曠野すぐりBLOG 「小説旅日記」

「途中から読んでも内容の分かる連載小説」をいくつか、あと日記を、のんびりと載せていきます。
 

『駅は物語る』 13話

2012年01月04日 | 鉄道連載小説
 
《主人公の千路が、さまざまな駅を巡る話》
 
飯能
 
 
乗り物は大型化すればするほど始動と制動に時間が掛かることになる。だからバスやタクシーならサッと停まって動き出せるところ、鉄道はもたもたしてしまう。鉄道の利点を活かすなら、なるべくちょこちょこ停まらないようにしなくてはならない。
しかし山の急斜面を上がっていく場合は、スイッチバック方式で停まっては動きの繰り返しをしなくてはならない。利点を消してしまうが、鉄道は急なアップダウンも苦手なので仕方がないのだ。
 
その、急な傾斜を上るためのスイッチバックだが、平坦な場所に設置されているところもある。なにかの事情でその先に進めず、折り返さなければいけないという場所だ。
 
千路はある日スイッチバックの地点を見たくて、池袋からレッドアローに乗り込んだ。
平日昼間のレッドアローはがらがらにすいていて、まるで回送電車に乗り込んでいるようだ。JRの特急料金より格段に安いうえにこのゆったり感。千路はなんだか申し訳ない気分になった。
 
小一時間で飯能駅に着いた。千路は特急ホームに降り立つと、ホームの端へと歩いていった。数本ある線路は少し先で行き止まりになっている。立ちふさがっているのは消防署に神社の鳥居。なるほど、あんな施設があるのではスイッチバックもしょうがないかなと千路は見つめながら納得した。
 
 
(飯能・つづく)
 
 

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