Tさんと会うのは一年ぶりだ。
私たちはやあやあと簡単にあいさつすると、東口に降りて行った。
時間は昼の2時。土曜日とはいえ、呑むのに少々罪悪感がある。しかしそんなこと関係ないよとばかりに、呑み屋は何店舗も店を開いている。
東口を降りてすぐ、ロータリーの角に「いずみや」という居酒屋がある。私はその店に入ってみたいと常々思っているのだが、Tさんと私の話の内容がその渋いお店にそぐわないので、この日も諦めた。
「ここ、いつかは入ってみたいんですよね」と私が言うと、Tさんが覗き込んで自動ドアが開いてしまった。バツが悪くてそそくさと立ち去ったが、チラッと見た店内はまだ昼過ぎだというのに混みあっていた。
で、結局、いつものとおり庄屋に入った。大宮の庄屋は11時半からやっているのだ。ちなみにいずみやは10時開店だ。
Tさんとは暗くなるまでしゃべりっぱなしだった。内容は省く。呑みの話は文章では伝わりにくいというのが一点。もう一点は、小説のネタにとっておきたいからだ。
Tさんは酒豪というわけではないが、この日はけっこう呑んでいた。それでいて最後までしっかりしていたのは、おしゃべりが楽しかったからか。
Tさんと大宮で別れた私は、埼京線に乗るべく、いくつもの階段を降りていったのだった。