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『スーパーノヴァ』

2021年07月06日 | 映画(さ行)
『スーパーノヴァ』(原題:Supernova)
監督:ハリー・マックイーン
出演:コリン・ファース,スタンリー・トゥッチ,ピッパ・ヘイウッド,
   ピーター・マックイーン,ニナ・マーリン,イアン・ドライズデイル他
 
TOHOシネマズ梅田にて前述の『Mr.ノーバディ』を観たあと、
大阪ステーションシティシネマへ移動して。
 
このふたりは誰もが認める実力派俳優、英国の誇りでしょうね。
激しさはないのにとても心に残る作品です。
 
ピアニストのサム(コリン・ファース)と作家のタスカー(スタンリー・トゥッチ)は、
20年連れ添ってきたアラ還のゲイ・カップル。
あるとき、タスカーに認知症の兆候が出始めていることがわかる。
タスカーは旅行を計画。ふたりはキャンピングカーに乗り込むのだが……。
 
いつもあらすじだらけで「読んだら観た気になれる」のがウリのブログですが(笑)、
本作についてはこれぐらいしか書くことがありません。
 
カップルの片方が認知症で、キャンピングカーで旅に出るという設定は、
『ロング,ロングバケーション』(2017)と同じ。でも、まるで違う趣があります。
 
いきなり旅のシーンから始まるので、
いつタスカーが認知症と診断されたのかはわかりません。
旅の途中の彼は、おでこにかけた老眼鏡の存在を忘れて探すことがあるくらいで、
特に症状が進行している様子もなく、いたって普通。
会話はユーモアに富み、とても知的な人だということがわかる。
サムの姉リリーから具合はどうかと尋ねられたタスカーが、
「君の名前はなんだっけ」という冗談で返すシーンに和みます。
 
このリリー一家と郷里の友人たちのなんと温かいことよ。
タスカーはここでも自分の症状について触れながら、
居合わせた友人のことを「忘れるのが長年の夢だったからそれが叶う」と
皆を笑わせてみせます。
 こんなふうに、つらいところを一切見せないタスカーの決意。
それを知ったときのサムの気持ち。
タスカーがリリーにつぶやく、
「生きている人間を悼むなんてつらいと思う」という言葉が突き刺さります。

ゲイであることに会話でも態度でもまったく触れずに進むのが新鮮。
ならばゲイ・カップルにする必要はなかったんじゃないかと思うほどですが、
ゲイを特別視していないことに意義があるのかもしれません。
 
失って悲しいと思うのは、それが良きものだったから。
じんわりと心に広がる言葉でした。
ふたりともやっぱり名優。

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