夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『4分間のピアニスト』

2008年02月21日 | 映画(や行)
『4分間のピアニスト』(原題:Vier Minuten)
監督:クリス・クラウス
出演:モニカ・ブライブトロイ,ハンナー・ヘルツシュプルング,
   スヴェン・ピッピッヒ,リッキー・ミューラー他

先週の本命はこちら。
これはさすがに貸し切りということはなかろうと思いきや、
私を含めて客は3名。
しかもあとの2名はかなりお年を召したオッチャンでした。

本国で大ヒットを記録したドイツの作品。

老齢のピアノ教師クリューガーは、
刑務所でピアノのレッスンをおこなっている。
刑務所の評判にしか興味のない所長は、
クリューガーにろくに給料も支払わず、
音楽室を設けただけでもありがたいと思えと言いたげ。
クリューガーは自前でグランドピアノを用意し、音楽室に運び込む。

ミサの時間に賛美歌の伴奏をしていたクリューガーは、
曲に合わせて鍵盤を叩くように指を動かす囚人に気づく。
彼女は殺人罪で収監された新入りのジェニー。
音楽に傑出した才能を持っているようだが、
それ以外のものにはまったく興味を示さず、
人とも関わろうとしない。
触れられることを極度に嫌がり、看守をも殴り倒す。

粗暴で不潔で、可愛げのかけらもないジェニーに
ピアノを教えることなど無理だと考えたクリューガーだったが、
彼女が狂ったように弾くピアノの音を聴き、
彼女を変えることはできないが、
救うことはできるかもしれないと考える。

「あなたには才能がある。その才能を磨く義務がある」。
そうジェニーに語りかけたクリューガーは、
従順であることを第一のルールに、
レッスンを受ける気があるかどうかを問う。
どうしてもピアノを弾きたい彼女は
反抗的な態度を取りながらも受け入れて……。

年老いた女性教師と、若い女囚。
彼女たちの人生の長さは3倍以上も違いますが、
ふたりとも、過去の凄惨な思い出ゆえに、ピアノしか愛せません。
次第に心を通わせるようになるというと月並みですが、
月並みなままでは終わらないのが本作。
ものすごくヘヴィーです。

ラストの4分間の演奏シーンにはひたすら圧倒され、
オペラ劇場の聴衆の中にいる気分でした。
怒りと悲しみに満ち、決して楽しげな演奏ではないのに、
ジェニーがいちばん演奏したかったものがそこにあります。
身震いするとはこのこと。

ジェニーの演奏シーンを担当したのは、
木吉佐和美さんと白木加絵さんという日本人ピアニストで、
ドイツではとても有名な演奏家なのだそうな。
サントラ購入、即決。

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