Dr-Hの船外機のお話

船外機のメンテナンス

BF50Dの定期点検と不調は複合的な原因だったのでした。

2012-10-20 13:57:38 | ブログ

みなさま、ご機嫌いかがでしょうか?

ミニボートフェスティバルの前日、仕事が終わってから用意していたら、

いつもならもう終業している時間に来客がありまして、

「BF50Dを使っているのですが、〇〇(遠方)まで修理に来てもらえないで

しょうか?」とご相談です。

う~ん、その地域はいつも、大先輩のMさんを紹介しているのですが、

今回は調子が悪いとのことで、Dr-H(パソコン診断機)が必要になるかもで・・・

50d

私が自ら行くことにしました・・・・

3:30に出発して、下道&山道を延々と走ります。

まだ暗い山道はどこか寂しく、お化けが出たらどうしようとか考えていると

「ああっ・・・アアアアあああっ・・・あああ」

何かやけにほっそりした2本足の人物が道路の真ん中に立っています。

「やってもした~見たらアカンもんを見てしもた~」

小人で、頭がとんがっています。

「あああ~」

CR-V君が近づくと、ピョンと飛んで右側によけて・・・

正面から見たら、小鹿はケムラー星人みたいに見えるんですね。

私もとうとう「ムー」の世界にいってしまうかと、びっくりしました。

その後もビクビクしながら峠を越えて、日本海が見えてきました。

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海が荒れてるなぁ、試運転できるかな?

現地に到着です。

早速陸上試運転しながら、Dr-Hでスキャンします。

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お客様は900時間以上お使いですが、トラブルの履歴はありません。

ついでにインジェクターチェック(Dr-Hで指令して、1気筒ずつ順番に

インジェクターを止めて、その瞬間わざと回転を不調にする。

不調にならない時は、元々そのインジェクターは死んでいる)と

点火のチェック(わざと順番に失火させて・・・・上記と同じです、なので

最近は診断機が無いと、修理が出来ません)を

しますが、問題はありません。

いろいろと目視でチェックして、不調の原因らしきものを

1つ見つけました。

「ああ、ここは部品を持ってきていない・・・・再度来ることになるな」

事前にオーナーとは、2回になることを覚悟してくださいと

伝えています。

修理とあわせてご依頼いただいた定期点検を同時進行で

はじめます。

そうそう、本社のM嬢が、今まで個別に対応していたホンダ船外機の

消耗品の通販コーナーを作ってくれました。

今までは修理中に油だらけの手で受話器を持って

「はい、入りますよ、値段は・・・えっと」とやっていたので

これからは助かります。

まだまだ発展途上ですが、興味のある方は、覗いてみてください。

http://www.hondamarine-hanbai.com/html/

お問い合わせや来店でのご注文の多い、ヤマハ、トーハツの

修理パーツも順次アップしていきます。(と、思いますが・・・・)

さて本題にもどって、つづきです・・・。

(画像をクリックすると、拡大します)

50dpuragu

右から1番2番3番です。

2番が黒いのがわかるでしょうか?

いくつか原因が考えられるのですが、このエンジンのスパークプラグ、

3本とも締め付けトルクがユルユルで、2番はすでに緩んでおり、

3番は手で緩む程度で・・・・OHコワい状況です。

スパークプラグの締め付けが弱いと、熱を持ってしまって、

最悪、溶けてシリンダー内に「ポロッ」とかあるそうです。

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インテーク側のアノード(防食亜鉛)は、このBF50D/40Dはこのように

簡単に交換できます。

陸置艇でも、これだけボロボロです。

キャップはOリング又はキャップ&OリングのASSYを交換して、

耐水グリスを塗って、戻してください。

燃料フィルターも点検します。

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携行タイプの燃料タンクの方は、このような汚れが多いですね。

特にEFIエンジンは汚れに敏感です。ご注意を!

サーモスタットも点検します。

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これなら交換しても、バチが当たらないでしょう?

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今度はウォータージャケット側の内部アノードの交換です。

陸置なのですが・・・思ったより・・・・汚れていて、朽ちています。

清水洗浄の水圧が低いのか?

このアノード比較的簡単に交換できます。パッキンも同時交換です。

度々交換したほうが、すぐにネジも緩んで、楽です。

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高圧側のベーパーにくっついている燃料フィルターです。

こいつはいつも、どのエンジンも真っ黒です。

ろ過する目が細かいのでしょう?

最後の砦ですので、がんばっています。皆さんフィルター君に

拍手を・・パチパチパチ♪

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さすがに陸上艇なので、あまり減っていませんが、オーナーの希望

ですので、交換します。(良いことです)

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プロペラ/シャフトの点検と、グリスアップです。

久しぶりに釣り糸を巻いていません。このエンジン。

お次はインペラー/キーなどの点検です。

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インペラーのキー(キーウッドラフ)も、このタイプは、当たり面が

片減りすると遊びが多くなるので、点検して減っていたら、安いものなので

交換してください。

さあ、とりあえず消耗品交換を終え、不具合箇所のチェックをしたので、

試運転します。

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う~ん、予想より調子が悪いですね。

見つけていた部分以外にも、不具合があるようです。

再度帰港して、スロットル側のリモコンケーブルをシビアに調整します。

調整の余裕があまり残っていません。

リギング時にリモコンBOX側の詰めが少なかったのかも・・・・・

ギリギリ調整できました。

次回は・・・・・ありません(BOX分解orケーブル交換)

あと、燃料系も、おかしいと思うのだが・・・・・・・

電気系の不調もあって、たまに症状が出るので、見分け難しく、

頭の中で、理論と理論がぶつかって、どちらか迷います。が、

夕方までに犯人を見つけないと、真っ暗になって、

ケムラー星人よりコワいのを見るのも御免ですから、

立ったまま昼食のジャムパンをかじりながら、サービスマニュアルと相談を

します。(エラーが無いのでパソコンは横で静かに見守っています。)

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いくつか推理し、分解/実証します。

つまり、燃料入り口~インジェクターまで順番にバラバラにして、

可能性の高そうな順番ではずして、詰まりを確認します。

・・・・・・・・ベーパーセパレーターも分解しましたが、きれいなものです・・・・・・・・

ケムラー星人が頭をよぎります。

「ブルッ」と寒気がします。

ひょっとして・・・・来たとき一度点検済みの、フューエルコネクターを

再度点検します・・・・外れません・・・・・外れません・・・

洗濯ばさみを指で押さえられず・・・・・ということは・・・・もう、外れている・・・・

引っ張ると「ポン」と、簡単に・・・

やられました。ここからエアを吸っていたのでしょう。

再度試運転します・・・答え合わせです。

電気系の不定期な発作&スパークプラグの締付けトルク不足&フューエル

コネクターの接続不良(これは、私だけ?オーナーも以前から)&スロットルケーブルの

調整不良が複合的に重なって、回転不良になっていました。

よく「エンジンが吹けないのですが、どこが悪いでしょうか」と聞く方がおられますが、

原因は一つとは限りません。

私の尊敬する先輩達も、ベテランほど「診て見ないとわからない」と言いますが、

それが「真理」なのです。

50d_11

初めは3500~4500rpmまでしか回らなかったBF50Dですが、

電気系の症状が治まっているときは5000rpm~6000rpmまで回ります。

これで、完全に絞り込めました。

頭の理論と、体で感じているものが一致しました。

四国のプロフェッサーYに電話して最後の答えあわせをします。

遣り残しがあると、恥ずかしくて聞けませんから。

「(電気系の)部品交換するしかないね~」

残念ですが¥2,800-の部品が追加になります。

帰って、上架してエンジンを洗って、タッチアップペイントと

グリスアップをして、収納します。

今度は部品が入り次第、また交換に来ることになります。

出来れば、オーナーに確認していただきたいので、日を合わせられればと

考えています。

さて、明日は休日出勤で、GPSの取り付けです。

先週土曜日、ミニボートに出るため休みましたので・・・・

FRPの加工があるので、1日掛かると思うのですが、

オーナーは「オイル交換の仕方を教えてほしい」と

言われていますが・・・・余裕あるかな?

最悪、超残業になったらオーナーにも一緒に「ケムラー星人」が出る時間まで、

居残りをしてもらうことにしましょう。

一人では、怖いですしね・・・・・・・。