夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ファニーゲーム U.S.A.』

2009年07月01日 | 映画(は行)
『ファニーゲーム U.S.A.』(原題:Funny Games U.S.)
監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:ナオミ・ワッツ,ティム・ロス,デヴォン・ギアハート,
   マイケル・ピット,ブラディ・コーベット他

ドイツ生まれ、オーストリア出身の監督が、
自身の代表作『ファニーゲーム』(1997)を英語でリメイクしたのがこれ。
役者がハリウッド俳優に替わったこと以外、まったく同じです。
オリジナルは本当に不快でした。当然リメイクも不快。
『ピアニスト』(2001)といい、『隠された記憶』(2005)といい、
感嘆してしまうほどの不快さ。

ファーバー一家は湖畔の別荘にやって来る。
夫ジョージ、妻アン、一人息子と愛犬。
途中、出会った隣人はどことなくよそよそしい。
気のせいだろうと深くは考えず、夕食の用意に取りかかるアン。

玄関先の人影に気づいてドアを開けると、
隣家に滞在中だという礼儀正しそうな青年で、
卵を切らしたので分けてほしいとのこと。
アンは快く卵を分けるが、青年はそれを落として割ってしまう。
詫びながら勝手に台所へ入って来た青年は、
今度はアンの携帯を流し台に落としてしまう。
イライラを募らせるアン。
そうこうしているうちに青年の友人も現れ、アンの態度を咎める。

青年たちに退去を求め、アンがヒステリックに叫んでいると、
ヨットの修理に出かけていたジョージと息子が戻って来る。
卵ぐらいで何を揉めているのかと訝るジョージだったが、
青年に無礼な言葉を吐かれ、カッとなって頬をひっぱたいてしまう。
その瞬間、青年はジョージの脚にゴルフクラブを振り下ろす。

恐怖で動けなくなったファーバー一家。
青年たちは薄笑いを浮かべ、
朝まで生きていられるかどうか賭けをしようと言い出す。

ファーバー一家の勝利を信じて観るとエライ目に遭います。
誤ってレンタルしてしまう人がいないようにネタをバラすと、
本作にはひとかけらの希望もありません。
大人が殺されても子どもは生き延びる、
映画におけるそんな暗黙のルールも見事にぶった切られます。

残虐な描写は直接は出て来ません。それが余計に恐ろしい。
振り下ろされるゴルフクラブ。だけど、砕けた骨は見せない。
撃ち抜かれる息子の頭。だけど、飛び散った血を見せるだけ。

見せずに暴力の恐ろしさを見せつける、傑作なんです。
だけど、もし「好きな映画は?」と聞いて、
嬉々として本作を挙げる人がいるとしたら、
おつきあいは遠慮しとうございます。(^^;

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