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『雪の轍』

2015年07月26日 | 映画(や行)
『雪の轍』(原題:Kış Uykusu)
監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
出演:ハルク・ビルギナー,メリッサ・スーゼン,デメット・アクバッグ,ネジャト・イスレーシュ他

3連休初日の4本ハシゴを観た逆順に。この日の3本目。
同じくシネ・リーブル梅田にて。

前述の『フレンチアルプスで起きたこと』第67回カンヌ国際映画祭で評判を呼んだ作品なら、
本作は同映画祭で最高賞のパルムドールを受賞したトルコ/フランス/ドイツ作品。

トルコの巨匠でありながら、日本では初めての劇場公開。
睡魔に襲われそうな予感じゅうぶんでしたが、196分の大作ですもの、
もしもDVD化されて家で観たら、集中力が続くとは思えず。
そういえば、同監督の前作『昔々、アナトリアで』(2011)もDVDを借りようと思いつつ、
あらすじを読むと絶対寝てしまいそうな気がして回避した過去があります。
そして予想どおり、196分のところどころ寝てしまいました。

トルコの世界遺産カッパドキアにたたずむホテル“オセロ”。
オーナーは元舞台俳優のアイドゥンで、引退した今、悠々自適の生活を送っている。
ホテルと身の回りのあれこれは、管理人のヒダーエットと使用人のファトマに任せ、
自分は世界各国から訪れる客とたまに会話をする程度。

満ち足りた穏やかな暮らしかと思いきや、
娘かと思われても不思議はない若き美貌の妻ニハルは慈善活動に入れあげ、
彼女とアイドゥンの妹で出戻りのネジラとの関係はよろしくない。

さらに、父の代から家を貸しているイスマイル一家との間にいざこざが起きる。
発端は、家賃が未納だったために、一家の家電製品を差し押さえたこと。
一家の幼い息子イリヤスは、家を守ろうとでも思ったのか、
アイドゥンとヒダーエットが乗る車に投石する。
イリヤスのおこないを聞かされて、イスマイルは開き直りと取れる態度を示す。
住むところがなくなっては大変と、イスマイルの弟ハムディが代わりに何度も頭を下げる。

その後、アイドゥンに改めて詫びようと、
ハムディはイリヤスを連れ、長距離を歩いて“オセロ”までやってくる。
家賃についても支払いを待ってくれと懇願されるが、
アイドゥンは弁護士に任せているから自分に話されても仕方がないと突っぱねる。

ある日、ニハルが慈善活動の会合を“オセロ”で開く。
何も知らされていなかったうえに邪魔者扱いされたアイドゥンは憤り、ニハルを非難。
寄付金の集め方についても駄目だしをされたニハルは、
これにしか自分の生き甲斐を見いだせないのにと泣き崩れる。
別れたいと言いつのるニハルに、「春まで帰らないから好きにすればいい」と告げ、
アイドゥンはイスタンブールへと向かうはずだったが……。

登場人物全員がなんらかの不満を抱えていて、文句ばかり。
男と女、夫と妻、兄と妹、嫁と小姑、親と子、金持ちと貧乏人。
くりかえし描かれる対立にうんざりさせられ、
私なんて、途中アイドゥン役の国民的俳優ハルク・ビルギナーの声を聞くのさえ嫌になりました。
誰の言葉も屁理屈だらけに聞こえて、
それが目前に広がるカッパドキアのなかではあまりに小さいものに感じます。
悪人に対して、抗わないことで良心に訴えかける。
この話には考えさせられました。

196分中半分以上寝てしまうかもしれないと思っていたわりには、ほぼ持ちこたえた感。
カンヌ受賞作は手放しで楽しめるものもあるけれど、難しい作品も多いなぁ。

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