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『パリタクシー』

2023年04月16日 | 映画(は行)
『パリタクシー』(原題:Une Belle Course)
監督:クリスチャン・カリオン
出演:リーヌ・ルノー,ダニー・ブーン,アリス・イザーズ,ジェレミー・ラウールト,
   グウェンドリーヌ・アモン,ジュリー・デラルム,トマ・アルダン他
 
北摂の劇場では観るものが尽きそうになったので、なんばパークスシネマへ。
 
主演のふたり、リーヌ・ルノーとダニー・ブーンは国民的スターらしいのですが、
日本では全然知名度が高くないですよね。
リーヌ・ルノーの出演作では『女はみんな生きている』(2001)が大好きでしたが、
彼女がどんな役で出ていたか覚えていないし。
とにかくフランスでは大人気ゆえ、本作も大ヒットを飛ばしたそうです。
 
タクシー運転手のシャルルは、くだびれたアラフィフ男性。
1年で地球3周分もタクシーを走らせているというのに、給料は安く、妻子を養うのが大変。
良い客ばかりではないから、嫌な思いをすることもしょっちゅう。
 
ある日、配車の依頼を受けて迎えに行ったのは、92歳の女性マドレーヌ。
結構なお屋敷で暮らしていた彼女は、その年齢で一人暮らしは駄目だと周囲から言われ、
致し方なく住み慣れた家を引き払って老人介護施設に入ることになったらしい。
 
パリからはずいぶん離れたところにある施設までの道すがら、
思い出の場所に寄り道してほしいというマドレーヌ。
渋々それにつきあうことになったシャルルに最初は一方的に話しかける彼女だったが……。
 
まさにハートウォーミングな作品というよりほかにありません。
 
毎日寝る間も惜しんで働いているのに金がない。
そのせいで気持ちが荒んで行き、客にも失礼な態度を取るシャルル。
まぁこれは客も客で、シャルルの言動も理解できます。
 
世の中への不満がにじみ出た表情で車を走らせるシャルルに、
マドレーヌはこれまでの自分の人生を話しはじめます。
次第に彼女の話に引き込まれ、シャルルは自らのことも語るように。
 
もっと軽い話を想像していたら、マドレーヌの人生は凄絶。
女性は男性に服従することが当たり前だった1950年代には離婚も許されません。
暴力亭主を殺しかけた彼女は逮捕され、裁判の陪審員は全員男性だなんて。
 
道中の風景も楽しいし、ふたりの会話や食事のシーンも抜群に良い。
ユーモアにあふれ、ラストも万人が感動しそうな話で、大ヒットに納得。
ただ、このラストは目新しいものではありません。
 
じゅうぶんに予測できるラストですから、ネタバレにはならんと思って書きます。
後日シャルルが妻を連れて施設を訪れると、マドレーヌはすでに亡くなっていて、
管財人から1通の手紙を渡される。そこには莫大な金額の小切手が入っているという。
 
親切にしてくれた赤の他人に遺産を譲る話は珍しくないですもんね。
真面目に生きていればこういうことが待っていると思いたいけれど、
そうそうこんな話は舞い込んでこないでしょう。
 
すごく良い話で、鑑賞後にとても穏やかな気持ちになれたものの、
「んー、映画としてはそんなに珍しい話やないし」と思った私もいるのでした。(^^;

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