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役に立たない法律のお話をしましょう

酒税法は面白い

2011-07-22 03:13:32 | 指定なし

 マッコリおばさんが,酒税法違反で罰金に処せられ,追徴課税まで受けたということだが,久々に,酒税法違反でのニュースを聞いた気がする。


 


 酒の密造は処罰される,と聞くと,いかにも悪いことのように聞こえる(実際に法律上は悪いことなのだが)が,その悪さというのは,刑法の,殺人,傷害,強盗,強姦などなどの罪や,覚せい剤取締法違反や,大麻取締法違反の罪とは,ちょっと違っている。


 


 刑法の罪は,そのほとんどが,人間であれば,どこの誰が,どこでやっても悪いことが列挙してある。覚せい剤や大麻についても,幾らか評価は別れるが,少なくとも日本では,それをやることは,自分の身を滅ぼし,他人を巻き込んで社会秩序を崩壊させる,という趣旨で処罰されることになっている。


 


 しかし,酒税法は,あくまで税金を取る法律であって,酒を製造することが「悪いこと」だから処罰するという法律ではない。酒の製造者から,確実に税金を取るために,酒の製造や販売を免許制にして,免許なしに酒を製造したり販売すると,そういうことをすると税金の確保に不都合が生じるから,処罰されるという仕組みになっている。


 


 酒を製造したり,販売することが,道徳的な秩序から見て悪いことだから処罰するものではないとされている。


 


 要するに,あいつは税金を払わずに酒を造っているじゃないか,酒を売っているではないか,それは税金の取立に不都合になるから,処罰するんだ,という,まあ,広い意味での脱税や,そのお手伝いをすることを処罰することになっているのである。


 


 まぁ,理由が何であれ,処罰されることには違いはないのだけれども・・・


 


 ところで,試しに,最高裁のサイトの判例検索のページで,酒税法で検索をかけると,結構たくさんの判例が出てくる。けれども,半数以上は,昭和20年代からせいぜい30年代はじめまでの判例で,そのほとんどが,刑事事件の判例である。


 


 ここでは,無免許での酒の製造を処罰することは,憲法25条(生存権)に違反するとか,どんな場合が酒の製造に当たるのかとか,製造器具の没収が財産権の保障に反するとか,もっぱら製造に関して,そういった憲法問題や,構成要件該当性(どんな行為が罪になるのか)の問題が,盛んに最高裁の判断を仰ぐことになっていた。


 


 これが,昭和30年代後半から,ピタリとなくなって,それからは,たま~~にポツポツと判例が出るだけになっていたが,昭和60年から平成5~6にかけて,幾らか集中的に最高裁の判断が示されることとなった。


 


 こんどは,刑事事件ではなく,行政事件として,行為も,酒類の「製造」ではなく,「販売」が問題とされた。


 


 すなわち,酒税は蔵出し税だから,酒が製造業者の工場を出るときには,税金の納付は終わっている,それなのに,なぜ,それより下流にある小売店までを免許制にしなければならないのか,そんな法律をおいておく意味があるのか,という問題が提起されてきた。


 


 これが,ちょうど,コンビニが酒を扱い始めた頃と一致するのではないかという記憶であるが,要するに,元の酒屋が衣替えをしてコンビニになると,前々からの酒販免許を使って,酒を扱えるのに,新たなコンビニを作ると,過剰供給になるから等という理由で,酒販免許が下りないというようなことが起こって,それで,免許不許可処分取消といった行政訴訟が提起されて,酒税の確保のために,小売店まで規制する必要があるのかどうか,という問題が提起された。


 


 これに決着をつけたのが,平成4年の最高裁判決で,要するに,行政には,行政の制度を作る上で,広範な量権があることを前提とした上で,酒販業者が過当競争に陥ったり,資金力のない酒販業者が現れたりして,酒の販売代金が回収できなくなり,蔵出しの際に国に支払った酒税を,本来税金を負担すべき者である消費者に転嫁できなくなる事態を防ぐための制度である,などといった理由を付けて,酒販免許制も合憲であると判断したものである。


 


 どうもねぇ,ちょっと無理無理な理由付けなようにも思えるのだが,これで最高裁の意見が固まったので,まぁ,時代がまた変わるまでは,仕方がないというところだろうか。


 



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