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『グリーン・ライ エコの嘘』

2020年05月04日 | 映画(か行)
『グリーン・ライ エコの嘘』(原題:Die Grune Luge)
監督:ヴェルナー・ブーテ
 
第七藝術劇場で上映されたら観に行くつもりでしたが、
緊急事態宣言発令下、休業で見送りに。
このたび“仮設の映画館”で上映が開始されました。
 
“仮設の映画館”はとても面白い試みです。
コロナ騒動のせいで上映が延期になってしまった作品を含め、
今のところ11本の作品をオンラインで公開予定。
興行収入を劇場と配給会社と製作者に分配するとのこと。
普通のネット配信とはちと異なり、観る劇場を選ぶところから始まります。
視聴者が選んだ劇場に興行収入が分配されるという仕組み。
 
何本か観たい作品があり、どれにしようか迷って、まずは本作を選択。
もともとナナゲイで観るつもりだったからナナゲイを選ぶ。
ナナゲイの会員だから、劇場で観ればもっと安くで観られるねんけどなぁ、
定価の1,800円は高いなぁ、でもここは高いとか安いとか言うてる場合やない。
ナナゲイもほかの劇場もなくなったら私は困るねん。1,800円払います。
 
“仮設の映画館”ではちゃんと上映開始のベルも鳴り、
上映に先立っての注意事項のアナウンスも流れるのです。なんかワクワク。
 
オーストリアのドキュメンタリー作品。
ヴェルナー・ブーテ監督のことは知りませんでしたが、
なんとも愛嬌のあるおじさま。
小難しい会話に持って行ったりしないので、非常にわかりやすい。
 
そんな監督がエコ商品のサステナビリティ(=持続可能性)について問います。
「環境に優しい」を謳い文句に販売されるサステナブル(持続可能な)エコ商品。
監督に同行するのは、グリーンウォッシングの専門家カトリン・ハートマン。
ふたりで調査するために地球一周の旅へ。
 
私は、ふだん買い物に行くのにエコバッグすら持参しないような人間です。
エコ意識が低すぎると自分で思っていますが、
本作の中で、エコ意識の高低を競うこと自体おかしいとの話も。
グリーンウォッシングという言葉も知りませんでした。
「環境に配慮しているように装う企業の嘘」のことだそうで。
 
ふたりがまず向かったのは、パーム油の世界最大の産地インドネシア。
「サステナブルなパーム油」と謳われた商品が多いけれど、
カトリン曰く「サステナブルなパーム油などない」そうです。
本作を観た後にウィキペディアでパーム油を調べると、
しきりと「持続可能なパーム油」の文言があって、ちゃんちゃら可笑しい。
 
木は伐採され、人為的な火災が起き、森林は死に絶える。
一定の企業と、その企業と癒着する人が儲けるために造られる農園。
仕事の場を与えてやっていると上から目線んで企業は言うけれど、
その国の人たちはそれで豊かになったと言えますか。到底そうは思えない。
 
また、アメリカでは海で無理な掘削を続けた企業が事故を起こし、原油が流出。
地元の漁師が原油の回収に協力を申し出たにもかかわらず、企業は拒否。
化学薬品をばらまいて原油を海底に沈め、安全だと宣言。
安全なわけなどありません。今もその海のエビには原油がまとわりついている。
 
「緑色」になんと惑わされることか。緑とは自然な色だという思い込み。
そのイメージを利用している企業の多いこと。
上記の原油を流出させた企業のロゴマークも緑の太陽。
 
「環境と人権保護が企業のリップサービスであってはならない」。
自分がなつかせたものには責任があるんだよというエンドロールの詩が重い。
 
大地の恵みをそのまま受け入れて生きることを選んだ夫婦の話、
それこそが本当のサステナビリティだと思うのでした。

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