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国鉄 781系特急型電車

2010-11-18 22:51:16 | 電車図鑑・国鉄型特急用車両
函館本線特急「いしかり」用に初めての北海道用の特急型電車として開発されたものである。
昭和53年に試作車(900番台)が6連×1本=6両、昭和55年に量産車が6両編成×7本=42両の
6両編成×8本=48両が製造された。
後に一部中間車への運転台設置と共に4両編成×12本=48両に組みかえられている。
編成の組み方と構成形式・番台区分は札幌側から以下の通りである。

・6連:クモハ781形+サハ780形+モハ781形+サハ780形+モハ781形+クハ780形

・4連:クモハ781形+サハ780形+モハ781形+クハ780形

クモハ781形:札幌側に運転台を持つ制御電動車。サハ780形とユニットを組む。
 主制御器・電動発電機・エアコンプレッサ搭載。900番台が試作車。
 100番台がモハ781形に運転台を設置して編入されたもの。

サハ780形:中間付随車。モハ781形かクモハ780形とユニットを組む。
 洗面所と便所がある。パンタグラフ・変圧器・整流器を搭載。900番台は試作車。
 4両が運転台を設置してクハ780形100番台に編入。

モハ781形:中間電動車。クハ780形、若しくはサハ780形とユニットを組む。
 運転台が無い以外、クモハ781形と搭載機器は同じ。900番台は試作車。
 4両が運転台を設置してクモハ781形100番台に編入。

クハ780形:旭川側に運転台のある制御車。モハ780形とユニットを組む。
 サハ780形と同じく洗面所・便所付きでパンタグラフ・変圧器・整流器を搭載。
 900番台は試作車。100番台はサハ780形に運転台を設置して編入したもの。

車体は普通鋼鉄製で雪の付着を防ぐため、全体に丸みを帯びたスタイルとなっている。
正面は非貫通・高運転台構造で中央にヘッドマーク、左右と運転席上部にヘッドライト、
左右下部にテールランプを設置している。
これらは雪の付着による照度低下を防ぐため、露出型となっており、電球の交換も
外側から交換できるようにした。
塗装はクリームに赤のいわゆる「国鉄特急色」であるが、遠方からの視認性向上のため、
赤帯を正面ヘッドマーク周りまで塗りつぶしたものにしている。
ヘッドマークと側面の行き先表示は字幕式である。

車内のグレードは普通車のみで座席は回転式リクライニングシートを採用している。
トイレと洗面所はクハ780形とサハ780形のデッキに設置した。
ドアは片側1箇所、デッキ・ステップ付の片引き戸である。
ドアレールには凍結防止のためのヒーターを設置している。
側面窓は900番台で空調機の故障時のため、開放可能な内折れ窓を一部採用していたが、
量産車では廃止され、全て固定式になった。

主制御装置はサイリスタ位相制御で、ブレーキは発電ブレーキ併用電磁直通式
空気ブレーキを採用している。
基本的な機器構成は先に営業運転を開始していた711系電車を基本としているが、
本形式は特急用電車であり、車体の重量が増加すること、耐雪構造とする上で
床下機器を極力増やさないことを目標に再設計されている。
このため、機器を分散した結果、国鉄の特急用電車で初めて電動車と付随車で
ユニットを構成する方式となった。
電動車ではモーターを冷却するための通風器を車体側に設置しているが、これを
雪切り構造として、外気を取り込む際に、雪を分離することが可能である。
また、モーター自体も準密閉構造となり、雪の巻き込みによる故障を大きく減らした他、
車内保温のための2重床構造なども相俟って、走行音もかなり抑えられている。
駆動方式は中空軸平行カルダン方式で台車は軸箱支持を円筒案内式とした
インダイレクトマウント式空気バネ台車である。
軸バネには雪の付着によるバネの効果の低下を防ぐため、カバーが巻かれている。

導入時はL特急「いしかり」に投入され、その後すぐに列車名が「ライラック」に
されている。
昭和56年に試作車の900番台の量産化改造、昭和60年に運転台屋根への着雪防止のための
小風防設置などの小改造の他、「ライラック」増発と、「ホワイトアロー」設定による
運用数増加に伴い、4連化と一部中間車への運転台増設の改造を行っている。
このとき、先頭車になった車両は100番台が付与されている。

民営化後は全車がJR北海道に引き継がれた。
平成4年に新千歳空港開港に伴い、「ライラック」を延長する形で快速「エアポート」にも
就いたが、ドアが片側1箇所と快速運転時の乗降に難があり、平成5年にドアの増設を
行った。
機器の関係で当初はクハ780・サハ780だけに実施されたが、後にモハ781形にも
施工された。
モハ781形では機器配置の関係で車端部にドアを設置できず、窓1枚分車体中央よりに
設置された。
このため、2列×4席=8人分の客室が半個室状態で孤立することになった。
この他の客室ではデッキ側の座席の2列+2列配置から1列+1列配置として通路幅の確保を
図った。
なお、クモハ781形では機器配置の関係で2扉化は施工されず、特急「すずらん」用に
なった編成においてもこれを実施していない。
同時期に塗装の変更もあわせて実施され、グレーにラベンダー色の帯、窓周りを
濃いグレーでその境にコーポレートカラーのライトグリーンの細帯としている。

平成10年に津軽海峡線で781系による走行試験を行い特急「スーパー白鳥」用789系への
貴重なデータを残した。

平成12年には快速「エアポート」、「ライラック」への指定席「Uシート」設定に伴い、
「ライラック」用のクモハ781形6両を対象に座席の交換とシートピッチ拡大、
客室仕切り扉上部へのLED式旅客案内装置の設置、外部塗装の変更を実施した。
同時期に運行速度120km/h以上の車両を対象にした側面窓保護対策のため、側面窓への
ポリカーボネート設置を行っている。

平成15年より同線で特急「ドラえもん海底列車」に使用された。車両は高速試験に
用いられた編成と、もう1本他の編成の中間車を組み合わせた6両編成を組んだ。
この列車では外部にドラえもんのラッピングを施した他、4号車をフリースペースの
「ドラえもんカー」を設定。
車内自動放送も「ドラえもん」の声(大山のぶ代ver.)で行われるというもので好評を
博した。

平成18年に北海道新幹線工事のため、吉岡海底駅が休止になると特急「ドラえもん
海底列車」も廃止となり、該当編成が廃車となったほか、
「ライラック」、「すずらん」に用いられていた編成でも老朽化が進んだことから
789系1000番台に置き換えられ、平成19年10月のダイヤ改正で営業運転から撤退し、
同年11月のさよなら運転を最後に全車引退した。
北海道初の特急用電車であり、現在の789系1000番台「スーパーカムイ」につながる
JR北海道の特急用電車の基礎となった車両であるが、JR北海道での保存車は存在せず、
クモハ781-901号車のナンバープレートと特急シンボルマークが苗穂工場
北海道鉄道技術館に展示されるのみである。
民間譲渡のものとしては何両かが道内の施設で利用されている。


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