つれづれなるまま(小浜正子ブログ)

カリフォルニアから東京に戻り、「カリフォルニアへたれ日記」を改称しました。

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中国風信19 ネオ・チャイナ―野望の時代(『粉体技術』8-2、2016.2より転載)

2017-09-19 00:24:38 | 日記
 エヴァン・オズノス著『ネオ・チャイナ-富、真実、心のよりどころを求める13億人の野望』(笠井亮平訳、白水社、2015年)は、北京在住のアメリカ人ジャーナリストが多様な中国人にインタビューして激動する中国社会を描き出したノンフィクションである。著者オズノスは、2005年から8年間、『シカゴ・トリビューン』『ニューヨーカー』の特派員として中国に滞在し、帰国後の2014年に出版された原著Age of Ambition, Farrar Straus and Giroux, New Yorkは全米図書賞を受賞した。
 「情熱」と「独裁主義」が衝突している21世紀の中国では、共産党は史上最大規模で人類の潜在力を解放した。その中で世界を切り開こうとする男女は、新興の大富豪から反体制の活動家、大物政治家から市井の労働者まで、多様な男女に著者はインタビューする。なかには、後に獄中でノーベル平和賞を受賞した民主運動家の劉暁波(リュウ・シャオポー)や、汚職で失脚・逮捕された元重慶市書記の薄熙来(ポー。シーライ)、「80后」(パーリンホウ、80年代生れ)の流行作家でカーレーサーやブロガーとしても活躍する韓寒(ハン・ハン)など、著名人も少なくない。
 「富」を求めて成功した一人に、湖南省の農家の娘だった龔海燕(コン・ハイイェン)がいる。70年代生まれの彼女は、親の世代のように「われわれ」ではなく「わたし」を主語に考える。高校を中退して広東のパナソニック工場で働いたが、そのままでは人生が拓けないと復学し、大学さらには大学院に進学した。しかし自分の人生には恋愛が欠けていると感じて、結婚相手を探すサイトを立ち上げてビジネスを始めた。「佳縁」と名づけたサイトは、7年目には5600万人の会員を抱える中国最大のオンラインマッチングサイトとなった。運命に従うことは時代遅れで、顧客に選択肢を提供することが自分の使命だと、龔海燕は思っている。いまや中国人も、選択の自由を持つようになったのだ。
 独裁体制の下で「真実」を追求する人々の間で、『財経』誌の編集長・胡舒立(フー・シューリー)は、中国における表現の自由を見極めてぎりぎりの報道をすることで知られている。文化大革命の頃、紅衛兵だった彼女は下放して農村で過ごした後、復活した大学入試を突破して記者として働き始め、天安門事件を報じるべきだと主張して停職になる。後に、政財界とのコネクションを利用して数々のスクープをものにし、出資者をえて『財経』を創設した。四川大地震の時、多くの子どもを死なせた校舎の倒壊問題を報じることを当局は禁じたが、『財経』誌は公的資金の使途を監視するという角度から取り上げて詳しい特集記事を掲載した。彼女は自身の役割を「体制という木をまっすくに伸ばしていくためのキツツキ」だと自認している。
 一方、若者の中には「憤青(フェンチン)」と呼ばれる怒れる愛国青年もいる。チベット騒乱への弾圧に世界が抗議する中、中国の名誉を守るために彼らは立ち上がった(自由と民主主義を要求するためにではなく)。復旦大学の大学院生だった28歳の唐傑(タン・チエ)がインターネットに投稿した自作の愛国的動画「2008年、中国よ、立ち上がるのだ!」は、10日間で100万回以上再生されて、「憤青」のマニュフェストとなった。彼は、世界はいまだ中国に疑いのまなざしを向けているのが我慢ならず、中国の見解を代弁しようとしたのだ。21世紀の中国の若者には、天安門事件についても政府の見方を受け入れているものが多く、「民主主義がなくても快適な生活を送れるとしたら、民主主義を選ぶ理由はあるのでしょうか?」と問うスタンフォード大学への留学生もいる。
 国際的に有名なアーティストの艾未未(アイ・ウェイウェイ)は、今という時代は国家の介入なし「民衆が個人の表現の自由を享受できる、この千年で手にした初めてのチャンス」だと、さまざまな方法での表現を試みつつ、政府との微妙な駆け引きを続けている。いすれにせよ、政府を擁護するにも批判するにも、インターネットを駆使することは必須だ。
 多くのインタビューを通して著者の描く中国は、一筋縄ではいかない多様性と深みを持ち、万華鏡のように他用で、多くの矛盾を抱えている。
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