夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『父の初七日』

2012年10月03日 | 映画(た行)
『父の初七日』(原題:父後七日)
監督:ワン・ユーリン
出演:ワン・リーウェン,ウー・ポンフォン,チェン・ジャーシャン,
   チェン・タイファー,ジャン・シーイン,タイ・バオ他

毎週土曜日の晩はたいてい飲み過ぎます。
だから、日曜日はほぼヘロヘロ。
ヘロヘロでTSUTAYA DISCASでレンタルしたDVDを義務のように観ます。
だもんで、つまらないと寝てしまいそうになります。
でも、寝てしまった分を1本と数えることは自分で許せないので、
寝てしまった部分を観直すこともしばしばです。

本作は台湾でロングランを記録した2009年の作品。
日本では今年の3月に公開され、8月末日にレンタル開始となりました。
ゆるゆると進むので、ところどころに寝かけたシーンあり。
それでもつまらなくはない、むしろとっても面白い作品でした。
初めて見る道教のお葬式に興味津々、笑って、しんみり。

台北で働く娘アメイは、父危篤の知らせに慌てて帰郷する。
兄のタージとともに病室へ駆けつけるが、父はすでに息を引き取っていた。
母の死後、男手ひとつで自分たちを育ててくれた父。
その亡骸に付き添って自宅へと戻る。

道士として生計を立てる叔父アイーの指示のもと、
伝統的な道教式の葬儀が執りおこなわれることに。
高校生の従弟シャオチュアンは、学校の課題制作にうってつけと、
この葬儀の様子をビデオカメラに収めはじめる。

暦を検討したうえで、野辺送りの日と決められたのは7日後。
古いしきたりに則った葬儀が進んでゆく。

こんなしきたりがあるのかと目が点になることしきり。
故人が好きだったものを供えるとき、好きだったものなら何でもあり。
息子は表紙にハダカのネエちゃんが大写しになったポルノ雑誌を堂々と進呈。
道士が真面目な顔をして「故人は喜ぶことでしょう」なんて言う。確かに。(^^;

娘は道士から「泣きなさい」と言われたらいつ何時でも、
棺桶にすがって泣かなければなりません。
食事中でも歯磨き中でも、「泣け」と言われればいつだって。
口の中にごはんが入ったままだったり、歯ブラシを持ったままだったり。
また、中国や朝鮮半島では伝統的な職業である「泣き女」も登場。
これがお祓いになるんですねぇ。

故人の知り合いが葬儀の飾りとして作るのは缶タワー。
これが空き缶ではないものだから、あまりの暑さで膨張し、
中身が次々にシュワーッと噴き出すところは笑えます。

台湾語で「疲れる」は「父の死を嘆く」と書くそうで
(本編ではわかりづらかったですが、特典映像の台湾語字幕を見て納得)、
悲しみにひたる時間もないままあれやこれやに追われる兄妹が、
ドッと疲れた就寝時にそのことを思い出してふきだす顔にこちらもニッ。

ようやく父を亡くしたという実感が湧くのは何カ月も経ってから。
父との想い出が紡がれるシーンは優しさに溢れています。

印象的な使われ方の日本語と梶芽衣子の曲。
後者は『歌謡曲だよ、人生は』(2007)の一編だとしても違和感なし。
こんな作品がロングランを記録する国ですよ。
『海角七号 君想う、国境の南』(2008)の大ヒットを振り返っても、
尖閣諸島の話を考えると、その台湾人はちがうんじゃあ……と思うのでした。

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