《主人公の「私」が、各地の立ち食いそば屋を食べ歩く小説です》
小諸の進出(1)
都内に店舗を集中していた小諸そばが、最近埼玉に進出してきた。
進出と言ってもまだ2店舗だが、チェーン店のこと、配送コストの問題もあるだろうからいずれはさらに店舗を増やしていくだろう。問題は進出された駅の勢力図で、小諸そばといえば立ち食いチェーンきっての美味ときているので、既存店には大きな打撃となるはずだ。私は小諸そばが進出した駅、新越谷と朝霞台の状況がおおいに気になり、武蔵野線を使って両駅を訪ねてみることにした。
まずは朝霞台。ここは武蔵野線と東武東上線が交差する乗換駅で、武蔵野線の駅名は北朝霞なのでロータリーに設置されているアーケードには両方の駅名が記されている。で、小諸そばなのだが、東上線の階段下にあるので「朝霞台店」となっている。
ロータリーを行き交う人の混雑で分からなかったが、店の前に来ると中に人が詰まっていた。席は満席。そばの出来上がりを待つ客も列を作っている。真っ昼間なら分かるが、時刻はまだ11時だ。恐れいったなぁと思いながら、私はくるっと踵を返した。
気になるのは武蔵野線側にある既存店、めん処 一ぷくだ。店の前に行って中を覗くと、客は1人だけだった。
11時でこの客の入りはいつものことかもしれない。しかし対岸は列をなしているのだ。小諸恐るべし。失礼な言い方だが、私は見に来た甲斐があったと思った。
めん処 一ぷくは店舗のほとんどが埼玉県にあるチェーン店で、都内の店舗ならともかくここでの苦戦は今後の士気に響くはずだ。バックがJR東日本とでかいので、巻き返しも可能なはずだ。味は一朝一夕にはどうにもならないだろうから、まずは椅子席に変えるところから始めてはどうだろうか。見たところ店舗内の面積は小諸そばと大差がない。それとメニューのバラエティー度か。もちろん味で競っていただければ客としては喜ばしい限りだ。
私はめん処 一ぷくで食べていこうかと思ったが、まだ11時ということで、そのまま武蔵野線の改札を通ってしまった。向かうは新越谷である。
(小諸の進出・つづく)