夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

ついでに、もうちょっと戸田奈津子さん。

2005年05月02日 | 映画(番外編:映画と邦題・字幕・台詞)
こんなにも誤訳の多さを指摘されているのに、
あいかわらず大作は彼女のところへ話が行くのはなぜ?

いまでこそ、字幕の翻訳家といえば
前述のような女性の名前がごろごろ挙がりますが、
以前は男性の世界だったようです。
女性にもやれるんだということを見せたのは戸田さん。
誤訳が多くとも、そんな彼女には
みんな敬意を払っているのかもしれません。

最近は誤訳を待ち望んでいる人すらいるようで、
映画を観てるんだか、誤訳探しをしてるんだか。
人のあら探しは趣味が悪いけど、おもしろいのは確か。
そんな楽しみの提供者である戸田さん、憎めません。

伝説的誤訳の続きを並べてみると、
ケヴィン・コスナーの『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990)では
「神よ!」と訳すべき“Father!”を「お父さん!」と。
『ハムナプトラ』(1999)では「棺桶」の意の“chest”を「胸」と。
『ロード・オブ・ザ・リング』(2001)では
指輪の魔力に取り憑かれたボロミアに向かって
フロドが叫ぶ台詞、“You are not yourself.”を「嘘をつくな!」と。
このシーンの日本語だけを追うとそんなにおかしくはないんですが、
正気を失っている相手に嘘つき呼ばわりはあんまりな言い様。

下ネタもどちらかと言えば好きと見えて、
ちょっとここには書けないようなスゴイ訳も登場します。
ギリギリの線かなと思うものを挙げるならば
『ブリジット・ジョーンズの日記』(2001)の
「ひどい料理」の意の“incredible shit”を
「クソの煮込み」と直球勝負(?)で訳しています。

誤訳ではないけれど、
ほかの字幕翻訳家はおよそ使わないと思われる、
彼女独特の言い回しは、「なっち語」と呼ばれています。
きっとみなさん、大作で目にしたことがあると思いますが、
「~かもだ」は「なっち語」のうち、もっとも有名。
「クビになるかもだ」なんて、見覚えありませんか。

昨日観たDVDがショボい映画で、その翻訳がまたショボい。
字幕担当は聞いたことのない人でした。
いくら正しい訳だったとしても、役者に不釣り合いな喋り方で訳されると、
大根役者の演技がさらにショボく見えます。
そういう点では、戸田さんが「やるっきゃない!」なんて訳すと、
不釣り合いでもそう言いそうな役者に見えてくるのはスゴイ。
昨日の字幕の人も、そこまで行き着けるように祈ります。

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