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雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

共存共栄 ・ 小さな小さな物語 ( 1283 )

2020-06-17 13:52:34 | 小さな小さな物語 第二十二部

「共存共栄」という言葉は、ゴロも悪くないし、持っている意味も人を傷つけないようにも思われるのですが、最近はお目にかかる機会が少なくなっているような気がします。
今回のテーマに使う機会に手元の辞書で意味を確認してみますと、「ともに生存し、ともに繁栄すること。」とありました。私などは、もっと気軽な意味で使っているような気がしますし、そのように説明している資料もありますが、この辞書の説明にあるような「ともに生存し・・」となりますと、もっと重い意味を秘めているような気がします。この言葉の語源のようなものは知らないのですが、もしかすると、国家間の存亡をかけるような交渉事を意識しているように感じてしまいます。

最近では、共存共栄的な意味合いの場面で、「ウィンウィン」という言葉を耳にすることが多いように思われます。
この言葉は、アメリカのベストセラー作品で使われたことからメジャーになった経営学用語ですが、経済界ばかりでなく、国家間の交渉などでも使われていることがよくあります。
「ウィンウィン」、つまり、交渉する双方が勝利する(利益を得る)という意味で、文句をつけようがないほどすばらしい言葉ということになります。但し、双方の勝ち方が、本当に対等なのかどうかが難しいところです。 

かつて、ある先輩に交渉事に関して次のような指導を受けた記憶があります。
「商売に限らず、自分が有利になるための交渉方法は、5分5分では駄目で、少しばかりこちらが有利でなければならない。ただ、それが、「7対3」や「8対2」で成立するような交渉は成功とはいえない。なぜなら、そのような交渉は、明らかに相手に損をさせているので、そのような交渉が長く続くようでは、相手の能力が低ければ没落していくだろうし、並の能力を持っていれば、そのうち相手にされなくなってしまう。「5.5対4.5」あるいは、もっと微妙な差で利益をものにするのが優れた交渉力なのだ」といったものでした。
実際には、交渉事には、お互いの必要性や、得意分野といった要件も絡んできますので、それほど簡単に数値化できるものではないとは思います。

目下、中国・武漢市が発生源と思われる新型コロナウイルスが深刻さを増しています。わが国内でも、すでに水際で完全に止める段階は過ぎていて、正念場を迎えつつあります。
この問題は、中国はもちろん、わが国にとっても、その対応力が問われているわけで、必ずや、それほどの時間をかけずに一応の解決を図ってくれるものと信じたいと思います。
そして、この問題を通じて、「共存共栄」ということを私たちは学び直す必要があるような気がするのです。中国ほどの大国でも、新しいウィルスの登場で少なからぬ混乱と、相当の実損が発生してしまいます。そしてその混乱が、わが国に対しても相当の悪影響を覚悟せざるを得ない状況となります。それは、わが国に限ったことではないでしょう。
現在の国際社会においては、一国の損失は他国の利益になるといった単純な算式は成立しないようになっているのです。
「共存共栄」は「一蓮托生」の危険をはらんでいるとはいえ、「唯我独尊」とうそぶいて生存し続けることは不可能に近いのではないでしょうか。

( 2020.02.18 )






 


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