『フレンチアルプスで起きたこと』(原題:Force Majeure)
監督:リューベン・オストルンド
出演:ヨハネス・バー・クンケ,リーサ・ローヴェン・コングスリ,クリストファー・ヒヴュ,
クララ・ヴェッテルグレン,ヴィンセント・ヴェッテルグレン,ファンニ・メテーリウス他
「海の日」を含む3連休は、もろもろの予定を間に挟んで片づけつつ、
あちこちの劇場をハシゴして8本鑑賞。
まずは初日の土曜日、朝7時過ぎに家を出て夕方までに4本ハシゴ。
いつもなら、観た順に書いてUPするところですが、
4本目に観た本作がいちばん面白かったので逆順で。
第67回カンヌ国際映画祭で評判を呼んだ本作をシネ・リーブル梅田にて。
設定が強烈すぎて観る前からニヤニヤ。
スウェーデン/デンマーク/フランス/ノルウェー作品です。
相当にイジワルで失笑することしきりのシニカルコメディ。
フレンチアルプスの高級リゾートにやってきたスウェーデン人一家。
トマスとエバ夫妻、娘ヴェラと息子ハリーの4人は、
ここでスキー三昧の5日間を過ごす予定。
多忙なトマスも今回ばかりは仕事を離れ、家族サービスに精を出す。
初日は何の問題もなく、楽しく終了。
2日目、レストランのテラスで昼食をとる一家。
ゲレンデには人工雪崩を起こすための爆破音がしばしば鳴り響いていたが、
それがテラスに向かって押し寄せてくる。
驚いて騒ぐハリーに、トマスは「プロの仕事だから大丈夫だよ」。
しかし、雪の壁は止まる気配なく、どんどん近づいてくる。
高さ50メートル、幅100メートルはあろうかという雪の壁が目前に迫り、テラスは騒然。
ようやくこれは事故だとわかったトマスは、咄嗟に逃げ出してしまう。
助けを求める妻子を置き去りに、手袋とスマホだけを握りしめて。
幸い大事には至らず、雪煙がテラスを覆うなか、戻ってくるトマス。
ショックで呆然とするエバたちを前に、何食わぬ顔をして席に着き、
その場を取り繕おうとするが、以後、家族の間には不穏な空気が立ちこめて……。
怖いです、面白いです。
おそらく本作を観てトマスが可哀想だと思う女性はひとりもいないのでは。
逆にエバの心のうちは手に取るようにわかるはず。
妻は、ひとりでとっとと逃げた夫のことを頭ごなしに責めたりはしません。
むしろ理解しようと努めます。咄嗟のことだから仕方がないと自分に言い聞かせて。
けれども、すべてなかったことにしようとしている夫を見て、腹が立ってきます。
そりゃ腹を立てるのも当たり前でしょう。
雪崩に見舞われたのは事実だけど、自分は逃げたりしていない、
何をおかしなこと言ってるのなんて夫から言われたら。
ホテルで親しくなったカップルであるマッツとファンニを前にして、
「妻が大げさなだけ。たいした雪崩じゃなかった」といけしゃあしゃあと言う夫。
妻はスマホに映っていた雪崩の瞬間の動画を差し出します。
証拠を突きつけられて何も言い返せなくなった夫は、だだっ子のように号泣。
「こんな自分が嫌だ、君だけが被害者じゃない、僕自身も被害者だ」とは失笑。
馬鹿じゃないのと思う妻ですが、子どもたちの手前、夫をないがしろにできません。
マッツとファンニがあとから交わす会話も可笑しい。
ファンニは「そんな場面になったらあなたもひとりで逃げそう」とマッツに言い、
しかも「誰某なら守ってくれそう」なんてことまで言う。
誰某というのが独身のやせっぽち男のことだったからマッツは面白くありません。
「もうこの話は終わりにして寝よう」とファンニが言っているのに、
「あんな奴に俺が劣るというのか。俺は家族を守っているのに」と詰め寄ります。
「家族をほっぽらかして、私みたいな20歳の女とここへ来ておいてよく言うよ」と呆れられ。
ファンニが自分で言うように、彼女だっていざとなればひとりで逃げだすかもしれません。
でもたぶん、女は逃げたことをなかったことにしようとはしない。
「ごめん、怖くて逃げちゃった」と言うのではないかと思うのです。
それが許されるのが女だと言えばそうなのですけれども。
そもそもが、「これはこれ、それはそれ」と分けて考えられる男性に対し、
どれもこれも繋げてしか考えられないのが女性というもの。
女は決して無視できない。
男性にしてみれば、「助かったんだからいいじゃないか。もう言うな」と思うのでしょうが、
んなことできるわきゃあない。すっぱり忘れて一緒に過ごすことなんて。
一緒に事故にあったカップルは別れることが多いのだそうです。
原題の意味は「不可抗力」。なんとも興味深く、皮肉で面白い作品。
決定済みらしいハリウッドリメイクもめちゃ楽しみです。
監督:リューベン・オストルンド
出演:ヨハネス・バー・クンケ,リーサ・ローヴェン・コングスリ,クリストファー・ヒヴュ,
クララ・ヴェッテルグレン,ヴィンセント・ヴェッテルグレン,ファンニ・メテーリウス他
「海の日」を含む3連休は、もろもろの予定を間に挟んで片づけつつ、
あちこちの劇場をハシゴして8本鑑賞。
まずは初日の土曜日、朝7時過ぎに家を出て夕方までに4本ハシゴ。
いつもなら、観た順に書いてUPするところですが、
4本目に観た本作がいちばん面白かったので逆順で。
第67回カンヌ国際映画祭で評判を呼んだ本作をシネ・リーブル梅田にて。
設定が強烈すぎて観る前からニヤニヤ。
スウェーデン/デンマーク/フランス/ノルウェー作品です。
相当にイジワルで失笑することしきりのシニカルコメディ。
フレンチアルプスの高級リゾートにやってきたスウェーデン人一家。
トマスとエバ夫妻、娘ヴェラと息子ハリーの4人は、
ここでスキー三昧の5日間を過ごす予定。
多忙なトマスも今回ばかりは仕事を離れ、家族サービスに精を出す。
初日は何の問題もなく、楽しく終了。
2日目、レストランのテラスで昼食をとる一家。
ゲレンデには人工雪崩を起こすための爆破音がしばしば鳴り響いていたが、
それがテラスに向かって押し寄せてくる。
驚いて騒ぐハリーに、トマスは「プロの仕事だから大丈夫だよ」。
しかし、雪の壁は止まる気配なく、どんどん近づいてくる。
高さ50メートル、幅100メートルはあろうかという雪の壁が目前に迫り、テラスは騒然。
ようやくこれは事故だとわかったトマスは、咄嗟に逃げ出してしまう。
助けを求める妻子を置き去りに、手袋とスマホだけを握りしめて。
幸い大事には至らず、雪煙がテラスを覆うなか、戻ってくるトマス。
ショックで呆然とするエバたちを前に、何食わぬ顔をして席に着き、
その場を取り繕おうとするが、以後、家族の間には不穏な空気が立ちこめて……。
怖いです、面白いです。
おそらく本作を観てトマスが可哀想だと思う女性はひとりもいないのでは。
逆にエバの心のうちは手に取るようにわかるはず。
妻は、ひとりでとっとと逃げた夫のことを頭ごなしに責めたりはしません。
むしろ理解しようと努めます。咄嗟のことだから仕方がないと自分に言い聞かせて。
けれども、すべてなかったことにしようとしている夫を見て、腹が立ってきます。
そりゃ腹を立てるのも当たり前でしょう。
雪崩に見舞われたのは事実だけど、自分は逃げたりしていない、
何をおかしなこと言ってるのなんて夫から言われたら。
ホテルで親しくなったカップルであるマッツとファンニを前にして、
「妻が大げさなだけ。たいした雪崩じゃなかった」といけしゃあしゃあと言う夫。
妻はスマホに映っていた雪崩の瞬間の動画を差し出します。
証拠を突きつけられて何も言い返せなくなった夫は、だだっ子のように号泣。
「こんな自分が嫌だ、君だけが被害者じゃない、僕自身も被害者だ」とは失笑。
馬鹿じゃないのと思う妻ですが、子どもたちの手前、夫をないがしろにできません。
マッツとファンニがあとから交わす会話も可笑しい。
ファンニは「そんな場面になったらあなたもひとりで逃げそう」とマッツに言い、
しかも「誰某なら守ってくれそう」なんてことまで言う。
誰某というのが独身のやせっぽち男のことだったからマッツは面白くありません。
「もうこの話は終わりにして寝よう」とファンニが言っているのに、
「あんな奴に俺が劣るというのか。俺は家族を守っているのに」と詰め寄ります。
「家族をほっぽらかして、私みたいな20歳の女とここへ来ておいてよく言うよ」と呆れられ。
ファンニが自分で言うように、彼女だっていざとなればひとりで逃げだすかもしれません。
でもたぶん、女は逃げたことをなかったことにしようとはしない。
「ごめん、怖くて逃げちゃった」と言うのではないかと思うのです。
それが許されるのが女だと言えばそうなのですけれども。
そもそもが、「これはこれ、それはそれ」と分けて考えられる男性に対し、
どれもこれも繋げてしか考えられないのが女性というもの。
女は決して無視できない。
男性にしてみれば、「助かったんだからいいじゃないか。もう言うな」と思うのでしょうが、
んなことできるわきゃあない。すっぱり忘れて一緒に過ごすことなんて。
一緒に事故にあったカップルは別れることが多いのだそうです。
原題の意味は「不可抗力」。なんとも興味深く、皮肉で面白い作品。
決定済みらしいハリウッドリメイクもめちゃ楽しみです。