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『イニシェリン島の精霊』

2023年02月04日 | 映画(あ行)
『イニシェリン島の精霊』(原題:The Banshees of Inisherin)
監督:マーティン・マクドナ
出演:コリン・ファレル,ブレンダン・グリーソン,ケリー・コンドン,
   バリー・キオガン,ゲイリー・ライドン,パット・ショート他
 
TOHOシネマズなんばにて2本ハシゴの1本目。
 
監督は『スリー・ビルボード』(2017)のマーティン・マクドナー。
デビュー作だった『ヒットマンズ・レクイエム』(2008)で起用した、
共にアイルランド・ダブリンの出身俳優です。
 
舞台となっているイニシェリン島は架空の島ではありますが、
アラン諸島をモデルとしているのではと言われています。
 
今から100年前の1923年。
アイルランドの孤島イニシェリン島は、住人全員が顔見知りののどかな島。
 
パードリックとコルムは唯一無二の親友同士。
毎日14時になると一緒にパブへ行ってビールを飲むのが習慣。
 
その日もいつものようにパードリックはコルムの自宅へ誘いに行くが、
ノックをしても窓ガラスを叩いても在宅中のコルムは出てこない。
こちらを見ようともしないコルムに、昨晩を振り返るパードリック。
もしや自分は酔っぱらって彼を怒らせたのではないだろうか。
 
あとからパブへとやってきたコルムに問いただすと、
喧嘩もしていないし、失言したわけでもない、しかしおまえのことが嫌いになった、
おまえの話はつまらない、時間を無駄にしたくない、話しかけるなと言われ……。
 
昨日まで大の仲良しだった相手が急に口をきかなくなる。
当然そこにはなんらかの理由があるわけですが、相手は何もないと言う。
納得できませんよねぇ。
 
純朴だけど退屈であるには違いない男パードリックに対し、音楽家のコルムは男女問わず人気がある。
遠方からやってきた音大生もコルムとセッションをしたがります。
彼らとは楽しげに話すコルムにいらつくパードリックがつきまとうと、
やがてコルムはとんでもないことを言うのです。
もしも今後自分に話しかけたら、そのたびに自分の指を1本切り落とすと。
そしてそれを実行に移します。転がる指。
 
1923年のアイルランド本土では内戦が起きていました。
アラン諸島とはまるで違う、大変な状況の本土。
当時の内戦で本土についてはケン・ローチ監督の『麦の穂をゆらす風』(2006)を観るとわかりやすい。
 
コルムと諍いを続けることを選んだパードリック。
終わらない内戦に自分たちを例えて、続かなければならないものもあるという彼の台詞が重く響きます。
 
善人が善人でなくなるとき。
島でいちばん馬鹿なドミニクからも見放されたパードリック。
予知能力があるかのような不気味な老婆が怖い。
 
救いはパードリックの妹シボーンの存在。
読書家で何でも知っている彼女は、兄を想って島に居続けるのかと思われましたが、
ようやく出て行くことにした姿がたくましく映ります。
 
普通に行けば、女性にモテそうな風貌なのはどう考えてもコリン・ファレルのほうでしょ。
この「えっ、このキャスト!?」と驚けたのも楽しかった。

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