夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『アンテベラム』

2021年11月12日 | 映画(あ行)
『アンテベラム』(原題:Antebellum)
監督:ジェラルド・ブッシュ,クリストファー・レンツ
出演:ジャネール・モネイ,エリック・ラング,ジェナ・マローン,ジャック・ヒューストン,
   カーシー・クレモンズ,ガボレイ・シディベ,マルク・リチャードソン,リリー・カウルズ他
 
CS(クライマックスシリーズ)第1戦の敗戦に打ちひしがれ、ヤケ酒ならぬヤケ映画。
もっと明るい作品を観ればよいものの、時間的にちょうどよかったのがこれ。
大阪ステーションシティシネマにて。
 
監督は本作で長編デビューを飾ったコンビ、ジェラルド・ブッシュとクリストファー・レンツ。
批評家の評判は芳しくないそうですが、私にはかなり面白かった。暗いけど。
 
アメリカ・ルイジアナ州、綿花を栽培するプランテーション
奴隷として白人に虐げられている女性エデンは、何度か脱走を試みたが失敗。
毎晩のように陵辱され、声を潜めながら次の脱走を計画している。
 
一方、黒人女性のリーダーとして活躍するベストセラー作家ヴェロニカ。
いくら知名度が上がろうとも、ホテルで、レストランで、まだまだ差別を受けている。
ある日、友人たちと食事した後、何者かに拉致されて……。
 
どこから話してもネタバレになりますので、鑑賞予定の方はご注意ください。
 
エデンとヴェロニカはジャネール・モネイの一人二役。
エデンは南北戦争前夜の時代に生きる女性。ヴェロニカは現代に生きる女性。
同じ容貌のふたりの人生が交錯する、てな話かと思っていました。
 
そうしたら、このふたりは本当に同一人物だったのですよ。
160年の時を超えて、とかではなく、どちらも現代。
 
最初に「えっ!?」と思ったのは、エデンを手込めにしている白人のオッサンが、
夜中にスマホの音で目覚めるシーンです。
1860年代にスマホってなんでなの、どーゆーこと!?と目が点に。
ありえないファンタジー仕様の映画なのかこれは?と、疑問がぐるぐる頭の中を回る。
その謎がわかるのは最後の最後なんですけれど。
 
拉致されたヴェロニカが連れて行かれたのがこのプランテーション。
エデンと名乗らされ、過酷な日々を送らされている。
プランテーション自体がテーマパークだとわかるのはラストシーンで、
なんたる悪趣味なテーマパークなんだとたまげました。
 
こんなテーマパークを作るのは人種差別主義者以外の何者でもないわけで、
ジェナ・マローン演じる地主の妻かと思われた女がテーマパークの経営者一家のひとり。
命懸けの脱走をはかったエデン=ヴェロニカを物凄い形相で追いかけながら、
「私だけ殺したところで、この状況は変わらない」と告げるのが怖い。
 
いつになろうが人種差別主義者は必ず存在する。
ヴェロニカがなんとか生還して夫と愛娘に再会できたことにホッとしながら、
恐ろしい現実を思うのでした。
 
“Antebellum”は「南北戦争前の」の意。南北戦争前のテーマパークの名前を指すとは。
「恐怖が不足してたいして面白くもない作品になっている」というのが批評家のコメントらしいけど、
じゅうぶん怖くないですか。私はおぞましさに震えました。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『劇場版 きのう何食べた?』 | トップ | 『ほんとうのピノッキオ』 »

映画(あ行)」カテゴリの最新記事