『光にふれる』(原題:逆光飛翔)
監督:チャン・ロンジー
出演:ホアン・ユィシアン,サンドリーナ・ピンナ,リー・リエ,シュウ・ファンイー他
2012年の台湾/香港/中国作品。
先週末よりシネリーブル梅田にて公開中。
日本では佐村河内守氏のゴーストライター騒動で持ちきりですが、
本作は正真正銘の視覚障害者で、国際的に活躍する台湾の天才ピアニスト、
黄裕翔(ホアン・ユィシアン)の半生を基にした作品です。
これまで演技経験はなかったというユィシアン本人が主演。
本作が長編デビュー作となるチャン・ロンジー監督、
そして製作総指揮に当たったのは巨匠ウォン・カーウァイ監督だそうで。
生まれつきの視覚障害者ながら、計り知れぬピアノの才能を持つユィシアン。
一度聴いた音楽は何でもピアノで奏でることができる。
普通学級にかようことも小学校時代に試みたが、
子どもゆえの心ない言動に傷つけられ、ずっと聾学校で過ごしてきた。
大学生になった今、台北で寮生活を送ることを決意する。
視覚障害者を受け入れるのは大学側も初めてで、教員は不安を隠せない。
クラスメートらも物珍しそうに彼を見るだけ、話しかけては来ない。
構内を歩くさいに付き添うことをあからさまに鬱陶しがる学生も。
クラスメートのそんな態度に、ユィシアンは独りで構内を歩けるようにと、
寮生活を始めるに当たって台北へ出てきた母親の手を借りて練習する。
幸いにも寮のルームメイトであるチンは気のいい奴。
ズケズケものを言うが、ユィシアンにまったく普通に接する。
ユィシアンの母親は息子をよろしくとチンに頼み、帰ってゆく。
体育学部でありながらヴァイオリンが得意なチンは、
軽音楽部等に対抗してスーパーミュージック部、略してSM部を結成しようと言い、
ユィシアンや数名の仲間を集めて部員勧誘。
行き交う学生を見つめながら「どんな女性がタイプか」とチンに問われたユィシアンは、
「優しい人。そして声の綺麗な人がいい」と答える。
そのとき、ドリンクの配達にやってきた無愛想な女性シャオジエの声に惹かれるユィシアン。
シャオジエはダンサーへの夢を捨てきれないまま、ドリンク店でバイト中。
恋人の浮気現場を目撃して涙に暮れ、空虚な日々を過ごしていたが、
街なかで右往左往しているユィシアンを見かけて助ける。
以来、ユィシアンとシャオジエはたびたび会うようになるのだが……。
光の射し方が美しかった作品といえば、すぐに私が思い浮かべるのは『言の葉の庭』(2013)。
アニメと実写では異なるでしょうけれども、本作はそれに勝るとも劣らない美しさ。
すべての場面のどこかに光が射していて、心が洗われます。
「もしも目が見えるようになったとしたら、何をしたいか」と問うシャオジエに、
ユィシアンは「自由に歩きたい」と答えます。
誰にもぶち当たらずに歩いて、カフェに入って、窓辺の席に座る。
特別なことではなく、普通のことがしたいんだと。
ダンサーになるのは無理だ、そう思っていたシャオジエは、
「やってみなくちゃ」とユィシアンから言われたことで、一歩を踏み出します。
目を閉じて歩いてみて、目の不自由な人が一歩を踏み出すには、
目の見える人がそうすることよりも大きな決意が要ること、
そしてどんな不幸も人生の妨げになることばかりではないと気づきます。
母親は、生後まもないユィシアンの目が見えないとわかったとき、
「その場で捨てて帰ろうかと思った」と。
だけどそのとき、ユィシアンが笑った。それを見て、ハッとしたと。
「目が見えないだけじゃないか。私はなんて馬鹿だったんだろう」。
ドリンク店の見た目はチビデブのイケてないオーナーもとてもいいキャラ。
心が荒んでいたシャオジエに光を与えるもう一人の人物でしょう。
幼い頃に出場したコンクールで優勝したにもかかわらず、
目が見えなかったから同情されたのだと陰口をたたかれ、
コンクール出場を拒絶するようになったユィシアン。
SM部の一同と代替教員がユィシアンを担ぎ出して駆けつけるコンクールの演奏に、
胸が熱くなりました。泣いた、泣いた。
やっぱり私は台湾映画が大好きみたい。
監督:チャン・ロンジー
出演:ホアン・ユィシアン,サンドリーナ・ピンナ,リー・リエ,シュウ・ファンイー他
2012年の台湾/香港/中国作品。
先週末よりシネリーブル梅田にて公開中。
日本では佐村河内守氏のゴーストライター騒動で持ちきりですが、
本作は正真正銘の視覚障害者で、国際的に活躍する台湾の天才ピアニスト、
黄裕翔(ホアン・ユィシアン)の半生を基にした作品です。
これまで演技経験はなかったというユィシアン本人が主演。
本作が長編デビュー作となるチャン・ロンジー監督、
そして製作総指揮に当たったのは巨匠ウォン・カーウァイ監督だそうで。
生まれつきの視覚障害者ながら、計り知れぬピアノの才能を持つユィシアン。
一度聴いた音楽は何でもピアノで奏でることができる。
普通学級にかようことも小学校時代に試みたが、
子どもゆえの心ない言動に傷つけられ、ずっと聾学校で過ごしてきた。
大学生になった今、台北で寮生活を送ることを決意する。
視覚障害者を受け入れるのは大学側も初めてで、教員は不安を隠せない。
クラスメートらも物珍しそうに彼を見るだけ、話しかけては来ない。
構内を歩くさいに付き添うことをあからさまに鬱陶しがる学生も。
クラスメートのそんな態度に、ユィシアンは独りで構内を歩けるようにと、
寮生活を始めるに当たって台北へ出てきた母親の手を借りて練習する。
幸いにも寮のルームメイトであるチンは気のいい奴。
ズケズケものを言うが、ユィシアンにまったく普通に接する。
ユィシアンの母親は息子をよろしくとチンに頼み、帰ってゆく。
体育学部でありながらヴァイオリンが得意なチンは、
軽音楽部等に対抗してスーパーミュージック部、略してSM部を結成しようと言い、
ユィシアンや数名の仲間を集めて部員勧誘。
行き交う学生を見つめながら「どんな女性がタイプか」とチンに問われたユィシアンは、
「優しい人。そして声の綺麗な人がいい」と答える。
そのとき、ドリンクの配達にやってきた無愛想な女性シャオジエの声に惹かれるユィシアン。
シャオジエはダンサーへの夢を捨てきれないまま、ドリンク店でバイト中。
恋人の浮気現場を目撃して涙に暮れ、空虚な日々を過ごしていたが、
街なかで右往左往しているユィシアンを見かけて助ける。
以来、ユィシアンとシャオジエはたびたび会うようになるのだが……。
光の射し方が美しかった作品といえば、すぐに私が思い浮かべるのは『言の葉の庭』(2013)。
アニメと実写では異なるでしょうけれども、本作はそれに勝るとも劣らない美しさ。
すべての場面のどこかに光が射していて、心が洗われます。
「もしも目が見えるようになったとしたら、何をしたいか」と問うシャオジエに、
ユィシアンは「自由に歩きたい」と答えます。
誰にもぶち当たらずに歩いて、カフェに入って、窓辺の席に座る。
特別なことではなく、普通のことがしたいんだと。
ダンサーになるのは無理だ、そう思っていたシャオジエは、
「やってみなくちゃ」とユィシアンから言われたことで、一歩を踏み出します。
目を閉じて歩いてみて、目の不自由な人が一歩を踏み出すには、
目の見える人がそうすることよりも大きな決意が要ること、
そしてどんな不幸も人生の妨げになることばかりではないと気づきます。
母親は、生後まもないユィシアンの目が見えないとわかったとき、
「その場で捨てて帰ろうかと思った」と。
だけどそのとき、ユィシアンが笑った。それを見て、ハッとしたと。
「目が見えないだけじゃないか。私はなんて馬鹿だったんだろう」。
ドリンク店の見た目はチビデブのイケてないオーナーもとてもいいキャラ。
心が荒んでいたシャオジエに光を与えるもう一人の人物でしょう。
幼い頃に出場したコンクールで優勝したにもかかわらず、
目が見えなかったから同情されたのだと陰口をたたかれ、
コンクール出場を拒絶するようになったユィシアン。
SM部の一同と代替教員がユィシアンを担ぎ出して駆けつけるコンクールの演奏に、
胸が熱くなりました。泣いた、泣いた。
やっぱり私は台湾映画が大好きみたい。