日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

九州沖縄縦断ツアー 2014 -博多べい-

2014-11-04 19:57:10 | 居酒屋
中洲で呑むといいながら、その中洲の歓楽街を通り抜け、櫛田神社に向かって博多川のほとりを歩き、境内を通り抜けて本日の一軒目にやってきました。その名も「博多べい」です。
以前も語った通り、自身博多の街で最も心惹かれるのが、那珂川を表とするなら裏というべき博多川の周辺です。那珂川とは対照的な、控えめの明かりが水面に映り、その畔では櫛田神社の御神燈が夜通し灯り、戦災を逃れた古い町家が、古式ゆかしい町名とともに残って、猥雑な繁華街とは全く違う情緒に満ち満ちています。そんな昔ながらの博多の街に、行きつけの店を持てれば最高だろうという考えがかねてからありました。そして、それに最もふさわしいと思える店にも、ある程度目星をつけてはいたのです。それが他ならぬこの店でした。しかし、以前満を持して乗り込もうとしたときには休業で振られ、再挑戦を図るも今度は看板で振られてしまい、果たせないまま今日の今日まできてしまったというのが実情です。
二度あることは三度あるの格言が脳裏をよぎる中、店先の窓から中をのぞくと、カウンターには空席がたしかにあります。その空席が予約席でないことを願いつつ木戸をくぐると、以前振られたときに見覚えのある店主と、若い助手とが迎えてくれ、三度目の正直にしてついに宿願達成と相成りました。

そこまで恋い焦がれたこの店の、何がそこまでよいかといえば、まずはその立地でしょう。櫛田神社の山門と鳥居の真正面に、古い町家に混じって建つ狭い間口の二階建ては、いかにも心惹かれる店構えをしています。正方形の大きな窓から、一階にカウンター、二階に座敷があるのは承知していました。そして今回初めて乗り込むと、見かけと同様、あるいはそれ以上に細長い空間であることに気付きました。何しろカウンター席に腰を下ろせば、壁に背中がつきそうです。食器棚がなく、皿、鍋、桶の類がカウンターの上に並んでいるのも、食器棚を造れないほど間口が狭いことを物語っています。しかし、塗り壁で仕上げられほどよい明かりに照らされた、ジャズピアノの調べが流れる店内は落ち着いた雰囲気で、一人酒を酌むには申し分ありません。
そんなカウンターの造りを鑑賞するのもそこそこに、一杯目の注文を聞かれたため、まずはエビスの生を選択。きめ細かい泡からしても、そこらの店とは違います。それを受ける突き出しは鰆の焼き魚で、組み立てを考えつつ一杯目をあおるには好適です。
メニューブックを開くとまず現れるのが、九州沖縄各県の郷土料理を並べた見開きです。それも、関東人が思いつく月並みなものではなく、あえて一捻りしてくるところは心憎いものがあります。次いで惣菜、揚物、肉、魚、さらには珍味、酒肴、ご飯ものに季節のおすすめと、店の規模にしては驚くほどの豊富な品数です。これなら序中盤終盤どこをとっても隙のない、万全の布陣が構築できます。まずはご当地名物のゴマサバ、次いで唐津産のアラ、最後は晩秋らしく小鍋を選ぶということで腹は決まりました。
髭面の店主は終始にこやか、かつ物腰柔らかで、一見に対しても懇切丁寧です。こうなると俄然居心地もよくなってきます。福岡の地酒が寒北斗一本なのが玉に瑕ながら、それを差し引いてもなお期待を相当程度上回るよい店でした。

博多の飲食店はそれこそ無数にあります。今後この店一辺倒で通すことはおそらくないでしょう。しかし、博多で最初に立ち寄る店を選ぶときには、ここが候補の筆頭に挙がり続けそうな気がしています。
全てのお客に聞いているのか、今回料理の味わいについて二度ほど聞かれました。しかし、咄嗟のことゆえグルメレポーターのような気の利いた物言いができるはずもなく、頓珍漢な返答しかできなかったのは残念でした。次に博多へ戻ってくるまで、多少なりとも語彙を磨いて、店主を納得させる一言を吐いてみたいものだと思います。

博多べい
福岡市博多区冷泉町6-12
092-271-5662
1800PM-2300PM(LO)
月曜定休

ヱビス・寒北斗・雪中梅
突き出し
ゴマサバ
あらの天ぷら
まぐろとネギマの小鍋仕立て
コメント

九州沖縄縦断ツアー 2014 -中洲の夜-

2014-11-04 19:28:51 | 九州
一風呂浴びてさっぱりしたところで、お待ちかねの夜の部が始まります。宿を出て橋を渡れば、中洲の街はすぐそこです。
かつては「さきと」に「寺田屋」など、教祖が激賞する名店の世話になっていたのに対し、近年は中洲を中心に呑み歩くという流れが定着してきました。一言でいうなら、店自体の良し悪しというより、川の流れにネオンを映した独特の雰囲気が、旅情に満ちて秀逸だからです。
その中洲に傾倒するきっかけとなったのが、これも教祖が勧める人形小路の「一富」で、去年の聖夜に一献傾けたのもここでした。ところが、この店がつい最近著名なグルメ番組で取り上げられ、にわかに予約の取れない人気店に一変してしまったと、風の便りに聞きました。この店のよさとは、古い呑み屋小路の小さな店で、軽妙洒脱な店主相手に酒を酌むことにあります。予約の一見客で混み合えば、雰囲気も大きく減じられること必至です。今回も是非再訪したいのはやまやまながら、少なくとも一軒目としては敬遠せざるを得ません。どこかで一杯ひっかけて、お客が一巡しそうな頃に訪ねてみるのが無難でしょう。代わりの店の候補はいくつかあるため、それでも特に不足はありません。
近年福岡に泊まる機会が少なくなり、去年と一昨年は一泊限りでした。今年も年内に再訪できるかどうかは微妙な情勢です。年に一度限りとなるかもしれない中洲の夜を、心ゆくまで満喫したいと思っています。
コメント

九州沖縄縦断ツアー 2014 -福岡到着-

2014-11-04 18:15:34 | 九州
二日ぶりに九州へ戻り、只今福岡市内の定宿に入ったところです。内地でも昨日を境に空気が変わったか、半袖ではわずかながら肌寒く感じられます。この暑がりでさえそう思うのですから、一般人はなおさらでしょう。少なからぬ通行人が上着を羽織っているのを見て、沖縄との季節感の違いを実感させられました。
大きな雲がいくつも浮かんでいた沖縄の空に対し、福岡市街の上空には雲一つなく、山の稜線が鮮明に浮かび上がっていました。こちらも清々しい秋晴れだったのでしょう。このような晴天だったこともあり、機内からの眺めは最高でした。まず、遠目にも残波岬と分かる灯台が、こちらを見送るように佇むところから始まり、雲間から吹き上がる桜島の噴煙で、九州が迫ってくるのに気付きました。その後長島、天草と連なる島の向こうに熊本平野が広がり、それと一続きになった筑後平野と佐賀平野が有明海を囲み、眼下に雲仙が鎮座するのを眺めた頃から、機体は徐々に降下を開始。やがて唐津市街の向こうに玄界灘と福岡市街が広がって、その福岡市街を時計回りに迂回しつつ海の中道を横切り、北側から滑走路に滑り込むというのが一連の展開です。しかも、東の空には終始月が浮かんでいました。
自機の位置と高度が手に取るように分かるという劇的な展開には、船旅にもどこか通ずるものを感じました。空の旅はつまらないという考え自体は変わりませんが、それはそれとして…
コメント

九州沖縄縦断ツアー 2014 -那覇帰着-

2014-11-04 14:30:25 | 沖縄
その後海中道路まで往復し、レンタカーを返して那覇空港に移動してきたところです。現地での滞在時間は正味30分程度に過ぎず、やや慌ただしくはあったものの、空に浮かんだ大きな雲が、ともすれば平板になりがちな光景を、絶好の絵柄に変えていました。その青空と海の間を走れただけでも、足を延ばした甲斐はあったというものです。
それにしても、沖縄で今回ほど天候に恵まれたことはありませんでした。八割方の時間は曇り、ごく短時間日が差したかと思えば、次の瞬間雨が降るというのが、過去沖縄で経験してきた典型的な気候です。十年来ほぼ一貫してこの調子だったため、南の島の天気はこんなものと思い込んで、今回も天候に関しては何の期待もしていませんでした。それがいざ蓋を開ければ、暑からず寒からず実に清々しい快晴だったのですから、全くもってありがたい誤算です。少なくとも沖縄の旅においては、今回が空前の好天として記憶されることになるでしょう。
現在の気温は28度、しかし到着時に感じた蒸し暑さは一切なく、吹く風は実に爽快です。時間が許す限り外の空気を吸ってから搭乗口へ向かいます。
コメント

九州沖縄縦断ツアー 2014 -軽食の店ルビー-

2014-11-04 10:08:14 | B級グルメ
まずは移動の前に腹ごしらえです。本日の朝食は知る人ぞ知る沖縄名物のAランチ、58号線沿いの「軽食の店ルビー」でいただきます。
軽食の看板を掲げ、遠目にはファミレスかファストフード店のようにも見えながら、その実態は定食を中心にした沖縄らしい大衆食堂です。中年男ばかりが黙々と飯を頬張る、地元客御用達といった雰囲気は好ましいものがあります。
食券を渡して着席すると、まずポタージュスープが平たい皿で差し出され、次いで主役となる長方形のプレートが運ばれてきました。トンカツ、ハンバーグ、魚肉ソーセージ、ハムステーキ、ポーク玉子、マカロニサラダに千切りキャベツというのがここのAランチで、皿からはみ出す巨大なトンカツは特に壮観です。しかし、Aランチだからこうなのかというと、他のお客が注文したBかCと思しきランチにも、全く同じ巨大なカツが乗っています。後半は息切れしかけながらもどうにか完食。見た目以上に食べ応えのある一品でした。

軽食の店ルビー
那覇市泊3-4-15
098-868-1721
1000AM-2400PM
盆正月休業
Aランチ800円
コメント

九州沖縄縦断ツアー 2014 -四日目-

2014-11-04 08:47:19 | 沖縄
おはようございます。足掛け三日の沖縄滞在も、本日が最終日となりました。窓の外には昨日と同じ秋晴れの空が広がっています。ただし、帰りの便の時刻からして二時頃までにはレンタカーを返す必要があり、営業所までの移動時間も考えると、実質的な持ち時間は長くありません。
これだけの好天なら、最後は海中道路へ行くのが順当でしょう。往復高速道を飛ばせば、北部に行って戻ってくるのもどうにか可能な状況であり、仮に終日滞在できるなら、迷うことなく北部にもう一度遠征していたと想像します。しかし、時間に追われながら高速道路を飛ばすのも興ざめです。もう一日あればと死んだ子の歳を数えるのはやめて、かつてないほどの好天にまず感謝したいと思います。
コメント