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『おしょりん』

2023年11月17日 | 映画(あ行)
『おしょりん』
監督:児玉宜久
出演:北乃きい,森崎ウィン,駿河太郎,高橋愛,秋田汐梨,磯野貴理子,
   津田寛治,榎木孝明,東てる美,佐野史郎,かたせ梨乃,小泉孝太郎他
 
109シネマズ大阪エキスポシティにて。
開演直前の時点で予約客が私ひとりだったため、“おひとりさま”かと思いきや、
あとひと組、カップルが入ってこられました。総勢3名。
ご当地ムービー的だから、シネコンには客を呼びにくいタイプの作品かと思います。
でも、日頃から眼鏡にお世話になっている人もいない人もぜひどうぞ。
 
福井県は眼鏡生産の全国シェアが90%を超えているそうです。
冒頭、いかにもご当地ムービーの福井紹介があり、映画としていささか不安になりましたが、
その後は一転、藤岡陽子の同名原作を基に明治時代へと話が遡り、眼鏡生産の歴史へ。
 
明治30年代後半。福井県の名家・久々津家に生まれついたむめ(北乃きい)は、
やはり名家で庄屋の長男・増永五左衛門(小泉孝太郎)のもとへと嫁ぐ。
実はそれ以前にむめは増永家の次男・幸八(森崎ウィン)と顔を合わせたことがあった。
増永家の息子だと聞き、自分が嫁ぐ相手は幸八だと勝手に思い込んでいたむめは、
五左衛門と初めて会った折に結婚相手が幸八ではないことに衝撃を受けたが、
一目惚れだった想いは胸に秘め、幸八の義姉となる。
 
村の発展を常々考えている五左衛門のもとへ、幸八が持ってきた話は眼鏡づくり。
当時、眼鏡などかける者は特に田舎では誰もいない。
かつて幸八が五左衛門に勧めた羽二重づくりが頓挫したこともあり、
五左衛門も村の衆も眼鏡づくりを戯言として取り合おうとしない。
 
しかしあるとき、村いちばんの宮大工・増永末吉(駿河太郎)の娘が近眼であることにむめが気づく。
とても賢い子なのに、黒板の字が見えないせいで学校にも行けない。
目が悪いのは生まれつきだと末吉とその妻はあきらめていたが、
幸八が差し出した眼鏡をかけてみると、あら不思議、娘は「見える」ことに大喜び。
それを目の当たりにした末吉はぜひ眼鏡をつくりたいと言い、五左衛門も大きくうなずく。
 
こうして増永眼鏡を設立し、何の知識もない村人が一人前の職人を目指すのだが……。
 
何事にも資金が必要。五左衛門が突拍子もないことを始めたと、銀行は金を貸そうとしません。
増永兄弟の母親・せの(かたせ梨乃)は家財や着物を手放し、むめもそれに協力する。
背に腹は代えられずに実家に行くと、五左衛門と離縁するなら手切れ金として工面してやってもいいと両親から言われる。
想い人は幸八であっても、三角関係になどならずに(笑)、ひたすら五左衛門を支えるむめが良い。
 
一方の幸八もずっとむめのことを想っています。
最初は五左衛門が鼻につく嫌な奴っぽかったから、いつむめと幸八がくっつくんだろうなどと思っていましたが、
そうはならない。眼鏡づくりのために奔走する五左衛門のことも応援したくなります。
 
レンズはどうなっとるねんと思わなくもないけれど、それを言うのは無粋ですね。
眼鏡は、見えるようにするだけではなく、かける人の心、その人が接する人の心も和ませるもの。
 
ちなみに「おしょりん」とは福井の言葉で、田畑を覆う雪が固く凍った状態を指すらしい。
おしょりんになると、回り道しないで好きなところへまっすぐ行ける。
「いくつになっても、どんな時も、夢に向かって自由に突き進もうという想い」が込められたタイトルなのだそうです。

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