『ぼくを探しに』(原題:Attila Marcel)
監督:シルヴァン・ショメ
出演:ギョーム・グイ,アンヌ・ル・ニ,ベルナデット・ラフォン,エレーヌ・ヴァンサン,
ルイス・レゴ,ファニー・トゥーロン,ケア・カン,シリル・クトン他
台風の日曜日、夕方までは外出を控えてくださいとテレビの声。
しかし私はやっぱり映画を観に行きたい。
お盆にダンナ実家に持参するお供えを買うという用事もあるし、
台風でサッカーの試合が中止になったダンナに駅まで送ってもらって梅田へ。
この前週、『マダム・イン・ニューヨーク』とハシゴしたかったのは本作。
『サンシャイン♪歌声が響く街』と天秤に掛け、
本作は別の劇場でも後日公開予定だったので、
観る機会を逸しそうな『サンシャイン♪』を選択したのでした。
最初からこっちにしておけばよかったかな。
風雨を避けて梅田スカイビルへ向かおうと、地下から大回り。
ルクアのお店もすべて台風で営業時間変更、シャッターが半分おりたまま。
グランフロントの端っこから地上に出て地下道へ。
傘を差さなくてもいい程度の小雨のなか、シネ・リーブル梅田へたどり着きました。
大好きなシルヴァン・ショメ監督。
魂を射貫かれた『ベルヴィル・ランデブー』(2002)、『イリュージョニスト』(2010)と、
いつまでも観ていたいアニメ作品の監督が初挑戦した長編実写作品です。
2歳のときに目の前で両親を亡くし、そのショックから口をきけなくなったポール。
変人と言ってもいい伯母姉妹アニーとアンナに育てられ、
ポールは30歳を過ぎた今もまったく言葉を発しないが、優れたピアニスト。
コンクールでも毎度上位に入賞しているほか、
伯母姉妹が営むダンス教室で、どんなジャンルの曲も見事にピアノで奏でる。
33歳の誕生日を迎えたポールは、アパートの階段で盲目のピアノ調律師とすれ違う。
調律師の落とし物に気づくが、口をきけないから声をかけられない。
落とし物を拾って後を追いかけると、調律師は同じアパートのマダム・プルーストの部屋へ。
マダム・プルーストに勧められた怪しげなハーブティーを飲んでポールは失神。
実はこれは一種の催眠療法で、そのハーブの効能で過去の記憶をたどれるのだ。
突っ伏したポールは両親の夢を見る。
ポールが覚えている在りし日の両親といえば、優しい母親とただ怖い父親。
なのに夢の中に出てくる両親はちょっとちがう。
マダム・プルーストは、毎週来るようにとポールに言う。
治療費のごとく金を請求されてポールは一瞬ひるむが、
おそらく自分自身で閉じ込めてしまったであろう記憶をたどりたい。
伯母姉妹には内緒でマダム・プルーストのもとへかよう日が続くのだが……。
両親が亡くなったのはなぜなのか。いったいどんな事故だったのか。
色彩と音楽に溢れたファンタジーの中で、その部分はミステリー。
実際にはあり得ない寓話的な事故であっても、
こんなことが目の前で起きたら、幼い心は閉ざされてしまうことでしょう。
実はヘヴィーなテーマに愕然としました。
原題の“Attila Marcel”は父親の名前で、アッティラ・マルセル。
フランスの文豪マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』のエッセンスを織り交ぜたと監督は話し、
登場人物の名前にそれが現れているのも楽しいところ。
また、“アッティラ・マルセル”は『ベルヴィル・ランデブー』で使われた楽曲でもあります。
観ている間に、今年初めに読んだ小川洋子の『猫を抱いて象と泳ぐ』を思い出しました。
これは口が閉じられたまま生まれてきた少年の話で、やはりしゃべりません。
切なさに駆られ、今のところ私の今年いちばんのお気に入りですが、
どうも読みにくいとか苦手とか言う人も多くて、ちょっと薦めづらいです(笑)。
ショメ監督に映画化してほしいものだと今回思いました。
洒落たオープニング、そしてそれを収束するエンディングが秀逸。
たったひと言に泣かされました。
ジャン=ピエール・ジュネ監督の作品が好きな人にはお薦めします。
監督:シルヴァン・ショメ
出演:ギョーム・グイ,アンヌ・ル・ニ,ベルナデット・ラフォン,エレーヌ・ヴァンサン,
ルイス・レゴ,ファニー・トゥーロン,ケア・カン,シリル・クトン他
台風の日曜日、夕方までは外出を控えてくださいとテレビの声。
しかし私はやっぱり映画を観に行きたい。
お盆にダンナ実家に持参するお供えを買うという用事もあるし、
台風でサッカーの試合が中止になったダンナに駅まで送ってもらって梅田へ。
この前週、『マダム・イン・ニューヨーク』とハシゴしたかったのは本作。
『サンシャイン♪歌声が響く街』と天秤に掛け、
本作は別の劇場でも後日公開予定だったので、
観る機会を逸しそうな『サンシャイン♪』を選択したのでした。
最初からこっちにしておけばよかったかな。
風雨を避けて梅田スカイビルへ向かおうと、地下から大回り。
ルクアのお店もすべて台風で営業時間変更、シャッターが半分おりたまま。
グランフロントの端っこから地上に出て地下道へ。
傘を差さなくてもいい程度の小雨のなか、シネ・リーブル梅田へたどり着きました。
大好きなシルヴァン・ショメ監督。
魂を射貫かれた『ベルヴィル・ランデブー』(2002)、『イリュージョニスト』(2010)と、
いつまでも観ていたいアニメ作品の監督が初挑戦した長編実写作品です。
2歳のときに目の前で両親を亡くし、そのショックから口をきけなくなったポール。
変人と言ってもいい伯母姉妹アニーとアンナに育てられ、
ポールは30歳を過ぎた今もまったく言葉を発しないが、優れたピアニスト。
コンクールでも毎度上位に入賞しているほか、
伯母姉妹が営むダンス教室で、どんなジャンルの曲も見事にピアノで奏でる。
33歳の誕生日を迎えたポールは、アパートの階段で盲目のピアノ調律師とすれ違う。
調律師の落とし物に気づくが、口をきけないから声をかけられない。
落とし物を拾って後を追いかけると、調律師は同じアパートのマダム・プルーストの部屋へ。
マダム・プルーストに勧められた怪しげなハーブティーを飲んでポールは失神。
実はこれは一種の催眠療法で、そのハーブの効能で過去の記憶をたどれるのだ。
突っ伏したポールは両親の夢を見る。
ポールが覚えている在りし日の両親といえば、優しい母親とただ怖い父親。
なのに夢の中に出てくる両親はちょっとちがう。
マダム・プルーストは、毎週来るようにとポールに言う。
治療費のごとく金を請求されてポールは一瞬ひるむが、
おそらく自分自身で閉じ込めてしまったであろう記憶をたどりたい。
伯母姉妹には内緒でマダム・プルーストのもとへかよう日が続くのだが……。
両親が亡くなったのはなぜなのか。いったいどんな事故だったのか。
色彩と音楽に溢れたファンタジーの中で、その部分はミステリー。
実際にはあり得ない寓話的な事故であっても、
こんなことが目の前で起きたら、幼い心は閉ざされてしまうことでしょう。
実はヘヴィーなテーマに愕然としました。
原題の“Attila Marcel”は父親の名前で、アッティラ・マルセル。
フランスの文豪マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』のエッセンスを織り交ぜたと監督は話し、
登場人物の名前にそれが現れているのも楽しいところ。
また、“アッティラ・マルセル”は『ベルヴィル・ランデブー』で使われた楽曲でもあります。
観ている間に、今年初めに読んだ小川洋子の『猫を抱いて象と泳ぐ』を思い出しました。
これは口が閉じられたまま生まれてきた少年の話で、やはりしゃべりません。
切なさに駆られ、今のところ私の今年いちばんのお気に入りですが、
どうも読みにくいとか苦手とか言う人も多くて、ちょっと薦めづらいです(笑)。
ショメ監督に映画化してほしいものだと今回思いました。
洒落たオープニング、そしてそれを収束するエンディングが秀逸。
たったひと言に泣かされました。
ジャン=ピエール・ジュネ監督の作品が好きな人にはお薦めします。