食いできるところはまさに直売所です。酒と串カツの品書きは短冊に、おでんと鉄板焼きは張り紙に、その他の品はホワイトボードに書き込まれて、品数の多さには目移りしてしまいます。ガラスケースに並んだ惣菜は、見れば一目で分かる直截な品々だけに、それを見ながら注文した方が早そうです。
コの字のカウンターは奥方向に長く、外周には丸椅子が並んで、足下は腰壁と同様細かいタイルで仕上げた年代物です。内側には玄関側からおでん鍋、揚場、鉄板、冷蔵庫、板場とコンロが配置され、一番奥で店主が包丁を捌き、中程でおばちゃんが接客をこなし、手前でもう一人の料理人が焼き物揚げ物を調理しています。かなりの席数があるにもかかわらず、滞ることなく注文が流れていくのは、機能的なカウンターの配置と熟練した三人組のおかげでしょう。一人客が入れ替わり立ち替わり訪れる雰囲気も好ましいものがあります。そんな人間模様を観察するのも楽しく、まさに大衆酒場の真骨頂というべき名店でした。
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酒の穴
大阪市浪速区恵美須東2-4-21
06-6631-1845
1000AM-2100PM
木曜定休
特級酒
おでん二品
鉄板焼二品
たいの子
こいも