昭和32年の登場以来、40年以上特急車と君臨し続けた2000系電車の老朽化に伴い、
これの置き換えのため、小田急電鉄から10000形電車「Hi-SE」の第2・4編成を
譲り受けたものである。
長野電鉄には平成17年に4体連接×2本=8両が入線した。
営業運転の開始に際し、公募によって命名された「ゆけむり」の車両愛称がある。
編成の組み方は湯田中側から順に以下の通りである。
デハ1000形-モハ1010形-モハ1020形-デハ1030形
旧車号との対比は以下の通りである(見方:長電での車号=小田急での車号)。
第1編成:デハ1001号=デハ10031号/モハ1011号=デハ10032号/モハ1021号=デハ10022号
/デハ1031号=デハ10021号
第2編成:デハ1002号=デハ10071号/デハ1012号=デハ10072号/デハ1022号=デハ10062号
/デハ1032号=デハ10061号
製造年は第1編成が昭和63年、第2編成が平成元年で、いずれも川崎重工製である。
入線にあたっての改造は日本車輛にて実施された。
車体は普通鋼鉄製で元々11体連接だったものを4体連接に短縮した以外、
外観上の特に大掛かりな改造は施されていない。
先頭部分は運転室を屋根上にして、客席を最前部まで設置した展望構造となっており、
これも小田急時代そのままである。
塗装は小田急時代の塗装をベースにしたホワイトとレッドであるが、いずれも
明るい色調のものに再塗装されている(入線した段階では小田急時代のまま)。
車内は展望室が進行方向固定、他が回転式のクロスシート(左右とも2人掛け)である。
小田急時代に設置されていた売店、洗面所、トイレの設備がある車両は譲渡されず
解体されている。
ドアは各車両一箇所ずつの折り戸で中間車のものはデッキ・ステップ付き、先頭車は
展望室と一般客室の間に簡易仕切りつき・ステップなしである。
各ドアには凍結防止のためのドア・レールヒーターが設置された。
車掌室は先頭車車端部に設置されている。
なお、長野電鉄では列車のワンマン化を実施しているが、本形式使用の
A特急については検札と各種案内・物販のため乗務している。
バリアフリー設備については特に設置していないが、長野電鉄ではステップがない
展望室入口付近を対応スペースとしており、客室部の仕切りにある跳ね上げ式の
座席を施錠してこれにあてている。
ただし、入口の幅自体、車椅子やベビーカーが通れるほど広くないので
乗車に際しては注意が必要である。
主制御装置は抵抗制御でブレーキは抑速ブレーキ付き発電ブレーキ併用
電気指令ブレーキである。
これらについても変更はほぼ無いが、小田急時代よりも勾配区間を走る時間が
長いため、抵抗器の増強が図られている。
また、補助電源用の静止型インバータを廃車された旧6号車から2号車にあたる
モハ1010形に移設している。
台車は軸バネ支持をアルストム式としたダイレクトマウント式空気バネ台車で
モーターの駆動方式は中実軸平行カルダン駆動(TDカルダン)方式である
運転台は片手操作式ワンハンドルマスコンで、長野電鉄では初めての
採用である(ワンハンドル車自体は同時期に東急から譲り受けた8500系が最初)。
運転室は既述の通り、先頭車天井部にあり、展望室後方のステップを伝って
入室する。
平成17年8月に無償譲渡を受け、日本車輛での改造を経て平成18年12月9日より
A特急で営業運転を開始し、2000系のA特急運用を置き換えた。
改造を受けた日本車輛からは、通常、東海道本線→中央西線→篠ノ井線→しなの鉄道の
順で長野電鉄に入線するが、車体の大きさの関係で篠ノ井線に入ることが出来ず、
東海道本線→武蔵野線→高崎線→上越線→信越本線→しなの鉄道という、
実に763.5kmの遠回りをすることになった。
また、平成18年9月には本形式の営業開始を控え、特殊なスイッチバック構造と
なっていた湯田中駅の配線改良工事を実施している。
営業開始後、展望室の窓ガラスにヒビが入るなどの軽微なトラブルはあったものの
好評を持って迎えられ、特に展望車は小田急時代同様高い人気を誇っている。
また、長野電鉄では2000系時代から特急料金100円を徴収しているが、本形式でも
据え置かれている。
平成22年1月には小田急電鉄に在籍する車両で連接部の台車に無数の損傷が
見つかったため、半月ほど点検と修理のため、運休した。
運用は日中、長野線長野~湯田中間で運行されるA特急のみでドア配置や客室設備の
関係からラッシュ時に運行される信州中野~湯田中間が各駅停車のB特急運用には
就かない。
また、2編成をフルに使う運用のため、予備車がなく、検査中などは2000系電車や
3600系電車が代走する。
余談だが、長野電鉄では昭和39年ごろ、展望車付きの特急車を計画して設計まで
していたが、単線区間でのタブレットのやり取りなど諸般の事情で断念した
ことがある(代わりにスカート付きの2000系D編成が入る)。
鉄道評論家の川島令三氏は、この図面を見て「小田急のロマンスカー「NSE」が
廃車になったら譲り受ければいい」と当時の長野電鉄の車両担当に
提案したことがあると著書の中に綴ってあり、形は大きく変わったものの
凡そ40年越しにこれが実現したということになる。

○展望室。これを撮影した後、写真に妙な違和感を覚え、よく観察してみると
正面左の窓の下にヒビを発見。車掌さんに伝えに走ることになる・・・。

○展望室。運転室へ上がるステップを展開した状態。

○一般客席。高級感漂う回転クロスシート。
リクライニングはしないが、背もたれの傾斜角を大きくしているのが特徴。

○長野駅で並ぶ1000系と登場時の塗装に復元されたばかりの2000系A編成。
来年の春にはJR東日本より元「成田エクスプレス」の253系が入線し、
2000系は全車引退となる。
これの置き換えのため、小田急電鉄から10000形電車「Hi-SE」の第2・4編成を
譲り受けたものである。
長野電鉄には平成17年に4体連接×2本=8両が入線した。
営業運転の開始に際し、公募によって命名された「ゆけむり」の車両愛称がある。
編成の組み方は湯田中側から順に以下の通りである。
デハ1000形-モハ1010形-モハ1020形-デハ1030形
旧車号との対比は以下の通りである(見方:長電での車号=小田急での車号)。
第1編成:デハ1001号=デハ10031号/モハ1011号=デハ10032号/モハ1021号=デハ10022号
/デハ1031号=デハ10021号
第2編成:デハ1002号=デハ10071号/デハ1012号=デハ10072号/デハ1022号=デハ10062号
/デハ1032号=デハ10061号
製造年は第1編成が昭和63年、第2編成が平成元年で、いずれも川崎重工製である。
入線にあたっての改造は日本車輛にて実施された。
車体は普通鋼鉄製で元々11体連接だったものを4体連接に短縮した以外、
外観上の特に大掛かりな改造は施されていない。
先頭部分は運転室を屋根上にして、客席を最前部まで設置した展望構造となっており、
これも小田急時代そのままである。
塗装は小田急時代の塗装をベースにしたホワイトとレッドであるが、いずれも
明るい色調のものに再塗装されている(入線した段階では小田急時代のまま)。
車内は展望室が進行方向固定、他が回転式のクロスシート(左右とも2人掛け)である。
小田急時代に設置されていた売店、洗面所、トイレの設備がある車両は譲渡されず
解体されている。
ドアは各車両一箇所ずつの折り戸で中間車のものはデッキ・ステップ付き、先頭車は
展望室と一般客室の間に簡易仕切りつき・ステップなしである。
各ドアには凍結防止のためのドア・レールヒーターが設置された。
車掌室は先頭車車端部に設置されている。
なお、長野電鉄では列車のワンマン化を実施しているが、本形式使用の
A特急については検札と各種案内・物販のため乗務している。
バリアフリー設備については特に設置していないが、長野電鉄ではステップがない
展望室入口付近を対応スペースとしており、客室部の仕切りにある跳ね上げ式の
座席を施錠してこれにあてている。
ただし、入口の幅自体、車椅子やベビーカーが通れるほど広くないので
乗車に際しては注意が必要である。
主制御装置は抵抗制御でブレーキは抑速ブレーキ付き発電ブレーキ併用
電気指令ブレーキである。
これらについても変更はほぼ無いが、小田急時代よりも勾配区間を走る時間が
長いため、抵抗器の増強が図られている。
また、補助電源用の静止型インバータを廃車された旧6号車から2号車にあたる
モハ1010形に移設している。
台車は軸バネ支持をアルストム式としたダイレクトマウント式空気バネ台車で
モーターの駆動方式は中実軸平行カルダン駆動(TDカルダン)方式である
運転台は片手操作式ワンハンドルマスコンで、長野電鉄では初めての
採用である(ワンハンドル車自体は同時期に東急から譲り受けた8500系が最初)。
運転室は既述の通り、先頭車天井部にあり、展望室後方のステップを伝って
入室する。
平成17年8月に無償譲渡を受け、日本車輛での改造を経て平成18年12月9日より
A特急で営業運転を開始し、2000系のA特急運用を置き換えた。
改造を受けた日本車輛からは、通常、東海道本線→中央西線→篠ノ井線→しなの鉄道の
順で長野電鉄に入線するが、車体の大きさの関係で篠ノ井線に入ることが出来ず、
東海道本線→武蔵野線→高崎線→上越線→信越本線→しなの鉄道という、
実に763.5kmの遠回りをすることになった。
また、平成18年9月には本形式の営業開始を控え、特殊なスイッチバック構造と
なっていた湯田中駅の配線改良工事を実施している。
営業開始後、展望室の窓ガラスにヒビが入るなどの軽微なトラブルはあったものの
好評を持って迎えられ、特に展望車は小田急時代同様高い人気を誇っている。
また、長野電鉄では2000系時代から特急料金100円を徴収しているが、本形式でも
据え置かれている。
平成22年1月には小田急電鉄に在籍する車両で連接部の台車に無数の損傷が
見つかったため、半月ほど点検と修理のため、運休した。
運用は日中、長野線長野~湯田中間で運行されるA特急のみでドア配置や客室設備の
関係からラッシュ時に運行される信州中野~湯田中間が各駅停車のB特急運用には
就かない。
また、2編成をフルに使う運用のため、予備車がなく、検査中などは2000系電車や
3600系電車が代走する。
余談だが、長野電鉄では昭和39年ごろ、展望車付きの特急車を計画して設計まで
していたが、単線区間でのタブレットのやり取りなど諸般の事情で断念した
ことがある(代わりにスカート付きの2000系D編成が入る)。
鉄道評論家の川島令三氏は、この図面を見て「小田急のロマンスカー「NSE」が
廃車になったら譲り受ければいい」と当時の長野電鉄の車両担当に
提案したことがあると著書の中に綴ってあり、形は大きく変わったものの
凡そ40年越しにこれが実現したということになる。

○展望室。これを撮影した後、写真に妙な違和感を覚え、よく観察してみると
正面左の窓の下にヒビを発見。車掌さんに伝えに走ることになる・・・。

○展望室。運転室へ上がるステップを展開した状態。

○一般客席。高級感漂う回転クロスシート。
リクライニングはしないが、背もたれの傾斜角を大きくしているのが特徴。

○長野駅で並ぶ1000系と登場時の塗装に復元されたばかりの2000系A編成。
来年の春にはJR東日本より元「成田エクスプレス」の253系が入線し、
2000系は全車引退となる。