[春節に新しく貼り替えて幸福を願う切り紙。「福」の字が「倒」れているのは、「福到」ると同じ発音になるので、「福が来る」の意味がある。]
中国では、旧暦(中国語では農暦という)で新年を祝う。1月1日の元旦は一日だけの休日だが、旧暦の新年は「春節(チュンチエ)」といって、ゆっくり休んで家族と過ごす。今年は新暦の1月31日が「年初一(ニエンチューイー)」なので、本誌がお手元に届く頃は、ちょうど年末年始の休みに入った頃だろう。
近年は中国でもクリスマスを商業的イベントとして楽しむが、日本のように終わればすぐにお正月飾りに付け替えることはせず、街では春節までクリスマスのデコレーションはそのままだ。なので、この時期に中国の街にいると、暮れなのか新年なのかわからない気分になる。
農暦の1月15日は「元宵節(ユアンシャオチエ)」で、この日まで正月気分が抜けない。正規の春節休みは日本の正月と同じく三日間だが、四日目からしばらくは当番の人が出社するだけで仕事はまだ始まらない。以前はお店も全然開いていなかったので、独り者には辛い時期だった。
学校も、春節を挟んで冬休みになる。中国の学校は9月に新学年が始まり、春節の前後で3週間弱の冬休みがある。春節の時期は新暦では毎年動いて、2月後半になる年も多い。冬休みの時期が年によって動くのは不便ではないかと思うが、変更される気配はなさそうだ。通年一学期制で、冬休み前に試験などがあるわけでないから問題ないという。みな帰省するので寮は閑散となる。
春節には、出稼ぎの人々も故郷へ帰って年を越すし、都会の若夫婦は田舎の親元に孫の顔を見せに行く。家族はもちろん親戚縁者へも土産を山のように抱えた彼らがおおぜい移動するので、交通機関はものすごい混雑になる。切符を取るのが大変なので、念のため二重買い、三重買いする者も後を絶たず、そのためさらに買いにくくなるので、2年前からチケットの予約は実名登録制になり、身分証番号が必要になった。(ちなみに中国では、生活の中で身分証が必要な場面は日本より多い。旅館に泊まる時は、外国人でなくても身分証を確認される。)これで二重買いは防げても、臨機応変な対応は全く不可能になったので、やはりチケット確保は頭の痛い問題だ。人やモノの移動がどんどん活発になっている中で、交通インフラの整備を急ピッチですすめても追いつかないことが根本的な原因なので、これは簡単に解決しそうにない。電話もとてもつながりにくくなる。
それで発想を転換して、田舎にいる親の方を都会に呼んで一緒に春節を過ごす人も現れた。これだと列車は比較的空いているし、親は都会の見物もできて一石三鳥だといい、当局も混雑緩和のため、この方式を奨励している。それに親類縁者への挨拶回りの煩わしさもない。旅行ブームの昨今は、長い休みの取れる春節に国外・国内へ旅行に出かける人も増えた。都会では開いている店も増えて、春節の様子も変化しつつある。
春節のメインイベントは、年越しの夜の食事「年夜飯(ニエンイエファン)」だ。北方ではこの日、皆でたくさんの餃子を包む。中国では、茹でて食べる水餃子が一般的で、年越しのご馳走は、水餃子だ。その後、年が明けて日をおいた餃子は焼いて食べたりするという。南方では、「年糕(ニエンガオ)」というお餅が代表的な春節料理だ。やはりモチ米を搗いて作るが、直径三センチくらいの棒形になって売られており、ひっつかないように油を塗ってあるのでぴかぴかしている。これを薄く切った円盤形のものを料理に入れて炒めて食べる。
近年は全てのことが商業化したので、年越しの夜のレストランは「年夜飯」のお客で大にぎわいだ。どこのレストランで予約を取るかで頭を悩ませる。年が明けてからも、ご馳走を食べておしゃべりしながらゆっくり休んで、旧交を温めるのが春節の過ごし方の慣例だった。とはいえそれも、世の中の変化の中で少しずつ変わってきているようだ。
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