末っ子の婿は異国の人
娘に
君は日本人だからそうなんだろうけど
真面目すぎるといい
長女の婿は日本人だけど嫁の
社会の決めごとへの忠実さを嫌うらしい
娘が言うには「なみさんの孫やもん」
仕方がないと言う
なみという名の私の母は約束は違えない
できない約束はしない
選挙の立候補者への投票を誰に頼まれようが
先に投票を約束した人があれば
もう決めてるのでとお断りして
安易にわかりましたなどとは言わない
何事もそんな感じだったから
まだ小さかった孫達にまで
母の生きざまが浸透していたのか
幼い頃に母をなくして
戦前戦中戦後を越えてきた母
たった独りの弟は負傷兵として
戦後戦地から戻るのが遅れ
病身の父(私の祖父)は戦死したものと
家督を母の従兄に託して亡くなった
南方の戦地から戻った母の弟は
父のなした通り家屋敷田畑を従兄に譲り
桶職人見習いとして桶屋に住み込んだ
その生き方は母の真逆
悲惨な戦地で生き残った叔父
辛さ苦しさ悲しさというものは
捨てたのか圧し殺したのか奔放に生きた
欲を持たず体はいとわず
よく働き自由に生きた
がんじがらめの母と自由な叔父
気ままな叔父を羨ましく思った
母と叔父の縁は深く母と私と妹は
奔放な叔父を頼らざるを得なくなった
私は母と叔父の狭間でもがき
振り回されもした
「なみさんの子やもん」
「なみさんの孫やもん」
真面目にこつこつ積み上げて
そして
「叔父さんの姪やもん」
「叔父さんの姪の子やもん」
肝心なとこで奔放にでて
努力を水の泡に帰すところがあるなあ
なんて結論付けているけれど
極端な二人が互いに大切に思って
生きてきたことを知っている
そして私たちもそんな二人が大好きで
その生きざまを受け継いでいることを
楽しんでいる